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豪華絢爛『プロスペーローの本』にみる、ピーター・グリーナウェイの偏執

 ”ピーター・グリーナウェイ レトロスペクティヴ”と題したリバイバル上映が、ここ札幌にもやってきた。
どれも未見の4作品のなか、ずっと気になっていた『ZOO』観られず。
『プロスペローの本』に足を運ぶ。
シェイクスピアの『テンペスト』さえ知らず、簡単なあらすじを頭に入れて、あとは映像の偏執的狂気をたのしみに。

手作り感たっぷり、流動的な画面に繰り広げられる、舞台劇の閉塞を逆手に取った絢爛豪華なショウ。
ワダエミの手になるゴージャスな衣装に、マイケル・ナイマンの贅沢な音楽、ただし観念映画領域にあっては、どんなにシュールに狂ってても眠気に苛まれてしまう。
寝たくないから、腕をつねり頑張って目をかっぽじっていたけれど、興味あるのに寝てしまう。
観念ムービー恐るべし。
ちょっとした拷問か。

さらには、ワダエミさんのすばらしい衣装以上に、全裸のエキストラさんたちが終始画面を象っていく。
あらら、あらら裸裸裸裸、裸裸裸裸裸裸...

無数の舞台美術の大道具小道具ひとつひとつが凝りに凝り、なんて贅沢な作品だったろう。
じっと画面を眺めているだけでたのしい。
気づいたら寝てしまっているジレンマに責め苛まれるおもい。

そんなドSな『レンブラントの夜警』すら見逃しているグリーナウェイ作品は買うと高額で、今となってはレンタルすることも叶わないのだ。

邪悪な弟にミラノ公爵位を奪われ、娘ミランダとともに島流しにされたプロスペロー。そんな目に遭わせたナポリ王と弟への復讐を誓い、12年後、魔法で大嵐を起こし、彼らを載せた船を難破させ、島に上陸させる。一行からはぐれ、一人、島に辿り着いた王子はミランダと恋に落ちる。プロスペローはそれを利用し、復讐を果たして公国を取り戻そうとするが…。赦しと再生、そして植民地支配を描いたシェイクスピア単独執筆最後の傑作。 

角川文庫版あらすじより

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