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「もお、2どとわ」制作後記

はじめに

 ボカコレ2023夏、楽しませていただきました!ちょうど夏季休暇も取得でき、実家にも帰省しました。帰るたびに家族の不用品が積まれていく自室にて、のんびり参加しています。
 このnoteでは(初めて使うのでこういう使い方であっているのか不安ですが)、ボカコレ2023夏に出させていただいた拙作「もお、2どとわ」を作った経緯や、記憶から破棄されるのを待つだけの設定などを備忘録程度にまとめておこうと思います。まだ見てなかったらとりあえず見てみてください!

 尚、ボカコレに対する私の参加姿勢等も書き散らしてまいります。あくまで主語は「私」で、誰かの主義志向や言動を変えようというつもりは毛頭ございません。ご承知おきください。

ボカコレに寄せて

 前回の2023春は、躍起になって自薦リプを見境なく飛ばした挙句、期間中にレベルMAXのシャドウバンを食らいました。レベルMAXのバンは「ゴーストバン」というそうで、誰からもアカウントの存在を認識してもらえないデバフがかかります。その結果、折角皆様が入れて下さった「ボカコレリスト」からも名前が消え、事前の宣伝活動の一切が水泡に帰しました。死人に口なしとはまさにこのことで、「シャドウバンされました」とツイートしても当たり前ながら何の反応もなく、意気消沈のまま2023春のボカコレを終えたのを覚えています。

 愚者の末路とはまさにこのこと…というわけで、今回のボカコレ、もとい5月の「IorWeGP」からは、数字の類は端から度外視して、「自薦を一切行わない」「ツイートしすぎない」というマイルールを課しました。その上で純粋に参加者の皆様の才や能に浸り、あわよくば次の制作のヒントの一つや二つ拾ってこようと考え、実施しました。
 それが功を奏してか、今回の2023夏は、私の中では存分に楽しむことができたのではないかと思います。
 期間中、うれしいことに何十件もの感想をいただき、人知れず舞い上がっておりました。この場を借りて御礼申し上げます。ありがとうございました!
 ところがシャドウバンにビビり散らかすあまり、返信のペースが大変スローになっておりました。この場を借りてお詫び申し上げます。申し訳ございません!

今回のボカコレで出逢ったこの曲が、上記の想いと合わせて共感できました。修行の果てに悟った答えが「俗人は所詮俗人」だったとしても、それを肯定してこそ意味が生まれるのではないでしょうか!

映像制作の全体像

前日譚

 先述した5月の「I or We GRAND PRIX(IorWeGP)」。『1人で曲・絵・動画全てを担当した曲(ぼっち陣営)』または『必ず2人以上で作曲した曲(合作陣営)』で競い合うイベントでした。その中で、プチヒコさんの「壊れた世界で君と二人きり」という作品に出逢いました。ディストピアを飄々と旅する主人公と相棒の猫ちゃんのロードムービーで、構築された世界観も、ストーリーの構成も、うら寂しさを笑顔とギャグで乗り切るメロディも、何もかも私の心に刺さるものでした。まあ、見てください!

 見るにつけて、「次回作はこんなの作ってみたい!」という意欲が沸々と鎌首をもたげてきました。「荒廃した世界観」「そこに生きる二人」「力強く、楽しく生きる」、この辺の要素を自分流に表現できないか?と考えて構想を練り始めました。

使用ソフトと制作マイルール

 私は映像制作の際に3DCGソフト「Blender」を使用してそれぞれのカットを作り、動画編集ソフト「AVIutl」を使って調整・結合をしています。Blenderはオープンソフトで、巷の作曲ソフト同様とんでもない量の機能とプラグインがあります(例えば「表面を金属プレート風に加工するプラグイン」とか「配管を好きな形に生成するプラグイン」とか。先達の弛まぬ開発に感謝!)。昨日の多さゆえに、私も恐らくこのソフトが持つポテンシャルの50%も使えていません。
 制作にあたっては一つのこだわりを持っており、「3Dモデルは小物一つでも『自作』する!」と決めています。完成した時に「視界に映るもの全てが『メイドイン自分』だ」と悦に浸る為でもあり、何より作ることそのものが楽しいからですかね。
 ともあれ、1作品作るのに数か月、数百時間を投資するという阿呆みたいなことをしています。

