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共同富裕とその実現

共同富裕という考え方

共同富裕という考え方は、全ての人が同じ量の富を持つという均等富裕の考えではなく、個人が持つ権利を最大限保障し、それを享受できることである。

この考え方は、二つのメカニズムによって保障されている。一つ目は、機会平等という過程公正。二つ目は、労働によって応じる配分する、生産要素に応じて配分するという結果公正というメカニズムによって保障される。

社会主義と資本主義では、ともに富に差が存在することを認めている。しかし、その差の許容度に違いがある。鄧小平によると、社会主義の本質は、生産力を解放することであり、生産力を発展させることである。搾取を撲滅し、貧富の両極化を排除することで共同富裕というゴールが達成される。そのために、中国では、農民への搾取を撲滅し、絶対貧困の撲滅を第一優先に掲げ、成し遂げている。西洋では、同じく絶対貧困を許容しない。具体的には、社会保障を通じて、最低限な生活保障と社会保障を行っているが、それは基本的な生活水準しか満たせず、私有制による搾取と貧富の両極化の諸問題を解決できない。
(人民日報より抜粋)


ジニ係数

ジニ係数は、不平等を示す指標の一つである。0から1の範囲をとり、1に近づければ近づけるほど格差が大きいとされている。
0.4~0.5の間を取れば、所得格差は大きいとされ、0.5を越えれば、所得格差は非常に大きいである。

現在の中国のジニ係数は0.47前後であり、Bloombergによると、ジニ係数の拡大は主に金融、テクノロジー、デジタルプラトフォームなどの産業における急速な発展によるものである。中国の平均月収が約6万円に対して、Bytedance(TikTokを運営している中国会社)では、新卒で月収40万円もらえるのも驚かないということを知れば、その格差を具体的に想像できるだろう。

その実現に向けて

現在の中国社会階層構造は、低収入、中収入、高収入というピラミッド構造になっている。その具体的な内訳は、それぞれ9億、4億、数千万という人口割合になっている。

共同富裕の考え方は、①中収入に当たるグループを拡大し、②高収入に対して課税強化という考え方である。

政府の考えによると、2035年までに中収入のグループを2倍にして8億にまで拡大しようとしようとする。そうなると、社会階層構造は、ピラミッド型からつぼ型に変わっていく。

①中収入層拡大を実現するために、いくつかのやり方がある。

一つ目は、市場分配である。いわゆる、労働に応じた分配であり、働い分だけ給料をもらうなどが当てはまる。
二つ目は、税・社会保障や財政支出によって1次分配の偏りを是正する分配である。
三つ目は、寄付や慈善によって富裕層の富を移転する分配である。

市場分配は難しいと思われる。なぜなら、現在、大衆は富裕層と同じ条件下では競争に勝てないから。そのために、機会平等を作り出すために、市場独占しているアリババなどに規制をかけ、市場独占を防止して、多くのベンチャー企業が成長できる環境を整備したり、教育負担、住宅負担などを軽減するために、教育業界、不動産業界に対して改革を実施している。

税収については、現在、一部の都市などで不動産税の導入実験を行っている。

富裕層から強制的に富を取り上げることは想像しにくいが、実際には、テンセントが1000億元(約1兆8000億円)の資金を拠出して、基礎科学、教育改革、カーボンニュートラル、介護産業の技術開発、公共セクターのデジタル化、低所得者の所得向上、医療支援の改善支援、農村部の経済効率化の促進などに使われる。

②高収入層は、さまざまな手段を使って、合法的な節税を行っている。そのために、脱税がよく見られる芸能界では取り締まりが強化されている。

共同富裕の抽象的な概念から始まり、その具体的な政府の行動を書きました。この記事を通して、共同富裕という中国政府が掲げる方向性、現在中国で行われている改革などを少し理解できるのではないだろう。



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