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埼玉西武ライオンズのファン感謝祭について思うこと〜多くの人が満足するファンイベントとは〜

 2023年11月26日(日)、ベルーナドームで埼玉西武ライオンズのファン感謝祭『LIONS THANKS FESTA 2023』が開催されました。プロ野球チームのファン感謝祭は11月の中頃から後半の時期を目安に、ファンへの1年間の感謝を込めて各球団が開催しているイベントです。

 しかし、今年のライオンズのファン感謝祭についてSNSを確認すると、内容に不満を感じたファンの投稿を多く目にしました。そして、個人的にその不満は理不尽なものではなく、納得できるものでした。せっかくのファンイベントでなぜミスマッチが起こるのか、どのようなイベントをファンは望んでいるのかについて今回は考えてみました。

◯ 『LIONS THANKS FESTA 2023』の概要

 今年のライオンズのファン感謝祭は9時30分に開場して16時30分に終了、ベルーナドームのグラウンドに設置されたメインステージでのステージイベント、グラウンドの外野エリアで実施されたサイン会(写真撮影もできる)やトレーニングセンターで実施された野球体験イベントなど、選手とのふれあい企画、各店舗でのグッズや飲食の販売の3つがタイムテーブルに記載されています。

◯どのような不満をファンは感じたのか

 「そもそもファン感謝祭をやってくれるだけ、ありがたいと思うべき」、このような意見を持っている人もいると思いますので、先に私の考えを述べます。

 もちろん、ファン感謝祭のために多くの球団職員の方が準備をされたはずですし、ファンに楽しんでもらうために日々大変な努力をされていると思います。しかし、今年開催されたライオンズのファン感謝祭は観覧チケットを販売して、入場料を取っています。お金を取る以上、それに見合う満足感を味わうことができなかったのなら、そこに対して意見を言う権利はあると思います。私はファン感謝祭に参加せず、お金を払っていないので、ファンが感じた不満に関しては私個人の意見ではなく、実際に参加された方の声を紹介するようにします。

 また、「選手はシーズンオフに時間を取ってくれているのに、ファン感謝祭の内容を批判するのはファンのわがままではないか」という意見もあると思います。これに関しては、選手はその年の2月1日〜11月30日までが球団との契約期間になっているため、ファン感謝祭への参加は選手の義務だと私は考えています。その前提を確認したうえで、今年のファン感謝祭に対して、ファンが感じた不満をまとめていきます。

①選手とのふれあい企画の抽選に外れたファンからの不満

 私が調べた限り、参加したファンの不満として、最も多かった意見がこれです。選手とのふれあい企画にはサイン会や野球体験イベントなどがあったのですが、これらのイベントの抽選に外れたファンの疎外感が非常に大きかったようです。選手とのふれあい企画はファンクラブ会員限定で事前抽選が行われたのですが、抽選に当たったファンは選手と直接関わることができて満足度が高かったものの、抽選に外れたファンは抽選に当たったファンがサインをもらったり、写真撮影をしている姿をスタンドから観ている状況になりました。サイン会が隔離された空間で実施されるなら、抽選に外れたファンからそこまでの不満は出なかったのかもしれませんが、離れたスタンドから喜んでいるファンの姿が目に入るという状況が、参加できなかったファンの不満をさらに大きくしたようでした。

②子どもを優先するあまり、大人のファンからの不満

 次に多かったのが、あまりに子どもを優先していることへの不満です。選手とのふれあい企画の詳細を見たのですが、野球体験イベントは事前抽選で当選したファンクラブのジュニア会員(中学生以下)のみの参加だったため、サイン会に外れたファンはほとんど選手と触れ合える機会がなかったようです。子どものファンが楽しめるイベントを用意することはもちろん大切ですが、そこを優先するあまり、実際に多くのお金を球団に落としている大人のファンから「子どものために大人は何もかも我慢しなければいけないのか」という不満が生まれたようです。

③サインボールの投げ入れから生まれた不満

 ファン感謝祭の最後に選手によるサインボールの投げ入れが行われたのですが、これもサインボールを取れた数少ないファンと取れなかった大勢のファンの間で満足度の差が生まれる原因になりました。2022年のファン感謝祭ではイベントの最後に選手によるお見送りが行われ、10個のレーンにどの選手が配置されているかもアナウンスがされており、ファンは好きなレーンを選ぶことができたため、全員が好きな選手と間近で関わることができました。しかし、今回はほとんどのファンがサインボールを取ることができず、座席によってはボールが近くにさえ全く飛んでこなかったこともあり、不満に感じたファンの方が多い様子でした。

◯多くの人が満足するファン感謝祭にするにはどうしたら良いのか

 ここからが私の意見です。今回、ファン感謝祭に参加したファンの方の意見をまとめると、選手と近くで触れ合える機会があった人とそうでなかった人の満足度の格差が不満の原因になっていると感じました。この不満を減らすには、多くの人が満足できるイベント作りが大切になってきます。そのあたりを考慮して、どのような内容のファン感謝祭にすれば、多くの人が喜ぶのかを考えてみました。

①ステージイベントを減らして、選手と触れ合える機会を増やす

 ファン感謝祭のタイムテーブルを見て、私が思ったのはステージイベントを中心にして、予定が組まれていることです。ステージイベントでは選手によるゲーム企画や体育祭などが実施されたのですが、「選手と近くで触れ合いたい」というニーズがあるのなら、大きなメインステージをなくして、ステージイベントを減らしても良いのではないかと思いました。

