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いつかは来るであろう読売ジャイアンツの1軍本拠地移転 -私が考える最高の移転先は築地ではなく、よみうりランド-

◯読売ジャイアンツの1軍本拠地移転に関する話題が増えている理由

 長らく、プロ野球の盟主として君臨してきた読売ジャイアンツ。今でも多くの観客を動員しており、人気球団であることは間違いありませんが、プロ野球が放映権料で利益を上げるビジネスモデルから、球場に足を運んでもらい、チケットや物販で利益を上げるビジネスモデルへ移行したこと、各球団が地元のファンに応援してもらえる球団作りに積極的に取り組んだことで、プロ野球の中でジャイアンツが圧倒的な人気を誇る状況ではなくなりました。それでも、ジャイアンツはプロ野球の中で特別な存在であることは今でも変わっていないと思います。しかし、プロ野球のビジネスモデルが変わったことで、ある問題がジャイアンツの中でどんどん大きくなっています。それが1軍の本拠地についてです。

 各球団が球場に足を運んでもらうために新球場のオープンや大規模なリニューアルに取り組んだことで、かつては時代の最先端を走っていた東京ドームが野球場として魅力のある存在ではなくなってきています。現在では球団や球団の親会社が本拠地の球場を所有したり、多くの権利を持ち、球団主導で球場の運営に取り組んでいますが、ジャイアンツとスワローズだけは使用料を球場側に支払い、東京ドームと神宮球場を借りている状態になっています。プロ野球だけでなく、日本のスポーツチームを代表する存在であるジャイアンツの1軍本拠地が老朽化した借り物の狭いドーム球場というのは、ジャイアンツの価値に関わる大きな問題だと思います。広島東洋カープのマツダスタジアム、北海道日本ハムファイターズのエスコンフィールドを見る限り、プロ野球の球団が新球場を建設することはそこまで大きなリスクがあるわけではないということが分かりました。正直、いつまでも東京ドームを1軍本拠地として使用を続けるほうがジャイアンツにとってはリスクだと思います。

◯ジャイアンツの1軍本拠地移転先としてよみうりランドを推す根拠

①最高の立地にある東京ドーム

 まず、ジャイアンツがこれまで1軍の新球場建設に踏み切れなかった理由として挙げられるのが、東京ドームの抜群の立地です。立地だけを考えると、東京ドーム以上の場所に球場を建設することはほぼ不可能で、この立地こそが東京ドームの大きな魅力になっています。さらに2022年に東京ドームは大規模改修を実施、東京ドームは読売新聞グループ本社やジャイアンツの所有ではないものの、連携は取っており、改修の際も東京ドームとジャイアンツで協議を重ねながら進めたそうです。おそらく、ジャイアンツは2030年頃までは東京ドームを本拠地として使用すると思います。しかし、2030年代を目安にジャイアンツは新球場へ移転をすると私は予想しています。大規模改修を実施したとはいえ、東京ドームの野球場としての価値は2030年代には限界を迎えると思います。プロ野球の盟主であるジャイアンツがいつまでも古びたドーム球場を本拠地にすることは考えにくいです。

②築地がジャイアンツの1軍本拠地の移転先の候補になっている理由

 先ほども述べた通り、東京ドームは立地の良い場所にあるため、ジャイアンツが本拠地を移転しても、十分に経営ができると思います。野球場としての旬が過ぎても、東京の都会にある4万人以上を収容でき、雨の影響を受けないイベント会場としての価値は今後も続いていくはずです。そのため、ジャイアンツが東京ドーム側に丁寧な対応をすれば、円満に本拠地の移転を進めることができると思います。

 ジャイアンツの1軍本拠地移転先の候補地としては築地がよく挙げられ、2023年9月には三井不動産を中心とする企業グループが築地市場跡地の再開発事業に多目的スタジアムの案を提出しました。この企業グループの中に読売新聞グループ本社が入っていることで、この多目的スタジアムがジャイアンツの新しい本拠地になることを有力視する意見もあります。

