SS 祝い【文化祭】 #シロクマ文芸部 ※毒あります
文化祭に私の居場所は無い。クラブ活動をしている子は、部の出し物にいそがしい。クラスの出し物に熱心な子は、普段から目立っている子だ。
「占いとかどうよ? 」
「喫茶店は? 」
私は楽しそうなクラスから孤立している。名目上は部活動で忙しい事にしているが、文芸部なのでコピー誌を作るだけ。
「ねぇ、コースターに恋占いとか書いて」
普通の喫茶店では面白くない。クラスメイトは文章が上手な私にメッセージを頼んできた。私は文章だけではインパクトが少ない、イラストもつけるアイデアを出した。クラスメイトは嬉しそうにうなずく。
「清美、頼める? 」
「私でいいの……」
うつむく彼女は一年前は、いじられていた。イジメとは違う。仲良くなる風にみせかけて放置される、これを繰り返しされると人間不信になる。頭の良い子はギリギリの線で相手が苦しんでいる状態にして、楽しむ。
清美は絵の才能があった、私は彼女の特殊な絵に興味を持ち文芸部に誘う。警戒されながらも、私は適度な距離を保ちながら信頼を得られた。
「文化祭用のイラストよ」
「判った……」
文化祭の当日は盛況だった。お茶とお菓子。そしてコースターに描かれた変わった絵と文章。
(素敵な彼とキスします)
お茶を飲んだ後に、コースターを裏返すとイラストを見られる。たわいもないお遊びだ。
(これ千絵じゃね? )
(相手は野球部の彼だよね? )
清美はイジッタ相手の特徴を描きながら暴露する。判らない人に無意味な絵でも、やられた方はすぐ判る。ちょっとした復讐だった……
数日して彼女は登校せずに退学する。陰湿な行動は陰湿なイジメを誘発した。私は自業自得だと自分を納得させた。
xxx
「ひさしぶり」
今日も残業で疲れた私はコンビニからでると、清美が立っている。みちがえるような派手な彼女は、意地悪そうに私を頭からつま先までなめるように観察する。
「絵の才能で人気が出たの! 」
ひとしきり自慢すると、あの時の恨みを私にぶつける。いじめられている私を見捨てた、会いにも来ない、誘ったのはあんたなのに!
「ごめんね……」
「まぁいいわ、あんたなんかよりずっと幸せ! 」
楽しそうな彼女が歩き去るのを見届けると、彼女を祝う事にした。
「今日は、どんな話で彼女を苦しめようかしら……」
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