都市計画

 これまで、私はまだ「街」を作ったことがありません。まずはたくさんのビルを必要とすることを考えて、ビルの作り方を調べたり、交差点周辺の建物の特徴を調べたりしながら、大きな交差点を中心にした都市を作り始めました。

 ↑のツイートで「5分で作れる」とかほざいていますが、結局はマイクラの「豆腐ハウス」みたいなビル群では、遠景には耐えても近景ではチープになってしまい、一つひとつオリジナルなビルを作らざるを得ませんでした。
 PCのメモリが持たない!そしてそもそも街を作るのに時間をかけすぎ!ということで、数棟の個性的なビルを交差点に配置し、遠景はとうふビルをコピーし、縦横比や向きを変えてバリエーションを増やすことにしました。いかがでしたでしょう、多少それっぽく見えておりましたか?

都市全体図

 建物の基礎構造のみ作るだけでは、なんだか味気ないことに気づき、街が「街らしく」なるためには、こまごました構造物と「看板」が不可欠だと気付きました。小物って大事ですね!
 今回、街は「クラゲ街」と名付けました。本当は!空にフワフワとクラゲが漂う街のアイデアがありましたが、マシンの性能不足と時間的制約により、それは断念しました。結果、クラゲのアイデアだけが残り、「くらげ」「海月」「Jellyfish」など、クラゲの漢字表記や英語表記の看板が居並ぶ街になりました。

看板に注目

キャラクターの設定

 本作に登場するキャラクターはどんなイメージが良いか。前作「COMET BOY」では孤独な主人公を描いたので、今回は「二人」にしようと決めていました。「相棒」だとプチヒコさんの作品と被りすぎてしまうし、さりとて「カップル」とかいうおぞましい真似はできません。思案の末、子供と保護者という関係性を考えました。そして多分「肉親」だと感傷的になりすぎてしまう気がして、人ではない保護者というキャラクターにしようと考えました。
 さらに、「朽ちた世界を強く生きる」というテーマがあった為、物語の過程で子供が自立していくような展開があればいいな、と。

天空の城ラピュタ ジブリ公式サイトより

 「子供と人ではない保護者」が登場する作品は、既に世の中に数多くあります。本作では、ラピュタと、↓のスキマスイッチのMVがもっとも影響されている気がします。特にこのスキマスイッチのMVは、2010年ごろにカラオケで見て以来、ずっと記憶に残っています。「今見たら絶対引っ張られる!」と思い、淡い記憶のまま留めておきました。ところが本作を作り終わったあとで改めて見ると、思ったよりも引っ張られていますね!傘持ってるし!

 また、作中には犬ロボットが登場します。ストーリーに起承転結を与えたり、ミスリードを誘う役割として登場してもらいましたが、完成したら主人公二人よりも出番が多くなってしまいました。

キャラクターデザイン

主人公

 生き物系のモデルはBlenderの「スカルプトモード」という、実際の彫刻と同じような手法でモデルを作り、ポリゴンを簡潔にする「リトポロジ」という清書のような作業を経て完成させています。
 毎回作るにつけ感じるのは、人間の頭の造形の難しさです!理想は「どこから見ても美しい」なのに、必ず「イマイチ」な角度ができてしまいます。これは次回作、というか永遠の課題になりそうです。今回は、取り急ぎ奇麗に映るライティング(光の当て方)と綺麗に映る角度を鏡の前で決めポーズを模索する中高生の如く探し、それらをかき集めて採用カットにしていきました。

 顔には、クマや唇など、色素が変化している部分があります。私の目のクマフェチについての冗舌は本稿では割愛しますが、とにかくその微妙な変化をテクスチャとして書き入れていきました。セルルック(アニメ風に光と影の境界がはっきりしている)の影は、今回の肌の表現ではほとんど鳴りを潜め、ちょっと柔和な感じが出せたのではないでしょうか。

