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カメムシがこわい

都市に住むものを臭いで脅かす昔ながらのインベーダー

今は京都のマンションの7階に住んでいるが、ほとんど全面が窓になってる部屋がいくつかある。昼間から夕方まではカーテンを開けておけば、シーリングライトが必要ないくらい明るく過ごせる。部屋に住み始めた時は、何よりそれが嬉しかった。ところが夜になると、当然ライトを点けなくてはならない。住んでいる私たちにすれば、そのままで問題ないのだが、夜間に私たちのマンションの部屋を下から眺めれば、そこだけ煌々とした灯りが窓から漆黒の空間に放射されていて、やたら目立った存在となっている。
ただ、私たちが住んでいるマンションの部屋には大きなバルコニーが付いていて、初夏から秋については、部屋からの光がバルコニーを適当に明るくしてくれて、バルコニーを快適に過ごせる一つの生活空間にしてくれていた。

カメムシが農業の大敵であることを知らなかった

ところが4月ころから夜間にカーテンを引かずに生活していると、壁面の多くの部分が全面ガラスになっている窓一面に、1センチ弱の虫がびっくりするほどたくさん集まっていた。カメムシによって何らかの被害を受けている農業に従事している方ならよく知っていることだが、常識的にカメムシの存在は知っていても、その実害に遭ったことのない無防備な人にとっては、「青天の霹靂」という言葉がぴったりなほど驚くべき異変だった。
何がショックといえば、カメムシをつぶせば、独特の不愉快な臭気を発することは比較的知られている。だから一般的の人は、カメムシを刺激せず、間違ってもつぶすようなことをしなければ、何とか共存できると思っているのだ。というのも、農業に従事する人はカメムシが栽培している農作物を食い荒らすことも知っているし、寒くなれば家の天井裏などで大集団となって冬ごもりすることもよく知っている。しかし私たちは、臭いのことはある程度知っているが、基本的に無害という認識なのだ。

カメムシには悪いが、それでもこわい

窓に一杯張り付いたカメムシを目にすれば、ユーチューブやインターネットでカメムシのことを調べ、意外に強敵であることを理解するのだった。しかし私たちにはカメムシを撃退するノウハウもないので、家に近づけず、ということは夜間に明るい光でカメムシを呼び寄せないということも含めて、努力するほかないのだ。しかし毎日かなり努力をしても、朝になると家の周辺にも逃げ遅れたのか、体力が衰えたのか、かなりの数のカメムシと、カメムシの亡骸を見ることになる。カメムシは農業従事者か、家の近くにカメムシの冬ごもりの場所を提供してしまいそうな人を除けば、カメムシはそれほど驚異的な害虫ではないと知っているが、それでもやはりカメムシは怖い。仕方がないので夜間は窓のカーテンをぴったりと閉め、できるだけ光を漏らさないようにすることが求められた。まったく光が漏れないように努力すると、今度は驚くほどカメムシは現れない。これで安心だと思うのだが、それでもやはりカメムシがこわい。一体カメムシは何なんだ、それとも私たちには知らされていない秘密兵器がきっとあるんだ、と私は確信している。



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