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三題噺:【人見知り&喉&内職】

喉が痛い。なにしろ人と話さないから声が出ない。
「あーっあーっ」
たまに声を出す練習してみる。も使わないと筋肉なので大声が出なくなる。
「仕事をどうしようかな」

円高と不況で仕事が少ない。ハロワの案件を見ても釣り案件しかない。昔のようなバイトが無い。専門性が高いのだ。気軽に仕事は出来ない。内職も探したがあるわけもない。

「これはどうかな?」

電話受付の仕事がある。事務所で電話を取る仕事は昔からある。お茶を出したり雑務だ。今時は珍しい。電話してみた。相手は自動音声なのか、番号を入力しながら進めていると、事務所に来るように指示がある。

xxx

「面接に来ました」
事務所の受付の電話を取ると、ここでも自動音声だ。ドアから入って面接室に行くように指示された。面接室にも誰も居ない。モニターとキーボードがある。簡単なテストを受けるように紙が机に置いてある。私は目の前のパソコンで試験を受けると、結果はメールで送ると表示される。

「受かった……」
お祈りかメールだと予想していたら受かっていた。出社して口座番号を提出してくれと言われる。当日に出社すると、また同じだ。誰も居ない。

Female employee working alone at her desk, watercolor, dreamy, wide angle shot, less detail --v 4

「無人の会社?」
さすがに違和感があるが、伝染病で全員が自宅で仕事をしている可能性も考えた。私は自分の席に着くと命令書と言うか指示書がある。それを見ながらコンピュータに情報を入力した。

「はい、○○会社です」
電話に出るとマニュアルを見ながら回答する。大体はマニュアル通りで問題はない。困難な質問はメールで担当者に聞いた。私は毎日出社するが事務所は誰も居ない。


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「飲み会とかあるんだ……」
私の入社の祝いだ。仕事が終わり駅前の店に行く。予約した店に行くと、個室だ。狭い部屋の中で一人の女性が座っていた。

狭すぎる部屋で初めて別の社員と出会う。彼女は恥ずかしそうにうつむいていた。
「ごめんなさい、人見知りなんです」

彼女は社長で、貿易で会社を大きくした。自分が人見知りなので、なかなか他人と仕事が出来ない。他の社員は自宅で仕事をさせた。事務所に誰も居ないのも不便な場合がある。荷物が来る場合もある。そのために人を雇った。大体は一ヶ月くらいで持たないと言う。一人で事務所に居て電話対応を続けられるのは私だけだ。

「はぁ、まぁ無職時期が長いので一人で部屋に居るのは馴れてます……」

そんな自慢にならない事を説明すると、彼女はにっこりと笑う。
「じゃあこれからもお願いします」

私は今日も一人で電話対応している。がらんとした事務所に居るとなんか寒い。ふっと考える。人見知りって仲良くなったら平気なんじゃ……

終わり

追記:今読み返したら山も落ちもなんもなかった。ワロタ。挿絵を増やして、ネコを入れました。許してください。


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