すずめばち
土手を歩いていると
ふと、スズメバチを見掛けた。
飛んでいるものではない。
彼は、土手の縁を歩いていた。
そして、ときどき、飛ぼうと努力をしていた。
体長7~8cmくらいはあったと思う。
見事な体躯だった。
元気に飛んでいたら、間違いなく怖い。
その彼が、いま、とべるのは、10cmあるか、ないか
くらいのようだった。
歩き続け、何度も飛ぼうとする彼。
ぼくは、しばらく眺めていた。
彼を治してあげたい気持ちになった。
でも、そうするすべがわからなかった。
余計なことをしても、刺されるのだろう。
たぶん、彼は息が絶えるまで歩き、飛ぼうとすることを
諦めない。
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