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SS 幸せなおばあさま【#青ブラ文学部参加作品】#答え合わせ #眠り薬

 戸棚には青い薬瓶くすりびんがある。薬の名前が書かれたラベルはかすれていた。同じ薬瓶くすりびんなので、何錠か取り出すと別の薬瓶くすりびんを探す。小学生の私は、薬と白湯さゆを盆に乗せて祖母の布団に持って行く。

「おばあさま、薬です」
「遅いよ、手をお出し」

 しわのあるひからびた腕を伸ばすと、私の腕をつかみ、内側のやわらかい部分を爪できゅっとつねる。泣くくらいに痛いけど我慢した。声を出せばもっと痛くされる。じっと耐えた。

xxx

「いつもありがとうね」

 母は疲れたように、私を慰めてくれる。昼間はずっと祖母の世話ばかりだ。気疲れするのか、顔色も悪い。だから私は夜に、祖母の世話をした。

 祖母は気難しく、陰険でねじ曲がった性格にみえる。ひたすら善意を悪意に解釈した。

 お茶を出せば

 「老人だからって、こんなにぬるくして、私を凍えさせるつもり?」

 祖母は悪意を見せて相手を痛めつけるのが大好きだった。祖父にひどい仕打ちをされた祖母は、性格が歪んでしまう。祖母も被害者だと私は思う。

 私は白湯さゆを渡して、祖母に薬を飲ませた。

xxx

「――睡眠薬?」
「薬瓶に入れ間違え……」
「――子供だから判らない」

 翌朝に死亡を確認された祖母は、薬で深く眠ったためか、枕で窒息していた。普通なら息苦しくなれば起きれたが、薬が強すぎた。母が私を抱きしめる。

「ごめんなさいね、私がちゃんと確認しなかったから……」

 犯人を捜しても意味はない、薬を飲ませたのは小学生の孫だ。罪を問うても誰も幸せにはならない。死亡原因は心臓発作にされた。

 それからは、母が陽気で常にやさしかった。祖母の死で母は解放された。とても幸せな事だから、私は答え合わせをするつもりはない。

 私が最初に見た時に、枕が祖母の顔の上にあった事を……

#青ブラ文学部
#答え合わせ
#眠り薬

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