見出し画像

色々な車中泊

昨日の雨が嘘のように
早朝から明るい日差しが入ってきた。
どうやら、今日は快晴らしい。

取り合えず、車のドアを開け
トイレに向かった。

朝の5時半の道の駅は
思ったより、多くの人で
にぎわい始めていた。
トイレに用を足しに来ている人
トイレで歯磨きや顔を洗っている人
ベンチに座って、ぼんやりしている人
犬の散歩をしている人
男女の違いがあっても
総じて年配者が多かった。

お互い
顔見知りと言うわけでもないのに
目が合うと、軽い会釈か
朝の挨拶ぐらいは交わす。

早朝の風景の後
車に戻って、朝食の用意を始める。
夏ではあるが
北海道の気候は、少し冷えるぐらいの
体感温度である。
窓を少し開けて、お湯を沸かし
コーヒーを淹れ
トーストとハムエッグを食べる。

道の駅には、同じような雰囲気の
古ぼけた数台の
キャンピングカーが車中泊している。
彼らは、トイレに近い一等地には
決して止めない。
迷惑にならないように静かに
少し離れた、かどや隅っこにいる。
それでも、図体が大きく
車体の汚れや古さが目につく。
どれも、室内に食器や衣類が吊るされていて
生活感にあふれた様子である。

午前9時前になると
1台、また1台とキャンピングカーは
道の駅を離れだす。
9時開店の道の駅の、
迷惑にならないように。

朝食を終え、少しまったりとした後
自分も同じように道の駅を離れた。
北海道に来て10日がたつ。
次の観光地に移動する。

そういえば、色々な道の駅に
夕方ぐらいから集まり始める
この特徴あるキャンピングカーは
あまり観光地で見かけることが無い。
一体、昼間どこに行っているのだろうか?

北海道の道の駅はたくさんあるが
どの道の駅にも同じような光景があった。

キャンピングカーを持っていたら
寝る所には困らないが
電気、水とトイレの始末
それと洗濯と風呂
などの問題はついて回る。
お金を惜しまないなら
何日か置きに
電源付きのオートキャンプ場に
泊まれば水の補給とトイレや
ごみの処分モバイルバッテリーの
充電など
この問題は解決できる。

しかし、車に洗濯物を干してる様子や
早朝の人が少ない時にこっそりと
水の補給やトイレの処分をしている
様子を見れば、できるだけお金をかけない
暮らしを続けているようにも思える。

ある道の駅で、思い切って話しかけた。
「こんばんは、北海道は長くおられるのですか?」
「そうだな、3ケ月ぐらいになるかな。
 今年は、北海道も暑くて大変だよ。」
「どこか観光地でも寄られるのですか?」
「観光地は一通り見て回ったので特に行くところはないな。」
「毎年春から夏の終わり迄北海道に来てる。」
「家は息子夫婦に譲って、俺は気ままに
気候に合わせて北へ南へと移動しながら暮らしているよ。」
「家に居るのは1か月程度かな?」
話しかけた相手は、70代半ばの男性で
一人旅のようだった。

若い家族連れは、
きれいなキャンピングカーで
華やかで、笑い声に満ちていた。
観光地でもよく見かけた。

キャンピングカーの車中泊放浪族には
一つの特徴があった。
迷惑が掛からないように
静かにひっそりとしている。
70代前後で一人旅かペット連れ。
70代前後の夫婦。
なぜか総じて高齢者である。
キャンピングカーは年代物で、
生活感が漂っている。
どこの道の駅にも、
同じような人たちが必ずいた。

キャンピングカーブームの中
目立たないように静かで
まるであてもなく放浪しているような
不思議な世界がある。

彼らは、楽しんでいる様にも見え
そうでもなく淡々と
続けている様にも見えた。
年金の範囲でつつましく
暮らしているようにも思えた。

それとは別の世界だが
物流の大動脈の高速道路では
どこのSAやパーキングも
深夜、長距離輸送の大型トラックで
溢れかえっている。
小さなパーキングでは
ほぼ全てがトラックで埋め尽くされていた。
圧倒的なトラックの台数は圧巻であった。
日本の物流は、この人たちにより
支えられている。
運転席の後ろのベッドで仮眠している。
どのトラックもアイドリングをしたままで
お互いにディーゼルエンジンの大きな
騒音をまき散らしているが
寝るには特に気にならないようだ。
運転者は、様々な年代の人たちだが
なんとなく、疲れが残っている感じだ。
大勢いるのに、お互いに繋がりは無い。
たまたま同じ場所にいる。
そして朝になると、一斉に動き出す。

同じ車中泊としても
全く違う世界がある。
色々な理由で、車で寝起きしている
人達が、今日も日本中にいる。

その1台1台にそれぞれの人生がある。
それらが、繋がりのない
大なり小なりの塊として
車中泊と言う形になっている。

長距離旅行で、高速道路や道の駅を利用して
初めてこのような世界がある事を知った。













この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?