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『元傭兵デリックの冒険』より「力鬼士(リキシ)の洞窟」(全セクション版)

1

「ファック野郎!」

スコップを振り下ろし、襲い来る力鬼士の指をぶった切る!
「ギァーーッ!」指は土に還る。力鬼士は後退し、チッチッと音を発した。仲間を喚んでいる! ボゴン! ボゴン! 床や壁から力鬼士が這い出す。囲まれた!「くそったれ……! まさか、実在するなんてな!

デリックはスコップを振り回して威嚇し、事の発端を思い出す。

「父を、助けて下さい!」デリックの店に飛び込んで来た少女は、小さな手で銀貨を差し出し、そう言った。「町の長老様や兵士さんにも頼んだんです。けど、断られました。で、ここを頼れって……」

「んん、銀貨5枚じゃ動かないか。わかったよ。可愛い子、名前は?」大きな手で頭を撫でられ、少女は泣きはらした顔を拭う。「ソフィア。父はヴァシリーです」「なにからどう助けりゃいいんだい。どこへ行ったんだい」

力鬼士の棲む洞窟に財宝があるって、噂を聞いて。昨日黙って出ていったんです」

デリックは首を傾げた。

2

表情と沈黙に促され、少女、ソフィアは続けた。

「うちは貧乏です。母は二年前の疫病で死んで……父は仕立て職人なので、二人でなんとか食べてはいけます。けれど、きっと私の将来のことを考えて……」少女は顔を手で覆い、また泣き出した。デリックは彼女を宥めながら、店の奥へ連れて行く。女房が事情を察して店番を代わる。

ソフィアが落ち着くと、デリックは尋ねた。「その噂は、どこで聞いたんだい」「酒場、だと思います。稼げる情報を探すとか言って最近入り浸りでしたし……この間、辺境で戦があって、傭兵たちが多かったとか……」「流れ者の噂か。悪意があるのか、からかってなのか。気になるな」

あごひげを撫でる。長老が動かず、俺に振る。多少込み入った事情か。「酒場に聞き込みに行く。店で待ってろ、すぐ戻る。それからお嬢ちゃんの家で情報を探して、洞窟へ向かう」「は、はい。……あの、力鬼士って」「オバケのたぐいさ。実在しない怪物だ。いるとしたら盗賊かな……」

盗賊。ソフィアはびくりと身を震わせる。父は殺されているかも知れない。それでも。「あの、報酬は、銀貨がこれだけで」「いいって、とっときな。貧しい家族が苦しんでるのに、助けないのは信義に悖る。あとで義人づらした長老とかに請求してやるさ」「あ、ありがとうございます!」

情報を集めたところ、昔の鉱山跡らしい。入口までは片道一日、しかし奥は深そう。近くに盗賊や猛獣が出るとは聞かないが、ねぐらにしていてもおかしくはない。注意はしておこう。ソフィアの世話を女房に任せ、デリックは急いで洞窟へ向かった。で……これだ。伝説の怪物、力鬼士は実在した!

『Doskoie!』『Hakkiyoie!』奇怪な声をあげて、力鬼士たちが迫り来る!姿は肥満した裸の男。体格はまるで猪か熊だ。肉体は土や石で出来ている。動きも俊敏。ぶつかられればただでは済むまい。それが複数。「ヤキが回ったな」入口近くでスコップが拾えたのは幸運だった。短剣ではダメだ。

「ファック野郎!」デリックは姿勢を低くし、張り手を避け、スコップで足を的確に狙う!「ギァッ!」指を削り、踵を削ぎ、足払いをかける。ZSIN!「AAAARGH!」転倒した力鬼士は……土に戻っていく。何回かの戦闘でそれがわかった。転ばせればいいわけだ。地面にキスさせればいい。

「だが……こりゃあ、探し人はダメそうかな」

BOGN!別の力鬼士の足首を殴って転ばせ、気配のない方へ駆ける。それほど強くはないが、数が多すぎる。伝説の怪物。一匹でも連れ帰ればカネにはなりそうだ。その前に、自分がここをどう切り抜けるか……。

