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赤青鉛筆【カバー小説参加作品】

 両端が削られた赤青鉛筆を使うと、目に刺さりそうに感じる。うつむいて書いているせいだろうか?

「今日の日記は何かな?」

 私の日記を見知らぬ男性が読んでいる。彼は奇妙な男だ、服の色が、白かと思ったら青色に、青色になったと思ったら奇妙なグラデーションを描いて赤色へと変わった。

 この見知らぬ男性を母は「先生」と呼ぶが学校の教師には見えない。こんな変な服を着た教師が居ないから……

 先生が日記を読んでいる最中に、母が私を部屋から連れ出す。

「お母さん、先生と少しお話があるからこの椅子に座って待っててね」

 ここは病院に感じる、年老いた女性が何かぶつぶつとつぶやいていた。長椅子に座ると壁の色も変だ。微妙にグレーがかった白い壁が少し紺色っぽい青に変わり、うねうねと渦を巻くようにして濁った赤色へと変わった。

「赤色……」

 私は母に赤くなる壁の話をしようと部屋に戻ると、母が先生に告げ口をしていた。

「どう見ても黒なのに、あのコったら赤と青で書いてあるでしょ、なんて言うんです」

(黒い鉛筆じゃないのに、赤青鉛筆なのに……)

 私が立っている気配で母がふりむくと、恐怖を感じているのか両眼が大きく大きく広がる。母の顔色が白から青色に変わった。母は、まるで化け物でも見たかのような顔をしている。

(母を赤くしないと……)

 先生も壁も母も赤くなるべきだ、青ざめた顔は嫌い。

 私はここに来て最初に書かされた、質問の用紙の上に置きっぱなしになっている鉛筆を掴んだ。

 ――その先端の黒かった鉛筆は、今は赤黒く染まっている。

(母の言う通りね、これは黒鉛筆だったわ……)

 私も赤くなるべきだ、鉛筆を顔に向ける、そして、また今日も赤青鉛筆で日記を書かなくちゃ、と思った。


カバー小説を書かせていただいています。

カバー元小説です、ありがとうございました。

#カバー小説
#赤青鉛筆
#しめじ

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