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【歳時記と落語】初天神

大阪の人間というのは、なんや神さんのことを友達みたいに言います。「えべっさん」やとか「だいぶっつぁん」やとかね。菅原道真公も「天神さん」と親しみを込めて呼んでます。

この天神さんの祭礼は、毎月25日におこなわれます。今は当然新暦でやってますが、昔はもちろん旧暦の二十五日でした。なんでも天神さんこと、菅原道真さんはお生まれになったのが6月25日、太宰府に流されなさったのが1月25日、お亡くなりになったのんが2ン月の25日やそうで、25日づくしということでこの日に祭礼を行なうようになったんやそうです。

その祭礼の中でも、一番陽気なんが七月の「天神祭」ですが、もう一つ、年の初めの祭礼が「初天神」と呼ばれて、ちょっと特別扱いになってます。

2021年は3月8日が旧暦の1月25日にあたります。

落語には、そのまま「初天神」という噺がございます。江戸落語でもやりますが元々上方ダネで、大阪東京の両方で活躍した三代目三遊亭圓馬が東京へ移したもんです。

ここにおりました我々同様という男、羽織を引っ掛けて天神さんへお参りにでも行こうかとしますが、女房に息子を連れて行ってくれと頼まれます。不承不承つれて出ますが、ほんまは天神さんやのうてお茶屋へ行きたかったんですな。ところが、女房の方もそれは心得たもんで、息子に見張りをさせようという算段です。

まあ、落語に出てくる子どもてなもんは、大概こまっしゃくれたもんと決まってますが、この息子も相当なもんで、親父の弱みを握ってあれ買うてくれこれ買うてくれとねだります。こんな息子連れてくるんやなかったと嘆きますが、しかし、このおとっつっぁんも気楽なもんで、段々と自分が出店に夢中になる始末。みたらしを買うたら自分で蜜をみなねぶってしまいよる。仕舞いには息子に買うたイカノボリ、今でいう凧ですな、自分が揚げてしまもうて息子はそっちのけです。

「あーあ、こんなんやったら、お父ったん、連れて来なんだらよかった」


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