 今回のファン感謝祭には引退セレモニーに出席した選手を除き、72名の選手と松井監督が参加しました。これだけの選手が参加しているにも関わらず、ファン感謝祭の映像を確認すると、ステージイベントの際に暇を持て余している選手がいるなど、多くの選手が参加している利点を活かすことができていないと感じました。ステージイベントがあることでファンが選手と触れ合える機会が減っているのなら、メインステージをなくし、その分サイン会の場所を増やして、多くの時間をそこに割いたほうが良いと思いました。おそらく、ファンの多くが数時間のステージイベントを観るよりも、20秒で良いから選手と触れ合いたいと考えていると思います。

②不公平感をなくす仕組み作り

 今回、ファンから不満が出た理由として、サイン会や野球体験イベント以外に実施された、選手による若獅子食堂でのお渡し会やアリーナ席のチケットが当日の先着順だったことが挙げられます。この当日の先着順という仕組みは不満が出やすく、他のイベントでも「ルールやマナーを守っている人が損をしている」という声を頻繁に耳にします。例えば、配布場所までまわりの迷惑を考えずに走ったり、「地域住民の迷惑になるため、時間ちょうどにお越しください」とアナウンスがされているにも関わらず、時間を守らず早く集合した人が恩恵を受けるなど、マナーやルールを守らない人が得をしやすい特徴があります。

 また今回、不満が出た背景に「同じ入場料を払っているのに、当選した人だけが良い思いをしている」という不公平感から不満が出た部分もあったと思います。それならば、シーズン中に試合のチケットを多く購入したから人が優先してサイン会に参加できるなどとしたほうがまだ納得ができたと思います。もちろん、これに対しても間違いなく不満は出るでしょうが、お金を多く払っている人が恩恵を受けるのは当然のことであり、むしろ日本はお金を多く払っている人へのサービスが手薄になる傾向があるため、彼らを大切にすることも重要だと思います。

③多くのファンが満足できるファン感謝祭の具体的な内容

 では、多くのファンが満足できるファン感謝祭にするにはどうしたら良いのか。まずサイン会についてです。今回のサイン会は選手や監督にその場でサインを書いてもらい、その後に一緒に写真を撮ってもらうという流れだったのですが、もちろん、当選した人にとっては最高の思い出になったでしょう。しかし、参加できなかった多数のファンから不満が出てしまうという結果になり、ファンの間で満足度に格差が生まれるという結果になりました。

 例えば、1人でも多くのファンが選手と触れ合える機会を作るなら、サインが書かれた色紙は事前に準備しておいて、それを選手がファンに渡していくという方法があります(実際に色紙を渡す選手とその色紙にサインを書いた選手が違う前提にはなります)。2023年シーズン、ベルーナドームの最大収容人数は31552人と公表されています。しかし、2023年にベルーナドームで開催されたライオンズの試合の観客動員数を見ると、おそらく、消防法の関係などでチケットの販売枚数は1試合最大で28000人分程度に抑えていたようでした。28000人全員にサイン色紙を配るとして、選手と監督合わせて73名がファン感謝祭に参加したので、1人が約384枚のサインを書けば良いため、事前に準備をすることは可能だと思います(ファン感謝祭の期間中にアジアウィンター・ベースボール・リーグに派遣されていた4選手、当日を体調不良で欠席した2選手を含めれば、79名になるため、選手1名が準備するサイン色紙は約355枚になります。また、観客数をもう少し抑えれば、選手の負担を減らすことができます)。普段の試合でも観客全員にグッズを配布することがありますが、開場後の約2時間でほとんど配布ができているため、ファン感謝祭の時間内でファン全員にサイン色紙を選手が渡すことは現実的に可能だと思います。

 トークショーなどのイベントはホームベース付近に円形のステージを作れば、バックネット裏の席など高い料金を払っている人が近くで観ることができるため、彼らが恩恵を受けることができます。円形ステージにすることでどの席からでもステージを観ることができますし、オーロラビジョンに映像を流せば、サイン会に並んでいる人も暇を持て余すことはなくなります。

◯最後に

 実はライオンズは一時期、ファン感謝祭を実施していませんでした。2005年に開催した際は25年振りの実施ということで当時は少し話題にもなりました。私は1999年にライオンズファンになったのですが、当時のライオンズは本当にファンサービスに力を入れていない球団でした。しかし、現在は球団として様々なイベントや取り組みを実施して、ファンを大切にしているのが伝わってきます。

 しかし、ここ数年、「球団の取り組みとファンが求めていることがミスマッチしている」と感じる部分があり、ファン感謝祭の内容に不満を感じているファンが多い様子だったため、記事にすることにしました。

 2024年、ライオンズに関わる全ての人が幸せになる年になることを願っています。あと、ファン感謝祭を盛り上げるために金子侑司選手が頑張っているのを見て、めっちゃ好きになりました(笑)


◯出典
・埼玉西武ライオンズ 2023年11月29日
https://www.seibulions.jp/


・埼玉西武ライオンズ LIONS THANKS FESTA 2023 2023年11月29日
https://www.seibulions.jp/special/thanks/

・【公式】パ・リーグTV 2023年11月29日
https://pacificleague.com/ptv


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