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万歳!たこ焼きの多様性

昔は誰にでも開業できたたこ焼き屋

私は食べ物ナショナリストではないので、ラーメンや餃子、お好み焼きの本家、本場などについては、あまり意識しない。だから、どこであれ目の前にあるものを食べておいしければ私のひいきのメニューに入れておくだけのことだ。食べ物ナショナリストもいいのだけれど、あまり厳格な自分だけの味やメニューの基準を作ると、思いのままに味やレシピの多様性を味わうことができなくなる。
私はたこ焼きが好きなのだが、たこ焼きといってもかなり多様で、私の成長に合わせて、裏通りの小学校の通学路にあるおばあちゃんのたこ焼き屋から、中学生、高校生時代のお好み焼きとたこ焼きが同時に食べられる店、大人になってからの繁華街の横道を入ったとところにある屋台の店、あるいは近年のスーパーなどでのフードコートの店などがある。それぞれ具材というか、たこ焼きに入っているものが少し違う。

タコに換えてチーズやハムの入ったお好み焼きも

私が子供時代を過ごした南大阪の屋台のたこ焼き屋のたこ焼きは、天かす、小さな賽の目に切ったこんにゃく、紅ショウガ、ネギに肝心のタコ、それにかつお節、青のりが一般的だった。私が小学生だった頃は、六個~七個で10円だったが、一番安い店では、八個10円というところがあった。七個の店と八個の店は私鉄で二駅離れていたが、その一個のために私たちはこの二駅間を歩いた経験があった。たこ焼きの値段は、私が中学生になったころから若干高くなりはじめ、その過渡期のことはあまり覚えてないが、高校生の時は1パック100円が普通だったような気がする。1パックの中に入っているたこ焼きの数だけではなく、具材にも多様性が出てきて、タコに変えてハムやチーズ、イカやサクラエビのところもあった。変わったところでは、魚肉ソーセージのがタコの代わりに入っていたこともあった。実際のところ、たこ焼きは最小限のお小遣いで買えるものだったので、小学校、中学校への通学路には必ずたこ焼き屋があったので、その数だけバリエーションがあった。私が馴染んだたこ焼きではないが、こうした多様なお好み焼きも私にとっては一種の楽しみだった。

たこ焼きは❝安さが❞身上

それと話は少し違うのだが、たこ焼きが海外に出始めたころ、海外ではカツオ、醬油ベースの味ではなく、ホットケーキ味のお好み焼きが流行っていた。中国、北京の王府井(ワンフーチン)にあったお好みやの店では、やはりこのパターンだった。これは私のお好み焼きのし好の範囲を超えているのでほとんど食べたことはなかったが、最近では海外でもカツオ、醤油ベースが多くなっているので、これはこれで味覚の常道に戻ったような気がする。ところが最近では外食のチェーン店展開などが進んでいて、お好み焼きの多様性を愛する私としては、それもまた受け入れたいと思うのだが、価格については一言いっておきたい。最近全国的に有力なラーメンチェーンの廃業が話題になっている。それを報じるニュースでチェーンを展開している経営者は、業界の流れで高価格の原料を使っているのでラーメンの製造コストが高騰し、消費者が払える価格との差がなくなってきたので、仕方なく廃業することにしたとのことだった。
たこ焼きがラーメンと同じとは言わないが、たこ焼きのコンセプトの一つは子供自身のお小遣いで買える安さだと思う。外食チェーンのたこ焼き屋では、1パック(六個)で600円あたりが相場だが、時代も経済も変わるので、場合によっては1パック1000、2000円もするたこ焼きが出てくるかもしれないが、それはやはり邪道というものだと思う。食べ物そのものに上下、貴賤はないが、食べ物ごとには必ず果たすべき役割があると思う。やはりたこ焼きは、学校帰りの小学生が、手のひらに一枚のコインを握りしめて、自分の判断で買えるものでなければならいと思うのだ。


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