 しかし、私はこの多目的スタジアムというのが引っかかっています。多目的スタジアムにするということはJリーグのクラブも本拠地として使用する可能性があり、ジャイアンツの専用スタジアムにはならないわけです。築地で構想されているスタジアムがジャイアンツの専用スタジアムになるのであれば良いと思いますが、そうでないのであれば、これがジャイアンツにとって魅力のある球場なのかは疑問に感じます。

 さらに現在の東京都知事である小池百合子氏は風見鶏と揶揄されるように、政策に関する立場を簡単に変える傾向があります。石原慎太郎氏が東京都知事を務めていた時から考えると、築地市場の豊洲市場への移転や、築地市場跡地の再開発については話が二転三転しており、今後も東京都知事が変わる度に話が白紙に戻る可能性もあります。それならば、読売新聞グループ本社やジャイアンツがある程度は主導して新球場建設を進められる、よみうりランドのほうが移転先としては良いと思います。読売新聞グループ本社は築地の多目的スタジアムについて、ジャイアンツの移転先としてではなく、今後、Jリーグクラブや他のスポーツチームの運営、コンサートなどのイベント事業に力を入れるために参加をしていると私は考えています。

③既に進んでいる「TOKYO GIANTS TOWN」の建設

 今後、プロ野球だけでなく、多くのエンターテイメントは集客数よりも客単価を上げることのほうが優先順位が高くなるはずです。日本の人口、出生数は2016年から7年連続で減少しており、2022年は80万人を下回り、統計開始後過去最小となりました。今後、日本の人口が減るのは間違いない状況になっています。プロ野球に限らず、数で利益を追うビジネススタイルがジリ貧になることは確実なため、プロ野球でも既に客単価を上げることに力を入れています。球場に関しても座席数を減らしてでも、魅力のある観戦環境を作るなどして、客単価を上げることに力を入れている球団が多いです。数を追うことが優先事項でなくなるということは、無理に都会に球場を作る必要性もそこまで高くはなくなります。そうなると、既に土地を所有しているよみうりランドに1軍本拠地を移転させるほうが読売新聞グループ本社全体で考えても、メリットが大きいです。よみうりランドは東京の稲城市と神奈川川崎市多摩区にまたがる場所にありますが、稲城市のエリアに新球場が建設されると予想しています。

 もう1つ、よみうりランド内にジャイアンツの1軍本拠地を移転させる根拠となるのが、ジャイアンツは現在、ファームの本拠地として使用する予定の新球場を建設していることです。球場の完成は2025年3月を予定、新球場は水族館一体型となり、周辺に飲食・スポーツ関連施設を備えた「TOKYO GIANTS TOWN」(東京ジャイアンツタウン)となる予定で、水族館を含めたグランドオープンは2026年度中を予定しています。地図を見る限り、1軍の本拠地もよみうりゴルフ倶楽部の一部を使用するなどで場所は確保できると感じました。

 正直、私はこのTOKYO GIANTS TOWNの詳細が発表された際、「巨人といえど、ファームの球場を中心とした構想にここまでの投資をするのか?」と思いましたが、これは最終的に1軍の本拠地を建設するための準備なのだと思います。先にファームの新しい本拠地と水族館などの施設を建設して、その後に交通インフラなどを整えてから、1軍本拠地をよみうりランド内に建設する計画だと私は考えています。

TOKYO GIANTS TOWN①
TOKYO GIANTS TOWN②
TOKYO GIANTS TOWN③
TOKYO GIANTS TOWN④


◯出典
・Bloomberg 築地再開発の三井不連合案、事業費9000億円でスタジアム建設-報道 配信 2023年9月7日
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-09-07/S0MB24DWRGG001

・厚生労働省 人口動態調査 2024年3月6日
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1.html

・読売ジャイアンツ(巨人軍)公式サイト 「TOKYO GIANTS TOWN」構想について ―国内初、球場と水族館が一体化したスポーツとエンターテインメントの融合―  2024年3月6日
https://www.giants.jp/sp/tokyo-giants-town/







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