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映画「そばかす」感想文

なんにも壮大なことが起きない、誰かの当たり前の世界を見せてくれる物語が好きだ。

映画「そばかす」は誰にも恋愛感情を抱かない架純が主人公の物語。

映画は、なにも考えずに見過ごしてしまう日常を外側から見ることができる。「そばかす」を見たら、あまりにも恋愛が人々の日常に入り込んでいることに気がついた。芸能人の結婚のニュース、友人同士の会話など、私たちのまわりは恋バナであふれていた。


はっとした台詞を3つ…

「こういう多様性は、私達は大人だから理解できますが、子どもに変わった価値観を植え付けるのはいかがなものかと」

架純が作った、王子様と「結婚したいと思わない」シンデレラの紙芝居を批判する大人。
多様性を認めようとするほど、普通じゃないことを強調してしまう。自分にとっての「変わった価値観」は、自分以外にとっての普通かもしれない。そんな、「多様性」という言葉の暴力性に気付かされた。


「私だって、お姉ちゃんみたいになんにも関係ないような顔して生きていたかったよ」

妹の睦美は、この映画のなかで一番恋愛をしている人。

私は、恋愛をしていないことに焦りを感じていたときがある。なんか、このままで大丈夫なのかな…とかそんな漠然とした不安。
こういう些細な窮屈さは、結婚・妊娠をしてある意味「普通」に生きてきた睦美も感じていたのかななんて思った。


「同じような人がいて、どっかで生きているんならそれでいいやって。」

遠藤くん…!
ふっと心が軽くなる、救いのような台詞だった。架純にとっても、普通か普通じゃないかなんてわからない私たちにとっても。
普通じゃないとか、みんなと違うとか、そんなことはどうだっていい。繋がってなくても、自分と同じような人がどこかにいるなら確かに生きていけそうな気がした。


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