サムネイル別角度。後ろに埃くずのように見えるのはカメラの試行錯誤の跡。

祖父ロボット

 祖父ロボットのデザインは、「何を考えているかわからない超然とした感じ」+「異質・いびつなデザイン」という難しい要求をしました(自分に)。1週間たってもロクなアイデアが生まれず、散々迷った挙句に、隣町にある「万治(まんじ)の石仏」という仏像をほぼ丸パクリすることに決めました。

万治の石仏(まんじのせきぶつ)は、長野県諏訪郡下諏訪町東山田字石仏にある、江戸時代前期の1660年(万治3年)に造られた石仏。所有者は下諏訪町で、同町の指定有形文化財に指定されている(昭和57年(1982年)3月26日指定)[1]。砥川を挟み、諏訪大社下社春宮の対岸に位置する。所在地の小地名「石仏」も同石仏に由来する。1970年代に芸術家の岡本太郎が紹介したことで日本全国に広く知られるようになった[2]。

https://ja.wikipedia.org/wiki/万治の石仏
万治の石仏 Wikipediaより

万治の石仏は自然石にレリーフのように彫られた身体に仏頭をつけた特異な姿をしています。ここに手足や武器を装着すれば(不謹慎極まりない)、さらに特異なデザインになるのではなかろうかと思い、今の形に仕上がりました。実際、目立つ配色になっているわけでもないのに、かなり存在感があるのではないでしょうか?

祖父ロボット アンバランスさを意識しました

犬型ロボット

 犬型ロボットといえば、30代以上はSONYの「AIBO」、若い世代はボストン社の「BigDog」でしょうか(ってBigDogも初代は2005年なの!?)。私は年相応に前者を思い浮かべ、ブラウン管みたいな頭のモニタで意思疎通をこなすこのキャラが出来上がりました。如何せん作品の仕様がMVなものですから、セリフをしゃべれない主人公2人に代わって物語の状況を説明してもらう、重要な役どころを演じてもらいました。

聴診器様のパーツが伸びて祖父ロボットを診断する、というアイデアもありました。しかし「首も伸びるから頭が聴診器替わりでいいか!」と思い直し、現在に至りました。

 主人公に字幕で説明しているカットがありますが、漢字のおかげで6歳の少年には半分も伝わってなかったと思います。文は読めないなりに前後の文から類推していくことで生活語彙は習得されていきます。がんばれ少年!

撮影

撮影のタイミングと構図

 舞台とキャラクターができました。ここまでできたのはドラマで言えばロケハンとキャスティングだけ!ここから一つ一つのシーン、カットを撮影していきます。1カット目を撮り始めた時点で7月15日、果たして間に合うのか!?
 3DCGアニメと手書きアニメの決定的な違いは、「構図」を決めるタイミングだと思います。手書きアニメは最初の時点で構図を決める必要があるのに対し、3DCGは3D空間に架空のカメラを持ち込んで撮影していくので、ほとんど制作の最終段階で構図を決めます(少なくとも私の場合は!)。映像に対する知見があるわけではない私は、とりあえず「カメラが動くカットと動かないカット」と「全景ショットと個別のショット」が偏りすぎないように気をつけつつ、構図を決めだしていきました。

ライティング

 映画やドラマを見ていて「あっ、めっちゃCGっぽい!」と思った経験はないでしょうか。煙や炎、水といった流体がチープ、テクスチャが合っていない等、原因はたぶん色々あります。そして今回私が大切にしたのは「ライティング(光源の位置や量・方向)」でした。現実世界には反射光も含めてとんでもない量の光源が存在しており、それをCGで真似しようとするとかなり微妙な調整とすさまじいマシンパワーを要求されます。なおかつ、最終的にはキャラや画面を「美しく」見せなくてはなりません。
 ……ちょっと長くなりそうな予感がするのでいろいろ割愛しますが、空間全体に当たる太陽光、キャラクターに影をつけるための間接照明など、いくつかの光源を設置して画面作りを行っていきました。特に少年は頭を挟み込むように常に2つのライトが配置してあり、顔に柔和な影が落ちるように調節されています。
 結構自信があった部分だったのですが、今回のボカコレにてとある作品に出逢ってしまい(また後述します)、まだまだ修行が足りんと思わされた次第です……

