あしたのジョー

マンガといえばスポ根!といった時代の名作「あしたのジョー」だが、意外と「知っているが履修してない」という人ばかりなのではないだろうか。
特に力石戦を物語のクライマックスと考えている人は多く(気持ちは分かるが)、その後の世界戦まで話が通じる人は少ない。

ジョーはドヤ街のチンピラなのだが、ここに当時の時代背景が見える。
そもそも現代日本では「ドヤ街」は存在せず――もしかしたら存在するかもしれないが――日雇いでその日暮らしという人も少ない。
そして野球を初めスポーツ等の一芸で一発当てなければなかなかその生活を脱出できるものでもなく、ワルはヤクザか格闘技という安直な流れもその時代背景によるものではなかろうか。
当然ながら僕もその当時を知っているワケではないのであくまで推測の域ではあるが、少なくとも現代スポーツ作品では絶対現れない設定で、マンガや映画といった世の中のフィクションからその時代を推察するというのは学術的にもよく聞く話だ。
実際に大学で北朝鮮の映画からお国の事情を学ぼうという講義を受けたことがある。

閑話休題。
ジョーと力石というライバル関係は大変アツく、力石の葬儀が実際に行われたという話も有名だが、その後のジョーの苦悩こそがこの作品の一番の見応えだと思っている。
トラウマから顔を殴れなくなり、更には戦う相手がみな引退に追い込まれることから死神とまで呼ばれ、リングにゲロを撒き散らし、ドサ試合まで落ちこぼれ、そこからの再起。
そしてライバルたちの浮き沈みと減量苦、最強の敵ホセとの戦い、最後の最後まで泥臭く戦い続けたジョーの生き様は、とてもではないが読まずして・見ずして理解できない。
「とにかく最後まで見てくれ」としか言えず、そして見たならば何も語ることなくウンウンと頷き合うだけで十分だ。

令和の現在、この作品の時代背景と世間が離れすぎてしまい、読む・見ること自体のハードルが高くなっていると思う。
2000年生まれもすっかり社会人に珍しくなくなった今、この作品の視聴をこれ以上先送りにすることはオススメしない。


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