「た、たすけて……」

か細い声。男の声だ。水場の奥、細い道が崩れている。そこからだ。痩せた中年男が片足を抱えて蹲っていた。つまり。「ヴァシリーさんか!?俺はデリックだ!ソフィアさんに頼まれて来た!」「は、はい!」力鬼士にかじられた様子はない。怪我をして動けなくなっていただけか。運の良い奴だ。

中年男は歓喜の涙を垂れ流す。「ほんとに、ほんとに有難うございます!おお、ソフィア!父さんが悪かった!おまえは天使だ!」「ああ、天使だな。うちの女房に預けてあるから安心しろ。報酬は長老議会に請求する。ここから俺とあんたが無事脱出できればだが……」力鬼士が来る。足は遅い。

「で、財宝は見つかったのか?」ヴァシリーを助け起こし、応急手当しながら尋ねる。彼は激しく頷き、石ころを見せた。「宝石の原石だ!こ、これを持ち帰れば……!」「命を優先しろ!娘さんが路頭に迷うぞ!」ただの石ころだ。ここは銅鉱山の跡で、宝石の鉱脈なんかない。あるわけがない。

「り、力鬼士が!」「逃げるぞ!」「は、はい!」デリックはヴァシリーを背負い、風の吹いてくる方へ向かう。あんなやつらが自然発生するわけはない。考えたくないが、誰かが喚び出したのか?都の魔術師は、そういうこともできると聞く。何のためだ?宝石を掘らせるためか?

Ton,Ton,TonTonTonTonTonTon…どこからか太鼓の音。洞窟のさらに奥だ。力鬼士たちはそれを聞いて奮い立ち、新たな力鬼士たちが召喚される。これは「寄せ太鼓」。元来は櫓の上で叩かれ、軍隊を招集するのに用いられたものであるが……。太鼓の音が止むと、地の底から響くような不気味な声。

『Higaaaashiiiiiii……Gamaabuuuraaa……Gamaaaabuuuraaaaa……!』

唄うような、異様な節回し。召喚の呪文だ。異界から力鬼士を、それも醜名(Sikona)のある力鬼士を喚び出す魔術。それを行う者も、異界より到来した力鬼士。小柄な肉体をローブに包んだ男……召喚師(Yobiidashi)である。彼が立つのは、土で築かれた巨大な祭壇。そう、土俵だ。その中央にいる。

彼の眼前、方角的には東に、じわじわと霊気が集まり形をなす。腰布を巻いて直立する、肥満した大蝦蟇のような奇怪な存在。蝦蟇膏(Gamaabura)だ。これを見た召喚師は満足気に頷き、くるりと逆を向く。そして呪文を唱える。手に扇子を持って。

『Niiiiishiiiiiiii……Iseenooeeeebiiiii……Iseeenooooeeeebiiiiii……!』

3

大柄な男が小柄な男を背負い、スコップを杖に洞窟を進む。入口は塞がれ、松明も角灯もなく、暗闇の中を歩く。ところどころに光る苔やキノコがあり、ぼんやりと道を照らしている。「くそったれ」「ああ、神よ……」

出口を求め、風の吹いてくる方へ向かったデリックとヴァシリーだが、力鬼士は次々湧いて来て、次第次第に追い詰められる。光る苔やキノコも次第に増える。「な、仲間の方とかは」「いない。俺は単独行動だ」「兵士たちは」「あんたを見捨てた」「ひどい!」ヴァシリーは歯ぎしりした。

デリックは考える。あいつらが洞窟を出て町に押し寄せないってことは、洞窟から出られない理由があるんだろう。たぶん、まだ。こんな不自然な連中が自然発生するはずはない。ほおって置けばヤバいことになる。すぐに元を絶った方がいい。元は、この奥だ。背負ったヴァシリーを下ろす。

