馬に馬鹿にされる人生

ちょうど1年前から趣味で乗馬に通っている。
通い始めたきっかけは、ウマ娘にハマったからだった。きっかけはゲームだが、今や馬という生き物そのものに魅了されている。

乗馬を始めて1年になるのだが、仕事が不定休な事もあってなかなか通えていないので、大して技術が向上しているわけでもない。
乗馬は馬に左右される部分が大きく、馬の個性によって乗りやすい・乗り辛いが生まれる。
例えば体格が小さかったり、脚が短い馬はリズムが速いので、人間が馬上で立ち上がるタイミングも変わってくる。馬嫌いの馬は、前の馬との間隔が短いと尻尾を噛んだりする。そもそも走るのが嫌いな馬は、レッスンの途中で寝たりする。一頭一頭の個性に合わせた乗り方をするのも、人間のスキルの見せ所である。

昨日乗った馬は、指導員曰く
「人間が指示を出さなくても自分で勝手に動いてくれる、スーパーホース」
だそうだ。久々の乗馬だが、乗りやすそうな馬で安堵した。
レッスンが始まり、まずは馬場を常歩(なみあし)で歩く練習をする。確かに指示を出さなくても抜群の間隔で歩いてくれる。
だが、レッスンが始まって少ししてから、馬場が狭かった為、指導員が何頭かを別の馬場に連れて行った。その中に私たちも含まれていた。
隣の馬場に2頭だけ隔離される。指導員は隣の馬場で様子を見ている。

「そろそろ速歩(はやあし)に移るので、歩度を詰めてください」と指導員から指示があった。歩度を詰める、というのは、馬が歩くスピードのことで、走り出す為に少しずつスピードを上げていく必要がある。手綱を短くし、鞭やキックで馬に指示を出していくのだ。
私も馬にキックで歩度を詰めるように指示を出す。馬の反応はない。馬によっては反応が鈍いこともあるので、もう少し強めにキックをする。やはり反応がない。
「この馬は反応がいいので、鞭はあまり使わなくて大丈夫」と言われていたが、やむを得ず鞭を使う。反応がない。ちょっと心配になるが、かなり強めに鞭を使うが、やはり反応がない。
すると、指導員がこちらの馬場に様子を見に来た。途端、私の馬が歩度を詰め始めた。「速歩……」と指導員が単語を口にしただけで、何も指示していないのに勝手に走り出した。

無礼なめられてる、と流石に悟った。

その後も指導員がいなくなれば速歩を勝手にやめられ、次の速歩の指示はやはり聞いてもらえなかった。

馬は賢い生き物だから、相手を選ぶとは聞いていたが、ここまであからさまに無視されたことはなかったので、軽くショックだった。
レッスンが終わった後、推しの馬にいつも会いに行っているのだが、顔面に鼻水を飛ばされて更に凹んだ。

先日仲間入りした、前髪がKPOPアイドルみたいな馬

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