顔の右上と左下に照明が設置されている。ちょっと反射光が露骨ですかね。

 ライティングに関してもう一つ、「ブルーム」という効果を多用しました。ブルームとは、画面の中に光源があるとき、下の画像のように光が暗い部分にも滲み出してくる現象で、Blenderでは意図的に発生させることができます。作中の祖父ロボットのカットや下のスカイランタンのカットでずいぶん活躍しました。

ブルーム。光が画面全体にじわっと滲んでいます。

ボリュームとF値

 さて、今回作った街は、例えば電柱や街路樹など、本来あるべきオブジェクトが絶対的に不足している自覚がありました。どれだけライティングをいじっても、そのまま撮ると確実に味気なく、CGらしさが悪い意味で表出した映像になってしまいます。
 そこで活躍するのがボリュームとF値の概念でした。「ボリューム」とは、現実世界の「霧」や「空気」に相当するもので、空気遠近法のごとく「遠くのものほど霞んで見える」効果が出ます。これをめちゃめちゃ強めにかけ、遠くの景色をあえて見づらくした映像にしました。

ボリュームを適用した街。遠くのビルが灰色に霞む。

 F値(被写界深度)は、いわゆるピンボケにかかわる数値です。低い(浅い)ほどボケが大きくなります。本物のカメラもレンズの種類によってさまざまなF値が設定されており、カメラに魅せられた民衆は何桁もの資金を投入しています。
 幸い、3DCGはどんなレンズも思いのままに設定できるので、多くのカットでF値低め、つまりボケが多い状態を作り出し、チープさを誤魔化しました。

ピントが左の犬のみにあっている。

曲について

 最初に言っておきます!私は何の楽器も弾けず、「映像を自作するなら、せっかくだから音楽も自分で作りたいよね」というしょうもない動機でボカロPになりました。そのことを理解していただいた上で、この後の内容の薄い項をお読みいただければと思います。

作曲

 私の作曲活動はメロディを作るところから始まります。大抵通勤時にいくつかのメロディを思いつくままに口ずさみますが、10に9つはつまらないもので、ものの数分で忘れてしまいます。そして、職場or自宅についてもまだメロディを覚えていたら、「ちょっと見込みあり」として、iPhoneのボイスレコーダーに鼻歌を吹き込んでおきます。
 データを何日か寝かせ、程よく熟成した頃にもう一度聞いてみて、(大抵は「ナニコレ?」と即削除してしまいますが)いけそうなものを採用しています。今回のメロディはなかなか難産で、何十通りか没にして生まれてきました。
 この曲は、イントロ、Bメロ、間奏、アウトロで同じメロディが繰り返し登場します。この部分は「天使(?)が歌うキャッチーで覚えやすい聖歌」というイメージが先にあり、ある日のお昼休みに思いついたメロディに、コーラスを見様見真似でくっつけてみています。…それっぽくなっていますかね?

作詞

「本とわ、しってた。もお、2どとわ、あえないこと。それでも。」
『瓦礫の下で魔物が騒ぐ、世知辛くなった世界に君を遺して逝くことを心苦しく思う。』
“此岸を見つめて憂う老人よ、要らぬ斟酌だ。坐して待ち侘びよ。”
「ヘンテコな町わ、オバケだらけ。こわいけれど、ワクワクも、いっぱいあって、さびしいのわ、ほんのちょっとだけさ。」
“鉄も饐え朽ちた時代の童よ、砂上の楼閣で罷り生きてみよ。”
『今更になり、彼も是もと伝えそびれた言葉が引きも切らず浮かぶ所為でやり切れなく思う。』
“爛れた大地に芽吹く人の子よ、出来損なう程生きて飽かぬのだ。”
「ちゃんとわかってた。もう、二どとはあえないこと。ユラユラとのぼる火にねがいこめて、お星さまにとどけ!」
“森羅万象よ、千尋の野を踏め。一縷の縁よ、千代の羅紗を編め。”
“千姿万態に常盤の幸あれ。一途な想いよ、天地を穿て”
『今はただ、人知れず草葉の陰で限りない幸せを祈ろう。そして、私より皺が増え、思い遺しも無くしたら、この場所でまた逢おう。』