「ヴァシリーさん。神に無事を祈れ」デリックは、近づいてくる気配に向かってスコップを構えた。「俺は人事を尽くす」べちゃり、べちゃり、べちゃり……。何かが液体を滴らせて、歩いてくる。『GRRRRRRR……』異様な臭いがした。これまで嗅いだ中では、泥沼に棲むヒキガエルが一番近い。

それは、まさにそんな姿だった。ただしデリックより大きく、直立し、腰布を巻いている。全身は体液で濡れている。悪夢が具現化したような存在だ。「ひい……!」ヴァシリーはガタガタと震え、吐き気を堪えた。『GAMAA…BURAAAA……』それは裂けた口から言葉を発した。何を意味するのか。

「力鬼士の変わり種か」デリックは唾を飲み込む。やつの体表はぬらぬらと光っている。転ばせるために足を狙っても、滑りそうだ。体格も今までの連中より大きい。あれに掴まれたら……!「来やがれ、化物め!」デリックがスコップを振りかざす。ヒキガエルめいた力鬼士は頷き、しゃがんだ。

「!?」膝を曲げて前傾姿勢を取り、両拳を地面ぎりぎりに下げた。これは構えだ。体当たりを仕掛けてくる!『DOSSOI!』次の瞬間、猛烈な速度で力鬼士が突進!デリックはギリギリまでひきつけ、スコップを斜めに構えて突進を逸らす!「豚野郎!」ぬるり、とスコップに異様な感触が伝わる。

スコップの柄を掴まれていた。力鬼士はそのまま、片手でぼきりと折った。小枝でも折るかのように。「!」もう片方の手は、デリックの首を掴んでいた。喉輪だ。冷たく濡れた、ヒキガエルの体表の感触。「うっ……」死ぬ。このまま、小枝のように頚椎を折られる。妻の顔が脳裏をよぎる。

うわーっ!」叫び声。力鬼士の握力が一瞬弱まり、デリックはぬるりと喉輪を外す。「ゴボッ……ハァ、ハァ」力鬼士を見ると、足首に短剣が刺さっている。デリックのものだ。刺したのはヴァシリー。デリックの腰から抜け落ちた短剣を、ヴァシリーが拾い、無我夢中で刺したのだ。

「や、やった!ご無事ですか!」「ああ、ありがとよ!あんたは命の恩人だ!」デリックは笑い、落ちたスコップの柄で短剣の柄頭を叩く!『GA!』力鬼士は踏み潰されたヒキガエルのような声を上げた。怒り狂い、掴みかかるが、その前に!「もう一発!」KWAN!『GAAAA!』足が弱点だ!

「転べ!この野郎!」「わ、私も!」ヴァシリーはもう片方の柄で力鬼士の別の足を叩く!ぬるりと滑り、力鬼士は仰向けに転んだ!『AAAAGH!!』地面に体をつけた力鬼士は悶え苦しみ、シューシューと音を立てて溶け始める。やがて……ドロドロの液体となり、地面に染み込んでいく。

「や、や、やった……!」「こいつが親玉か?いや、まだいるな……」デリックは喉を撫で、ぬるぬるした体液を拭い去る。奇妙なことに、痛みはない。「……」デリックは、手の古傷に体液を擦りつける。すうっと消えた。他の傷も試してみる。消える。痛みも消える。活力が漲ってくる!

「……なあ、ヴァシリーさん。足はまだ痛むか」「は、はい。さっきのはもう、無我夢中で。あなたが死んだら私も……」「手当しよう。もう一度!」デリックはヴァシリーの足の包帯を外し、力鬼士の体液を傷口に塗り込む。「え、な、何を」「痛みは」「……あれ?」

ヴァシリーは驚いた。体液を塗り込んだ途端、痛みが嘘のように消え去る。そればかりか、超自然的な速度で傷口がふさがっていく。「すごい……!」「治療薬だ。こりゃいいぞ!」デリックとヴァシリーは、残った体液を急いでかき集め、山分けにして革袋にしまった。

