その歩み

GWの後半。駅のポップアップショップに紅茶の店が出ていた。見たこともない茶葉がたくさん並んでいた。
「これは何の茶葉ですか?」という店員に向けての質問に、隣に立っていた女性が答えてくれた。自分に背恰好が似ている人だった。ワンピースの色も同じ。珈琲店で働いているが、紅茶が好きだという。生活に香りがないとくるしいですよね、という会話をできてよかった。

パッションフルーツ。黄色い花を浮かべて飲む紅茶を買った。チュベローズも気になった。

飛翔という厳しい苦行!……鳥、われらと食を共にするもののなかで、存在に最も飢えているこの生きものは、己が情熱を養うべく、血の最高の熱を隠し持っている。鳥に与えられた恵み、それは燃焼すること。これは何の象徴でもない、単純な生物学的事実である。それに鳥は、物質としてはごく軽くみえるので、太陽の火に真向かうと白熱状態に達するかと思われる。海の男が真昼の匂いを嗅ぎ、驚いて顔をあげた。と、一羽の白い鷗が空中で翼をひろげ、光の中で聖体のパンさながら、白く透き通る薔薇の花となって浮いていたのである。あたかも女性がランプの炎に手をかざしたように……

夢の鎌の形をした翼、おまえは今宵、ほかの岸辺でまたわれらを見るだろう!   

「鳥」サン=ジョン・ペルス/有田忠郎 訳(書肆山田)



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?