「もお、2どとわ」歌詞

 この曲は、物語に登場する「孫」と「祖父」、そして「天使(?)」の独白によって展開していきます。孫は「絵日記」、祖父は「遺書」、天使は「福音」というイメージで書きました。

孫の絵日記

 絵日記パートは、誤字だらけ、句読点だらけの文章です。少年は6歳の少年。小学校1年時相当の漢字力、語彙力しか持っていません(むろんこの世界に学校はありません。滅びました。祖父ロボットが勉強を教えてくれています。残念ながら尺に収まらずカットしました)。
 亡き祖父の杞憂を他所に、したたかに、楽しく生きる彼を想って書いてみました。
 日記なのは理由があり、実は後述の「祖父のノート」と対比する形で「孫の絵日記」シーンを考えていました。

「ちゃんとおぼえてる。キラキラしたはっぱ色も、ゴワゴワのおっきな手も、いつも、いっつも、むねの中に、いるよ。」

1サビ初期案

 絵日記シーンを採用した場合、上の歌詞にする予定でした。
 「何も遺せなかったと嘆く祖父と、生前の祖父との思い出をちゃんと持っている孫」という構図を作ろうと考え、
①「きらきらしたはっぱ色」と「ゴワゴワのおっきな手」が描かれた絵日記のカット
そして
②充電切れで休止状態の祖父ロボットのモニタに一瞬映る「孫と歩いた風景」のカット
を想定していました。このあたりは私自身の祖父との思い出を起点に考えたので、構想している時点で胸に迫るものがありました。が!時の流れとは残酷なもので、そういうカットを作る余裕もなく、また、これを挟むと物語がごちゃごちゃしすぎてしまうことから断念しました。

本編より。字幕に注目!

 ただし、「日記」という構想はわずかに映像に残すことができました。歌詞の中で、1回目のサビは「もお、2どとわ、あえないこと。」、これが2回目になると「もう、二どとはあえないこと。」と、仮名遣いが直っています。歌詞の字幕をよくよく見ると、上記のように元々間違っていた部分が消しゴムで消され、書き換えられているのがわかるでしょうか。祖父ロボットに教えてもらい、ちょっと成長した彼、という風に捉えていただければ幸いです!

祖父の遺書

祖父のノート

 この遺書は、本編冒頭で数秒流れます(私が頑張って書いたものです)。汚い字を我慢して読んでいくと、本編の歌詞が所々に登場してきます。祖父の歌詞パートは、このノートからの抜粋という形を取りました。
 科学者で、普段あんまり人と接することもなく、ストイックで、堅い文章ばかり書いている……そんな人物をイメージしました。
 両親に死に別れ、天涯孤独の主人公(孫)を引き取り、当時妻に全て任せていた子育てに今更奮闘するものの、志半ばで病に倒れる。そんな背景を設定しました。彼は病を得た瞬間から、科学者らしい冷徹さでこの子の行く末を案じ、自分の記憶をロボットに移し替えて彼を守る選択をしました。……が、出来上がったのはなんともポンコツで不器用なロボット。それでも少年はロボットに懐き、楽しい毎日を送る。そんな風にMVはスタートします。

冒頭のカットは今は亡き祖父の書斎です。

天使(?)の福音

 (?)をつけたのは、このパートの詞が、天使に限らず様々な神話や宗教を混ぜこぜにした、兎にも角にも「人知を超えた存在」という位置づけにしたからです。映像にも一切出てきません。
 全体的には教会で流れるような聖歌のイメージで作りましたが、「此岸」は仏教用語です。さらに「鉄も饐え朽ちた時代」はギリシャ神話が定義する5時代(黄金・銀・青銅・英雄・鉄)から更に一歩踏み外した滅びの時代のイメージで作った造語で、「千姿万態に常盤の幸あれ」あたりは神道やアニミズムを意識しています。敬虔な方々からは怒られそうですね。
 彼(?)の主張は、要約すれば「まあ、大丈夫!何とかなるから!」と、一休さんみたいなこと言ってひたすら2人を応援・祝福するものです。意地悪く言えば、2人の日常に対して頼んでもいないのにいちいち偉そうなリプを飛ばしてくる存在です。
 人智を超えた者たちの階級でいえばおそらく相当下でしょう。奇跡も起こせず、運命も変えられず、ひたすらエールを送り続ける。ま、カミサマなんてみんなそんなもんでいいんじゃないでしょうか。孫も祖父も奇跡なんて端からアテにしていないでしょうし。