然るべきところで売ればカネになる。宝石の原石より確実に。副作用も心配したが、いまのところなさそうだ。これでヴァシリーも歩けるようになり、デリックの荷物は減った。「良い事が続いた。次は―――」

「よして下さいよ、悪いことが」「伏せろ」気配が増えた。土の力鬼士たちが騒ぎを聞いて近づいて来たか。「……なんだ、この音は。歌か」デリックは訝しんだ。奇妙な節回しの歌が聞こえてくる。

Haaaaaaaaaaaa…Eeeeeee……

Hanaaaaooooo Atzuuuuumeteeee

Zinkuniiiyooomeeeeebaaaaayooooo…

Haaaaa…

4

……風は向こうから吹いてくる。あの、異様な節回しの歌のする方から。風は生臭く、磯臭い。

「ど、ど、どうしましょう」「あっちはヤバい。土の力鬼士どものいる方もヤバい。別の抜け道を探そう」デリックとヴァシリーは踵を返す。暗闇に目が慣れては来たが……いや、妙に明るい。苔やキノコの光じゃない。壁自体が光っている。それは二人を導くように、別の道へ伸びている。

デリックは息を呑む。「……これは、魔法ってやつか……実際に見るとはよ」

魔法。そうとしか言えない。おとぎ話の夢物語でも、あんなものを見たあとでは実在を信じるしかない。もしそうでなくても、目の前が明るく見えて進みやすくなっていることは事実なのだ。神の奇跡かも知れない。魔法より有り得そうもないことだが。「これを辿ってみるぞ」「はい」

光の道は、風や歌や臭い、力鬼士たちとは別の道を指し示している。多分、安全そうな方向へ。光は先へ行くほど強まり、ぽっかりと大きな、天井の高い空間に出た。外ではない。家屋の中でもない。自然の洞窟だ。鍾乳石が垂れ下がり、石筍が立ち並んでいる。「嫌な予感、は……しないが……」

来たか。誰じゃ」奥から嗄れた老人の声。広間に殷々と響き、ヴァシリーは幽霊かと身を震わせた。意を決してデリックが進み出る。「迷い込んだ者だ。出口を探している。あんたは誰だ」「この洞窟に住む者じゃ。古くからな。今はいつじゃ」「……使徒到来紀元で1022年だが……」

と、石筍の陰から人影が現れた。ローブをすっぽり纏った小柄な老人だ。杖を突き腰を曲げ、顔には皺が深く刻まれている。「1022年。ふむ。200年ほど寝ておったかの」老人は長いあごひげを撫で、呟いた。「あんた、魔法使いか?この光とか……」老人は小首をかしげた。「魔法?」

「まあ、お前たちから見ればそうかも知れんな。わしは地蔵(ゲノーモス)じゃ。そなたら土矮夫(ドワーフ)どもよりは上等なおつむをしておる」デリックとヴァシリーは、顔を見合わせた。おとぎ話の存在だ。からくりの技術に長け、様々な知識を先祖たちに与えたという精霊。実在したとは。

「なんでもいい。俺たちはここから脱出したい。できれば力鬼士どもの発生源を潰したいが、無理そうだ。あんたにはできるか」デリックは地蔵にまくしたてた。「力鬼士、のう。そんなものが湧いておったか。わしの眠りを覚ましたのもそいつらじゃな」「そ、そうだ、多分!やっちまってくれ!」

地蔵は頷く。「よかろう。情報を伝えてくれた礼に、外へ送ってやる」彼が杖で地面を突くと、硬い地面がどろりと溶け、沼のようになった。「この中へ飛び込めば、外へ出られる。わしはここが気に入りじゃで、離れはせぬ。侵入者どもを追っ払ってくれようぞ」「あ、ありがとうございます!」

ヴァシリーは涙を流して感謝した。わけがわからないことばかりだが、ようやく生きて還れるのだ!「ありがとよ、地蔵さん。この洞窟には誰も近寄らないようみんなに伝えとくぜ」「ああ、言わんでよい。余計近寄りたくなるじゃろ」「そりゃそうか。よし、忘れ物はないな。行くぞ!」「はい!」

