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オリックス・バファローズが人気球団になった理由

 かつては不人気球団の象徴のような存在だったオリックス・バファローズ、もし今でもバファローズは不人気球団だと思っている人がいるなら、それは間違いです。バファローズは2023年シーズン公式戦の主催試合で1947453人(1試合平均27048人)を動員、2024年の春季キャンプでは2月12日にこの日の12球団最多となる29196人を集客、今のバファローズは人気球団の1つといえる状況になりました。今回はバファローズが人気球団になった理由について考えていきます。

◯プロ野球というコンテンツの強さ

 バファローズの試合を現地で観戦している人なら、バファローズを応援する女性ファンが増えていることを実感していると思います。今のバファローズの試合の観客席はカープ女子が流行した時の広島東洋カープに雰囲気が似ていると思います。そのため、今回はバファローズの女性ファンが増えた理由に注目をしていきます。

 まずはプロ野球というコンテンツについてですが、これがそもそも女性が応援をするコンテンツとして、非常に適しています。女性が応援をするコンテンツといえば、音楽や演劇などのエンターテイメントが真っ先に浮かびます。しかし、推しに会いに行くことができるイベントは年中開催されているわけではなく、アーティストのツアーにしても、開催していない時期のほうが圧倒的に長いです。しかし、プロ野球は4月〜9月の半年間、毎日のように試合を行っており、キャンプ、オープン戦、自主トレを含めれば、ほとんど1年間、選手を直接見るチャンスがあります。1年の中で応援できる機会が多いことはプロ野球の大きな強みだと思います。宝塚歌劇団が多くの女性に愛されているのも、年間を通して多くの公演を開催して、応援できる機会が多いことが要因の1つになっていると思います。

◯京セラドームの立地の良さ

 次にバファローズを応援する女性が増えている理由として、立地の良さも挙げられます。京セラドームには最寄駅として、大阪メトロ長堀鶴見緑地線のドーム前千代崎駅、阪神電車阪神なんば線のドーム前駅、JR大阪環状線の大正駅があります。大阪シティバスの停留所も近くにあり、高速道路のインターも近くにあります。梅田や天王寺からはJR
、心斎橋からは大阪メトロ、難波からは阪神電車を使えば、乗り換えなしで京セラドームへ行くことができます。大阪メトロの駅があるおかげで、他の大阪市内のほどんどの場所からも、1回の乗り換えで京セラドームに足を運ぶことができます。試合終了後も観客が利用する交通機関が分散されるため、極端な混雑にはならないことも京セラドームの魅力です。

 また、2013年に京セラドームのすぐ横にイオンモール大阪ドームシティがオープンし、試合前に過ごせる場所が増えました。さらに2024年1月27日からイオンモール大阪ドームシティは京セラドームでコンサートが開催される日は専門店側1F〜4Fの男性用トイレを10時00分〜18時00分まで女性用トイレに変更することになりました。これはプロ野球の試合の開催日では実施されない予定になっていますが、それでもドームのすぐ横にイオンがあるのは大きな強みになっていると思います。

2023年9月20日 バファローズがパ・リーグ3連覇をした日、開場前の京セラドーム
大阪メトロ ドーム前千代崎の改札前(2023年4月に撮影)

◯阪神タイガースにはなく、オリックスバファローズにあるもの

 関西ではタイガースを応援する野球ファンが非常に多く、それに対してバファローズは不人気球団とこれまでは揶揄されていました。しかし、今ではバファローズを応援するファン、特に女性ファンが増えているわけですが、バファローズの何が彼女たちを惹きつけるのでしょうか。

 バファローズは観客動員数を増やすため、明確に女性をターゲットにしました。ユニフォーム姿ではなく、アイドルやアーティストのようなファッションに身を包んだ選手のグッズ、他にもタオルやペンライトや選手の顔が印刷されたうちわなど、アーティストのライブで販売されるようなグッズを販売し、女性が球場へ足を運ぶ敷居を大きく下げることに成功しました。球団側が「野球に詳しくなくても、ぜひ、球場へ来てください」というスタンスを明確にしたことで、女性が球場へ足を運びやすくなった部分はあったと思います。

