ストリップ初体験【道後旅行記①】

夏休み前に受験生の担任を電撃退職して無職になった私は、愛媛県は松山の道後温泉へ1人旅に出た。やっとの思いでたどり着いた旅館では、クーラーがガンガンに冷えていて、テレビをつけると、松山市の小学校で担任の先生が、「良いですか。今日から学校が再開しましたが、まだ2学期ではないですからね。足りなかった授業を補填するための期間で、まだ1学期ですよ。」と朝のHRで話していた。「この先生も、”例年なら勤務があるといえどまだ夏休み気分でいられたのに。チクショー”って内心絶対思ってるよ。私なら思う。」と密かに考えつつ、もうそんなこと考える必要もないのかと思うと、寂しくもあり、どこか清清した気分でもあった。

ひとしきり旅館でくつろいだ後、道後温泉本館へ行った。自分は国語教師だったから、ここがかの有名な文学作品『坊ちゃん』の主人公が「松山なんか田舎やし東京と比べたら全然良いとこないけど、温泉だけはほんまに最高やな。」(意訳)って言った温泉かと思うと、感慨深いものがあった。

商店街界隈をぶらぶらしていると、最近建てられた道後温泉の別館があって、そのすぐ奥に「道後ミュージック」という小さなお店があった。建物の外観は、画廊のようなウッドデッキ調のお洒落さで、ストリップをテーマにしたアートでもやっているのかと思ったが違った。お店の外の看板を見ると、どうやらストリップ劇場のようだった。「え、こんな温泉の横、商店街の中にあるんや...」というのが正直な感想。どうやら、四国最後のストリップ劇場らしい。言われるがままにお金を払い、気づけば25歳女子一人でストリップ劇場に入っていた。

ストリップというと女性が裸で踊ったりして、それをワーキャー言いながら鑑賞するという、なんというか明るい性のイメージがあった。けれど、その印象は大きく覆された。

何人かの演目を見させていただいたけれど、特に心に残ったのは、戦時中の恋愛を演じたものだった。最初大音量で軍歌が流れて、舞台の女性は日の丸を振っている。女性の夫はどうやら出征したらしい。待てど暮らせど帰ってこない夫を思い、女は夫を思い出し、自慰にふける。途中で帰って来たと見せかけ二人でのベッドシーンとなるが、それは幻にすぎず、とうとう夫は帰らぬ人となったと電報が届く...というものだった。

最初、軍歌からどうやってエロへ繋げていくのだろうと思ったけれど、驚くほど、自然にエロへと推移していった。ストリップは、前戯挿入事後全て一手に演者の方が引き受ける芸術なんだと感じた。日常にエロは常に潜んでいるけれど、自分以外の他人様たちがどうやってエロのスイッチがオンになるのか、知っていそうで知らないな。日常とエロとの繋がりをもっと突き詰めたくなった。

平日で、コロナ渦にもかかわらず、観客は私以外に5人ほど。どの方も常連さんという感じでした。私は萎縮してしまって一緒に写真撮影とかはできなかったけれど、熱心な方は演者の方全員にチップを渡して写真撮影をしていて、やはり、ただ単純な性欲のはけ口を超越したものを感じた。挿入してフィニッシュして終了というものでは飽き足らない、上質なエロスを感じた。味をしめたので、また他のストリップ劇場へも足を運びたいと思います。


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