この素晴らしい世界に祝福を!

何でもかんでも複雑で重厚なストーリーが良いとか世界観が作り込まれてフィクションにリアリティーがあるのが良いとかは決して思っていなくて、頭カラッポで楽しめるのもエンターテイメントの一つの魅力だと思っている。
アニメで履修した「この素晴らしい世界に祝福を!」(以下「このすば」)は、まさにそんな作品だった。

異世界転生系のコメディー作品というのは数多くあるし、ハーレム作品のような「このすば」がニアミスするジャンルにもたくさんの作品が存在している。
その中でしっかり「このすば」が代え難い魅力を放っているのは、その割り切りと振り切りにある。
普段は僕が口酸っぱく言っているような前後の時空軸やフィクション自体のリアリティーは徹底的に排除され、冒険や戦闘もコメディーで完遂されている。
コメディー一辺倒だからこそハイテンションであるために良い意味で雑な部分になるところが、この辺りで中途半端に真面目さを入れてしまうとただただ雑にしか映らず、内容が薄く感じてしまう。

また、逆にこのハイテンションさもフィクションだからこそ過剰なコメディーに昇華できていて、やっていることは日常系と同じことでも決してシュールなギャグにならないところもポイントだと思っている。
僕が日常系を毛嫌いしているところはまさにそこで、頭カラッポで楽しむにはテンションが低く、その割に雑さがそのままでてしまうからである。
先述のように、前提を全てオミットしているから内容など無くてもコメディーだけを楽しめる。

ただし、それだけが「このすば」の面白さの全てでは無いところはしっかり見習いたい。
良質ながら遊び心のある作画、声優陣のノリやそれを活かしたアピール等、制作している側が視聴者以上に楽しんで盛り上げている。
「火のないところに煙は立たない」という言葉があるように、裏を返せば煙がしっかり立っていなければ火があることに誰も気づかず、近寄らない。
良い作品だと思う。

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