 一方、タイガースは長年タイガースを応援しているファンが多く、ファンサービスにおいて新しいことへの挑戦がしにくい雰囲気があります。タイガースが現在のプロ野球において、いちばんの人気球団であることは間違いありませんが、一方でファンが固定化され、新規のファンが入りづらくなっているのは事実だと思います。バファローズはかつて野球から最も遠い存在だった若い女性をターゲットにしたことでファンを増やすことに成功をしました。

◯プロ野球は女性の観客動員が増えれば、男性の観客動員も増える

 バファローズは女性が球場へ足を運びたくなる取り組みに力を入れていますが、一方で男性の観客動員数も間違いなく増えています。2023年にバファローズがリーグ3連覇を達成したことももちろん大きな要因ですが、男性は本当に単純な生き物なので、「女性がたくさんいる空間で野球が観られるなら、球場に行こう」という邪な男性は間違いなく一定数います。ビールの売り子さんに女性が多いのも、野球観戦をしている人の多くが男性だからです。もしも、将来的に女性の観客が多数を占めるようになれば、スーツを纏ったかっこいい男性が球場でビールを販売することも増えるかもしれません。

 ただ、男性ファンはチームが強いと球場へ足を運ぶ人が多い一方で、チームが低迷している時は現地へ足を運ばない人も一定数います。しかし、女性ファンは男性ファンに比べると、チームよりも選手を応援しているファンが多いため、チームが低迷しても、選手を応援するために球場へ足を運ぶ傾向があります。

 山本由伸投手と山﨑副也投手(2023年に京セラドームへ足を運んだ際、女性ファンが最も着用していたのが山本由伸投手のユニフォーム、2番目に多いのが山﨑副也投手だと私は思いました)が移籍した2024年はどうなるのかと考えていましたが、春季キャンプを見る限り、新しい推しを応援している女性ファンがたくさんおり、バファローズのは観客数が大きく下がることはないと思います。

◯10年前と今、球団のファンサービスに対する姿勢の変化

 オリックス・バファローズを応援する女性ファンをオリ姫と呼ぶようになったのは2014年からで、オリ姫という呼称を球団側が積極的に発信したことが始まりでした。2014年はバファローズが最後の最後まで優勝争いをしたこともあり、バファローズを応援する女性ファンは一定数増えました。しかし、その後はバファローズを応援する女性ファンがそこまで増えている実感は湧きませんでした。もちろん、2015年シーズンから再び低迷期に入った当時と3連覇を達成している現在では状況が違いますが、女子ファンが増えた根本的な理由はそこではないと思います。

 10年前に私が感じていたのは、バファローズは球団として女性ファンを増やす取り組みを頑張っていたのは間違いないのですが、「オリ姫というコンテンツを作ったから、ぜひ、盛り上がってください」というある程度ファンの自発的な行動に依存したマーケティングをしているように私には見えました。

 しかし、現在は球団側が完全に振り切っていて、女性のみを対象にしたイベントを数多く開催したり、アイドルやアーティストのようなファッションを纏った選手のグッズを販売するなど、「女性ファンが喜んでくれるなら何でもする」という球団側の姿勢を感じます。このご時世は性別でサービスを区別化するのは世間からの批判に晒されるリスクもあります。このような世の中で信念を持った取り組みをしていることが女性ファンを増やすことに繋がったのだと私は考えています。




◯出典
・オリックス・バファローズの観客動員数-プロ野球Freak 2024年3月1日
https://baseball-freak.com/audience/buffaloes.html

・スポーツ報知 【オリックス】宮崎でオリフィーバー!キャンプに過去最多2万9196人 この日の12球団最多動員…その魅力に迫る 配信 2024年2月12日
https://hochi.news/articles/20240211-OHT1T51302.html?page=1

・イオンモール大阪ドームシティ 京セラドームコンサート開催時のお客さま用トイレの運用につきまして 2024年3月1日
https://www.aeon.jp/sc/osakadomecity/info/detail/information_e1747_as.html

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