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【聖杯戦争候補作】Umbra Nigra

山の中で泣いている子供が見える。

回転する紋様。
床を埋め尽くす無数の白骨。
母の死。
海辺。
電車。

禍々しくうねる空。立ち並ぶ石碑。奇怪なオブジェ。……いつか、見たことがある夢。

【おお……あなたには、すごい力が秘められているのね。素晴らしいわ】

知らない女性の声。

地下の町。
墓室。
凍った湖。
密林の中の村。
海。
生首。

【その力を用いれば……あなたは……】

声が遠ざかる。

禍々しくうねる空が、裂ける。そこから光が―――――

「……おかしな夢だったな」

朝、自宅。少年は目覚め、身を起こす。
まだ少しフラフラする。思わず夜更かししたのだろうか。身支度を調える。
(たけし)、まだ寝てるの? 学校に遅れるわよ。早く朝ご飯食べちゃって」
母の声。そうだ、さっきのは夢だ。怖い夢を見た。
「今行くよ、母さん」

見滝原の中学校に通う、平凡な少年。名前は『山門武(やまと・たけし)』。幼い頃に父は死に、母子家庭だが―――遺産や年金もあり、暮らしていくぶんに不自由はない。
「やっぱり三鷹よりかは、ずっと発展してるよなぁ……」
彼は最近、東京の三鷹市から移住して来た。母の勤め先も決まった。ここは地方都市なのに、まるで外国だ。

「おう武、おはよう」
「あ、おはよう……」
同級生だ。転校先で友達が出来るか不安だったが、杞憂だったようだ。今のところイジメも受けていない。

「……なー、将来どうする?」
「将来?」
「まだ中学生だけどさあ、10年後はどうしてるかなあ。どの高校行ってどの大学行って、たとえば公務員になって、みたいに……」
「そううまく行けばいいけどね。将来何が起きるかわかんないし……でもまあ、安定してた方がいいよね」

将来。未来。決まりきった、安定した道を行ければ、苦労はあっても幸せだろう。うちは母子家庭なのだから、母にあまり迷惑をかけたくはない。いい就職のために、大学へ行った方が良いのだろうが……。
「今はまだ、遠い未来のことさ。ぼくは……」

…トマンアートマンアートマンアートマンアートマンアートマンアートマンアートマンアートマンアートマンアートマンアートマ…

禍々しくうねる空。立ち並ぶ石碑。奇怪なオブジェ。……いつか、見たことがある夢。

【夢ではない。恐れることもない。お前がここへ来ることは、決まっていたことなのだ】

知っている声。かつての残響。そうだ、これは夢だが、夢じゃない。かつての記憶であり、未来のこと。目の前が輝き、全身全霊が広大な宇宙空間に投げ出される。そうだ、ぼくはまだ、ここにいた。

【時は来た! さあ! 決断を下す時だ! 地球というちっぽけな星の支配者におさまるか? あるいは地球を遠く離れ、宇宙の秘密の一部を覗いてみるか? 時間も空間も、お前の前に開かれるであろう。さもなくば、さらに偉大で、さらに恐ろしい運命に赴くことにもなる。お前の意志ひとつだ!】

声が轟く。星々が煌めき、銀河が遠ざかる。彼方に見えるのは、恐ろしい力。恐ろしい、暗黒の影。ぼくに与えられたもの。
わからない! わからない! なぜそんな必要があるんだ! ぼくにどうしろというんだ! ぼくにこんなものを押し付けるな!」
ぼくは、ただの人間だ。ただの少年だ。こんな力を得ても、大きすぎるのに。

【決定するのはお前なのだ。お前は力を求めて力を得た! もはや後戻りはできぬ。お前はすでに宇宙の歯車のひとつなのだ】

ぼくは、地球へ帰りたい。でもそうすれば、あの暗黒の影が、一緒についてくる。地球は滅んでしまう。帰ってどうするんだ。母は死んだ。ぼくはたった一人で生きていけるのか。この力で、平和な生活や父母の生命は取り戻せないのか。
「わからない……! ぼくは……ぼくは……」

