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SS チクタク水兵さん #毎週ショートショートnoteの応募用

 幼い頃に見た水兵は、あこがれだった。帝国軍人として国をまもる、生きがいに感じる。だから入隊した。離島で敵戦艦を見つけると乏しい武器で最後の戦いが始まる。

「敬礼! 秘密任務を伝える」
 みなが覚悟している、特殊兵器を利用した特攻作戦の開始だ。敵を一人でも倒せるなら命なんて惜しくない。時限装置付きの棒を持って戦艦まで泳いで行く。

 当日は曇天で海の中も暗かった、潜水服を着て長い棒を持って敵を倒す。悲壮感は無かったが、装備の雑さに俺はあきれていた。泳ぎながら頭の中で童謡を歌っている、それも飽きて替え歌にした。

「チクタク水兵さん♪ 泳いで水兵さん 暗い海 強い敵 どこにいる」

 もちろん敵の戦艦なんて見えるわけがない。俺は最後まで迷ったままだった。疲れ果てて海岸で倒れているところを捕虜にされた。

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「カモメの水兵さん♪」
 赤いワンピースの孫が楽しそうに歌っている。保育園で教えていた、公園でお遊戯ゆうぎをしながら腕をパタパタさせている。

「かわいいぞ」

 孫の名前を呼びながら、ゆっくりと涙がにじんだ。


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