どぼん! 二人が溶けた土に飛び込むと、目の前が真っ暗になり……

目を覚ますと、穏やかな森の中。青空と白い雲。夢か。

「……気がついたか、ヴァシリーさん」「は、はい」二人は洞窟の、鉱山の入口に転移していた。泥まみれだが命はある。何よりだ。「ゆ、夢だったんでしょうか。力鬼士だの魔法だの、地蔵だの……」「革袋の中に、やつの体液がある。夢じゃなかったな」デリックはもう、深く考えないことにした。

「さ、帰ろう。往復分の準備はしてある。あんたのぶんの食料も、多少な」デリックは近くに隠しておいた背嚢を引き出し、水筒とパンを取り出した。「ちょっと遅いが、昼飯にしようぜ」「あ、ありがとうございます!」ヴァシリーは涙を流し、丁重に礼をして、水筒とパンを受け取った。

デリックは頬杖を突き、これからのことに考えを巡らせる。力鬼士、魔法、地蔵。長老たちがそれを知っているか、否か。この鉱山が廃坑になったのは200年も前ってわけじゃない。その時に何があったか。もっと調べてみる必要がありそうだ。……いや、あまり首を突っ込めばよくない。妻もいる。

証拠品として例の体液を出しても、証拠にはならん。ましてや地蔵など。これはまあ、すっかり忘れてしまったほうがいいだろう。誰か吟遊詩人に噂話や伝承として、酒場でこっそり教えてやるか。いや、誰も近づかないようにしないと、またヴァシリーみたいなのが出る。そうならないようにせねば。

「ああ、頂きました。生き返りました。デリックさんも、どうぞ」「ん、ああ。そうだな」ヴァシリーから水筒とパンを返され、受け取る。俺は世界を救うような男じゃない。家庭を持ち、慎ましやかにカネを稼ぎ、時々人助けをしてやるぐらいの男だ。身の丈にあっている。パンと水、時々は肉と酒。

「この体液、誰にどう売ればいいんでしょう」「ああ、俺の店で買う。そういうのをさばいてくれるツテがあってな」「何から何まで……」「商売は信頼が第一だ。たまにこうして身を張るのも、張り合いが合っていいさ」そうだ、今の俺は商人だ。冒険商人のように遠出するでもなく、半端だが。

「……さ、腹ごしらえは済んだ。麓の村まで歩くぞ。馬を預かって貰っている。あんたの噂もそこで聞いたが」「ヒュブラですか。確か温泉が湧いてたはず」「そうそう。今夜はそこでリフレッシュして、朝一番でアドラノンへ帰ろうや」笑い合って、腰をあげる。伸びをして深呼吸。その時。

ズズズズズ……!ズズズズズン……!

地鳴りがし、地面が揺れ動く。「じ、地震だ!」「やばい、さっさと逃げるぞ! きっと地蔵と力鬼士が戦ってるんだ!」二人は顔を蒼くし、飛ぶように駆け出した。グラグラグラ……!背後で洞窟の入口が崩落する。鉱山全体が鳴動し、地割れが生じ、凹み、地の底へ飲み込まれてゆく!

デリックとヴァシリーが、妻と娘の待つアドラノンの町に帰ったのは、それから二日後のことだった。二人は結局、洞窟での話を誰にもしなかった。

ヴァシリーは力鬼士の体液と宝石の原石(町で鑑定したところ本物だった)を売ったカネで暮らし向きを建て直し、仕立て職人として再起した。デリックは長老議会からカネを受け取ったが、詮索はしなかった。何も言うなという無言の圧力を感じた。デリックもヴァシリーも、それでいいと思った。

町を、家族を、友人を守ればいい。デリックはそういう男だ。

【『元傭兵デリックの冒険』より「力鬼士(リキシ)の洞窟」終わり】

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