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『ガスパール/君と過ごした季節(とき)』にみる、南仏の風と人の優しさ

冒頭、いきなりの姥捨てに笑ゲキ。
一文無しのおばあちゃん(シュザンヌ・フロン)を迷わず助けたのはロバンソン(ヴァンサン・ランドン)。彼は幼いころ母親に捨てられて、困った人を放っておけないのだ。
一方、共同で海辺のレストランを準備するガスパール(ジェラール・ダルモン)は、妻が家出して以来、家族の絆にはうんざりだ。

再度姥捨てにかかるガスパール...だがロバンソンの庇護が実を結び、いつしか三人の暮らしに慣れていく。

目下失業中の男たちが、夜な夜な金持ちの家に忍び込んでは食糧を盗み、糊口をしのぐ日々がたのしい。家主たちの寝静まったダイニングで、忍び笑いを嚙み殺しての宴など、見ているこっちの腹までよじれそう。

南仏プロヴァンスの光と風と、色とりどりのイスの群れ。名匠ミシェル・ルグランの豊かなメロディ流れるなか。
3人のビンボー暮らしがどんなに世知辛くとも、なにもかもが尊くキラキラしていた。

レストランの改修が終わりに近づいた、そんなある日。
ロバンソンは子連れの未亡人を助けて、ふたりは恋に落ちるのだった。やがて、行くあてのない母娘がレストランにやってきて、ガスパールはひとり静かにみんなの前から立ち去っていくー

瘋癲を愛するガスパールの、男の哀愁とやさしさが切ないラストシーン。

ー少年のような友情で結ばれた二人の男の物語ー

『ガッジョディーロ』『ベンゴ』とはまだ感触のちがう、トニー・ガトリフ監督初期の素敵な小品だった。(93min)

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