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映画『ムーンライト・シャドウ』感想

映画『ムーンライト・シャドウ』を観ました。以下、結末までのネタバレを含みます。ご注意ください。




あらすじ
失くした鈴を探すさつきと、それを拾った等が出会い、恋に落ちる。等の弟である柊と、その恋人のゆみこを含む、四人で楽しい時間を過ごしていく。しかし、ある日突然、等とゆみこは交通事故で亡くなってしまう。悲しみで食欲を無くし、一心不乱に走るさつきと、ゆみこの制服を着ることで彼女の死に向き合おうと努力する柊。二人は、満月の夜の終わりに死者と会うことができるという月影現象に興味を持つ。不思議な女性・麗に導かれ、二人は満月の夜に河原に行く。柊はゆみことダンスを踊り、さつきは鈴の音を聴く。さつきは生きる気力を取り戻し、気づけば麗は消えていた。

昔、吉本ばななの原作を読んだはずなので、観ているうちに筋を思い出すかと思ったのですが、こんなの読んだかな〜?と最後まで思い出せませんでした。他の人の感想を見ると、結構原作と異なるところが多いらしいので、また原作も読んでみたいなと思いました。

それでも、ああ吉本ばななってこんな感じだったなあと、しみじみと思い出せる映画でした。生と死が両方あるというか、死の近さ、生者と死者との世界の隔てが曖昧な感覚。それなのに、やはり断絶している感覚。

もし自分が、大切な人を失ったらどうなってしまうだろうか、どのようにこの世界の無情な法則に折り合いをつけていくのだろうか、とつい考えてしまいます。どれだけ現代社会が進化し、そこに住まう人間も進歩しているように見えても、このような極めて単純な悲しみに対して出来ることは、なにも変わっていない。それどころか、退化しているかもしれません。昔の人間の方が、死は身近です。

この悲しみへの対応には、やはり儀式が必要なのかなと思います。それは、葬式をすればいいというものではありません。自分の納得のいく形で、心の底から死を理解できる形で、死と向き合う儀式をしなければなりません。それが、この作品では月影現象なのだと思います。ゆみこと柊のダンスのシーンは、理屈抜きで美しく、ゆみことの心の近さ、そして物理的な遠さ、隔たりを同時に感じさせるものでした。月影現象を経て、前を向いたさつきからは、人間の強さを感じさせられます。


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