調声

 今回は(今回も)CeVIO AIの知声さんを使っています。ぶっちゃけ、前作までは完璧なるベタ打ちで、一切の調声を行わずにいました。しかし、先達の凄まじい作品群に触れ、今回はピッチの部分は全て手書きしてみました。とはいえ、やり方もまるでわかりません。通勤時に口ずさみながら、「自分で歌うならちょっとこの辺音程フラつくだろうなぁ~」という癖を、少しずつ書き足していったイメージです。この世界は何が正解なんだろう……

編曲

編曲は!全く!知識も!技術も!ありません!
ので書くこともありません!ソフトはCubase、声は知声ちゃん、まとめはOzone10さんにお願いしています。
今後自分の制作で誰かに何かをお願いするとしたらここだろうなぁ~

編集

 さて、便宜上分けて書いてありますが、実際は映像と音楽を同時並行で制作しています。どちらが時間がかかるかと言われれば、おそらく映像が90%近くの時間を食っていると思います。アニメは大変なんだ…
 編集ソフトは先述の通り「AVIutl」というフリーソフトを使用しています。私の制作の性質上、この時点で既に動画の各カットはほぼほぼ完成された状態になっています。ここで行うのは曲・字幕・映像を合体させることと、簡単な色味調整だけです。今回はレンズの周辺減光とフィルムのノイズの効果だけ付け足しました。

レンズの周辺減光とフィルムのノイズ。

 そのくらいかな?

まとめ・今後の見通し

 長々と書いてまいりました。ここまで読んでくださった方、脈絡のない駄文にお付き合いいただき、マジでありがとうございます!
 上に書いたように、「もっとああしたかった、こうしたかった」という表現もありました。
 昔、新海誠監督が何かのパンフレットで「制作とは表現の可能性を殺していくことだ」みたいなことを言っていた気がします(気のせいだったらごめんなさい)。無限の可能性を秘めた「アイデア」を、制作を通して「形」にしていく上で、様々な事情からあきらめざるを得ないことがたくさんあり、きっとそれは何を作るにしても避けて通れないものなのでしょう。しかし、作中の言葉を借りれば、『出来損なう程生きて飽かぬ』のです。これからも作るぞ!

 観ている方が、コメントでキャラクターと一緒になって焦ったり、喜んだりしてくれていたことが、本当に嬉しかったです。ニコニコ動画の良さだなぁ、と思うと同時に、こうしたコメントをいただいて、99%だった作品が100%になった気がします。本当にありがとうございました。

次に作りたいもの!

純粋に参加者の皆様の才や能に浸り、あわよくば次の制作のヒントの一つや二つ拾ってこようと考え、

さっき書いた私の文章

 果たしてその目論見はまんまと成功し、今後の指標となる作品を二つ見つけてきました!

一つ目はこちらで、螟上?邨ゅo繧 さんの「days re days」です。

 作者が異界の住人であることは見当がついていますが、「一体どうやったら作れるんだ!?」と、興奮しっぱなしでした。

 さらには、キャラクターデザインもあげていただき、危うく私自身がこの世界から抜け出せなくところでした。届かずともこんな世界観を作ってみたい!!

そして、もう一作は、はこさんの「百葉箱」です。

 おそらく3DCGを駆使されていると思うのですが、アイデアといい、構図といい、そして何よりテクスチャとライティングの面において、私がボリュームとF値で誤魔化したところを真っ向からねじ伏せ、かつとんでもなく美しく、使いこなされているな…と感じました。

 以上を踏まえて、次回作は「螟上?邨ゅo繧 さんの作るような世界観を!」「はこさんのような技術を使って表現する!」という目標を立てました。

 今度もまた、楽しんで作りたいと思います!それでは!