…ラフマンブラフマンブラフマンブラフマンブラフマンブラフマンブラフマンブラフマンブラフマンブラフマンブラフマンブラフマ…

「……ぼくは、どうしちまったんだ……」

目の前に、巨大な太陽。荒れ果てた大地。石の馬に群がる多数の餓鬼。まだ、夢の中だ。
そこへ―――肩から黒い翼を生やした、妖艶な女性が舞い降りる。ドレスを纏い、銀髪を角のように固めている。彼女は微笑み、告げる。

【ふふ。素晴らしいわ、マスター。あなたの望み、あなたの力は、よく分かったわ】
「あ……あなたは……?」
【はじめまして、私は『キャスター』。真名は『アルティミシア』よ】

アルティミシア。ギリシア神話の女神、だろうか。少し違うか。彼女は指差し、告げる。

【いい。あなたには途方もない力がある。この世界を滅ぼすほどの。少なくとも、私の活動には充分なほどの。でも、平和な生活や、両親の生命を取り戻す事は出来ないみたい。残酷なものね。願いを叶えたいなら、聖杯を手に入れなくてはならない。あなたはそのために呼ばれたの】

「聖杯……!」
そうだ。聖杯戦争。万能の願望器。英霊を用いて魔術師が戦う謎めいた儀式。記憶がわっと沸き起こり……また抜けていく。
アルティミシアは構わず、愉しげに続ける。

【私にも願いがあるの。聖杯を手に入れたら、あなたを平和な日常に帰してあげてもいいわ。あなたは戦えない、無力な少年。使い魔はいるようだけど、私の方がずっと強力よ。全部私に任せておきなさい。互いの願いを叶えるために、少し準備が必要なだけ。あなたはいつもどおりに暮らしなさい】

「……おかしな夢だったな」

朝、自宅。少年は目覚め、身を起こす。
まだ少しフラフラする。思わず夜更かししたのだろうか。身支度を調える。
「武、まだ寝てるの? 学校に遅れるわよ。早く朝ご飯食べちゃって」
母の声。そうだ、さっきのは夢だ。怖い夢を見た。
「今行くよ、母さん」

【クラス】
キャスター

【真名】
アルティミシア@FF8、DFFシリーズ

【パラメーター】
筋力E 耐久D 敏捷D 魔力A++ 幸運C 宝具A

【属性】
混沌・悪

【クラス別スキル】
陣地作成:A
魔術師として自らに有利な陣地「神殿」を作成する。

道具作成:B
魔力を帯びた器具を作成可能。剣・斧・槍・矢を魔力で生成し、射出して攻撃する。

【保有スキル】
魔女:A(EX)
人類の創造主の半身「魔法のハイン」の力を受け継ぐ「魔女」の一人であることによるスキル。強大な魔力を有し、一般的な魔術の他、バイオ、メルトン、ブリザガ、サンダガ、トルネド、ホーリー、クエイク、フレア、アルテマ、メテオ、メイルシュトローム、リフレク、デスペル、ストップ、ダブルなどの強力な魔法を振るう。「対魔力」「高速詠唱」「幻術」など様々な魔術スキルを内包。

憑依:A
相手の精神につけ込み、肉体を乗っ取る術。無力な人間よりは魔術師の方がよい。憑依対象は女性限定で、男性や英霊には憑依不可能。現在はマスターの母親(NPC)の肉体に間借りしている。

自己改造:B
自身の肉体に別の肉体を付属・融合させる適正。このスキルのランクが高くなればなるほど、正純の英雄からは遠ざかる。自分の宝具と接続(ジャンクション)する。

【宝具】
『汝の思う最強のもの(ガーディアン・フォース・グリーヴァ)』
ランク:A 種別:幻想宝具 レンジ:- 最大捕捉:-

幻想が魔力で形をなした召喚獣。翼が生えた黒い獅子のような幻獣。マスターが彼なので黒い馬になるかも知れない。フレア、グラビジャ、ペイン、トリプル、デスペルなどの魔法を使用し、相手が魔術を使う場合は「ドロー」で奪い取る。さらに「死の宣告」や「ショックウェーブパルサー」も放ってくる。キャスターはこの宝具と接続して融合することも可能。

