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剣術の稽古をしてたら警察が来た話。

私が学んでいた武術(いわゆる「新古流」)の流派では、柔術がメインだが、その他に剣・杖(120cmくらい)・棒(杖よりずっと長い)などがあって、私は剣術の初歩だけ習ったことがあった。
なので、木刀の大小と、居合刀(亜鉛合金製の稽古用の刀。真剣よりは若干軽いが、見た目はそっくり)の大小は一応持っていた。

さて、2年ほど前だったか、運動不足が著しく、朝に素振りでもして少し体力をつけましょうかねと思い立って、近所の公園の、人が来ない隅っこで、居合刀の大刀で素振りをしていた。
以前にも同じ公園で、木刀で1日左右100本ずつ素振りをしていたし、ほんとに全然人がいなかったので大丈夫かなと思って、さくっと100本ほど振って、一度帰って刀をうちに置いて、コンビニに飲み物を買いに行った。

店から出てきたところ、公園の入口にパトカーが停まっていて、若い男性と2人の警官が話をしている。
そこの公園はものすごく路駐が多いので、しょっちゅう車が取り締まられているのだが、どうもそういう感じではない。
近所だし、何かあったのなら怖いなあ、と思って、私は警官に話しかけた。

「何かあったんですか?」
「ああ、なんか、公園で日本刀を振り回してる人がいるとかで」
それはもしや。
「この人が通報してきたんですが、『刀が光っててなんだか怖い』ということで」

「あの、それ私ですけど」

と言った途端に、通報したという若い男性はさっと逃げ出した。なんだあれ。

警官2人は、困った顔をしている。
「あの、あなたが刀を振り回してたんですか?」
すごく疑わしげだ。
うんまあ、想定外の(身長の)小ささだったんだろうなあ。しかも女性だし。
「居合刀で、素振りをしてたんですけど」
「刀はどこに?」
「うちに置いてきました。それからコンビニに行った帰りなんですけど」

「ちょっと、刀を見せてもらえますか?」
ということで、うちのマンションまで移動して、待っててもらって部屋から刀を持ってきた。

玄関まで降りてきたら、
「ちょっと待っててくださいね、今、担当の者が来ますから」と言われ、片方の警官と一緒にしばし玄関先で待っていた。
なんか気さくな人で、
「剣道ですか?やってて長いんですか?」
「いえ、もともとは柔術で、剣はちょっと習ってただけなんですけど」
「私も警察だから、同僚に居合に誘われるんですが、なかなかねえ。あれもすごいですよねえ」
なぜ私は玄関先で、刀と一緒に警官と世間話をしているのか。

ほどなく、「担当の人」と思しき、私服の人が2人やってきた。これで警官4人。
ちびっこ1人相手に、相当ものものしい有り様だ。
「担当」の方は、刀を調べたり、私の名前と連絡先や、習ってた流派を聞いたりした。
厳密には今は支部がなくなっちゃったからなあ、多分除籍されてるんだけど、とは思ったものの、在籍当時の名称を答えたけど、首を傾げられた。マイナーなんだようちは……。

上司と思しき人が、「担当」の人に
「真剣じゃないんだよな?」
「はい、刃がないし、磁石がつきませんでした」
ああ、磁石で確かめるんだなあ。

「あのね、こういうものは、持って歩くだけでも法律や条例違反になるんだよ。切れないからといって大丈夫という訳ではないから」
以下、こんこんと銃刀法と軽犯罪法他についてお説教をされ、
「今度から気をつけてね」
というお決まりの台詞と共に、彼等は帰っていった。

うーむ、居合刀を思い切り振るには、区の体育館に行くしかないなあ。
色々と法律や練習できる体育館を調べて、ここなら大丈夫そう、というところを見つけた。

でも、最初に通報したあの若い男性、あれ何だったんだってか、どこで見てたんだ。
朝だし、公園は無人だったんですけど。
多分公園の近くの高いマンションだと思うけど、私はそっちの方が怖いような気がする。



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