付録・設定資料集

泥土 理真(なづみと りま)←でいどりま…Daydreamer
男。身長110cmくらい。
 0歳で世界が饐え朽ち、その際に両親が他界。クラゲ街にて祖父に育てられる。祖父亡き後は「祖父ロボット」と共に生き、教育を受ける。
 のんびり屋で、発想力が豊か。漢字が苦手。たまに分かってないのに「わかった!」って言っちゃう。

靴を履いていません。私が靴を作り忘れました。バカめ。

祖父ロボット。名称なし。
搭載AIは「O.G.CHAN SYSTEM(O.G.C.S)」
体高3.01m、奥行4.0m
 死期を悟った理真の祖父が設計し、自身の脳にある記憶を組み込んだ(実際に組み込めたのはほんの一部)。傘と椅子は理真が勝手に瓦礫の中から持ってきてくっつけた。傘はのちにソーラーパネルが取り付けられ、動力源となった。以降椅子に座る際は感電に注意(理真曰く「ピリピリする」)。
 背中にはブローニングM2重機関銃の改造機が据え付けられている。祖父が開発した「きびだんご弾(後述)」や劣化ウラン弾を発射可能。
 実は内部が居住空間になっており、キャンピングカーのように暮らすことができる。残念ながら乗り心地は悪い(「慣れるしかないよ」とのこと)。
 祖父の記憶AIとは別に、義務教育+サバイバルや戦闘に関しての学習ソフトがインストールされており、内部備え付けのモニターで学習ができる。

中が中空、機関部は尾部にあるので、重心は思ったよりも後ろにあります

「黍団子式改竄算譜(memory tampering system”KIBIDANGO”)」
 祖父ロボットの兵装。一種のコンピュータ・ウィルス。実は祖父が開発者。着弾すると即座に対象をハッキングし、否応なく「味方につける」。無人機による代理戦争の戦局を一変させたヤバい代物。
 紐付けられた「主人」が停止すると失活するのが弱点。

祖父は科学者であり、兵器開発者でもあったようです。

祖父ロボットによる敵対勢力迎撃システム(O.G.CHAN Interception System)以下画面の日本語訳。

標的は3匹の浮浪『AIBO』と推定され、Cクラスの戦力と判定する。
現段階では敵味方の識別不能。
第一措置として、KIBIDANGOシステムを起動し、標的のハッキングを試みる。
第一措置が失敗した場合、第二措置へ移行する。
第二措置は劣化ウラン弾による破壊措置とする。
第三措置は第一、第二措置の判定を待って待機状態。

赤い画面はターミネーターが元ネタ!

多目的犬型ロボット「AIBO Mk-Ⅷ」
頭胴長62.9㎝
 
汎用性が高く、愛玩、防犯、介護、果ては軍事に至るまで用途は多岐に渡る。AIは初期設定で性格が付与できる。安価かつ改造が容易なのが災いし、一部が野良化した。
 頭部はモニタになっており、感情表現のほか筆談もできる。
 作中に登場した3匹は、実は祖父の元所有物。KIBIDANGOを使うまでもなく(祖父ロボットは自動迎撃システムを搭載しているため、近づくものは例外なく無力化を試みる)、最初から理真の味方であった。
 理真からは桃太郎にちなんで「犬くん」「キジりん」「サル」と名付けられている模様。サルを拝命した個体のみちょっと不満気味。筆談でコミュニケーションをとれるのはいいが、理真が漢字が苦手なのが最近の悩み。

首が伸びます。結構便利。

スカイランタン「弔」
 一時期お盆で流行ったアイテム。復活した祖父ロボットが作り方を教えてくれた。飛ばすときにプロペラに触らないように注意。
 無人のはずの街いっぱいに浮かんでいたのは…なぜなんでしょうね?

見た目より軽いです。下手すりゃ成層圏まで昇っていきます。

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