【Weapon】
剣・斧・槍・矢を魔力で生成し、射出して攻撃する。

【人物背景】
『ファイナルファンタジー8』のラスボス。外見は肩に黒い羽根を生やした妖艶な長身の美女。銀髪を二本の角のように固めている。遠い未来に存在する「魔女」であり、過去・現在・未来の時間と空間を圧縮して唯一の存在になろうと目論む。目的を果たすため過去の世界へ干渉し暗躍したが、最後は主人公スコールらによって打倒された。リノアと同一人物説は最近公式で否定されたが……? 『ディシディア』シリーズでのCVは田中敦子。カオス陣営で参戦しており、敵陣営に策略を仕掛けるなど暗躍していた。

【サーヴァントとしての願い】
全ての時空を圧縮し、世界を外部から観察する唯一の存在となる。

【方針】
策略を用いて他の主従同士をぶつけ合わせ、弱ったら両者を狩って聖杯の糧とする。マスターは魔力供給源として非常に優秀なので必ず守る。彼の願いを叶えるかどうかは現状不明。

【把握手段】
原作。DFF世界から来ているのでそちらでもよい。

【マスター】
山門武@暗黒神話

【Weapon・能力・技能】
『聖痕』
体の八ヶ所に刻まれた蛇の刻印。アートマンのしるし。額のは目立つのでキャスターが幻術で隠している。令呪とは別。

『三種の神器』
草薙剣(天叢雲剣)、八咫鏡、八尺瓊勾玉(首飾り状)。剣で人を刺し殺すことは出来る。他の力は不明。自宅に保管されている。

『餓鬼』
不老不死の霊水で肉体が変化し、知性と理性を失った元人間たち。武の従僕として付き従い、決して死ぬことはない。標的に集団で襲いかかり食い殺す。仏の力によって封印することは可能。数十体が自宅に潜んでいる。

『馬頭星雲』
オリオン座分子雲のひとつ。暗黒神スサノオ、天の斑駒、羅喉とも。体内で核反応を起こし星々を生み出す超巨大宇宙生物。アートマンである武の命令に従う。かつては地球の近くにおり、太陽や月を覆い隠して天変地異を起こしていた。現在は地球から1500光年の彼方にいるため、喚び出してからやって来るまでに最速で数百年、遅くて数十億年かかる。しかし膨大な魔力を有しているので、これによってキャスターの活動に充分な量の魔力を常に供給することが出来る。ただしあまりに大規模な魔術を振るうには、魂喰いなどでそれなりに魔力を集めねばならない。

【人物背景】
諸星大二郎の漫画『暗黒神話』の主人公。CV:佐々木望(OVA版)。13歳の平凡な少年。東京都三鷹市在住。父は幼い時に死に、母と二人暮らし。実は1600年前に死んだヤマトタケルの転生体であり、古代縄文人の血を引き、宇宙の真理ブラフマンに選ばれし者「アートマン」となる運命を持つ。謎の老人・竹内に導かれ、日本各地を経巡って「聖痕」と三種の神器を得、ついにアートマンとして覚醒したが……。

【ロール】
中学生。母と二人暮らし。

【マスターとしての願い】
父母と三人で平和に暮らしたい。

【方針】
キャスターによって記憶に靄がかけられており、自分が聖杯戦争のマスターであることに気がついていない。中学生としての日常生活を送る。

【把握手段・参戦時期】
原作。集英社コミック文庫版が入手しやすい。最近完全版も出たが大筋は同じ。続編の『孔子暗黒伝』も読むと良い。地球へ向かおうとする途中、なぜかソウルジェムを手に入れたものと思われる。記憶は多くが失われている。

◆◆◆

なんか思いついて書いたが短すぎたので、豊久&ニコルと連続で投下した。そういうやつだ。天国聖杯はまどマギとジョジョが基盤になっているが、おれはまどマギに詳しくないので魔女をぶち込んだ。チート級につよく、時を止められるのでジョジョの方ともシナジーがある。マスターを探すとこうなった。諸星大二郎作品は宮崎駿や庵野秀明にも強い影響を与えており、武は碇シンジみたいなものだという説もある。暗黒神話を現代アニメ風にしたらどうなるのだろうか。孔子暗黒伝もだ。

【続く】

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