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剣術の稽古をしてたら不審者が来た話。

居合刀だと今度こそ警察にしょっぴかれそうだけど、木刀なら大丈夫かな。以前にもやってたから、私が素振りしてたのを知ってる人もいるはずだし。

と、性懲りもなく、また近所の公園に出かけていって、木刀の素振りをすることにした。
今度は日が落ちてから、なるべく目立たない木陰を選んで、前回通報した人が住んでると思しきマンションからは見えない位置にした。

ゆっくり振って形を確認したり、数を数えて振ったり。
よし、今日は通報されなさそうだぞ。
と思っていたら、薄暗がりの中を歩いている人がいた。
こっちの方に歩いて来たので、邪魔になるかと思っていったん止めたのだけど、その人はなんか周りを歩いていて、離れていかない。

ぶつかる距離ではないので、素振りを再開したのだが、今度は立ち止まって見ていたり、右に行ったり左に行ったりして、めっちゃ見られてる。
50代くらいだろうか、あまり普通の人には見えない。ちょっと風体が良くない感じ。
東京の人だと、上野から御徒町辺りにいそうなと言ったらわかるだろうか。あまりお金がなさそうな感じの、しょぼくれた男性。

怖いけどとりあえず予定の稽古をして、帰ろうとしたら、その人が近づいてきて話しかけてきた。
夕暮れどきで、顔は良く見えない。
距離はそれほど近くない。防御の間合いの範囲。

「いやあ、すごいねえ」
「え、いや全然です。ちょっとしか習ってなくて」
「そうかい、ここの近所に住んでるの?」
「ちょっと離れてるんですけど、まあ、近くです」
「ふうん。いや、すごいなと思って見ていたんだよ」
こっち見んな。

「俺はね、こっちの人間じゃなくて、埼玉から引っ越してきたんだけど、電話代が払えなくて完全に止められちゃってね。やることもなくて、この辺をあちこち歩いてるんだよ」
Ingressのエージェントみたいだなあ。

「うちはほら、xxの近くに大きいパチンコ屋があるだろ?あそこの近くなんだけど、なんだか今日はパトカーがいっぱいいて、俺は前科があるから嫌でうちにいられないから、こっちに歩いてきたんだ」
やっぱり普通の人じゃなかったーーー。
でも、筋者って感じでもないので、帰るタイミングをはかりつつ、とりあえず話を聞いていた。
こういう人は切り上げようとすると怒るから怖い。

「歩いてどこまでも行くんだ。あっちの山の上の方にも行ったし、駅の方にも行ったりしてね。結構歩けるんだよ。こういう公園にもよく来るんだ」
と、しばらく話し続ける。
こないだの警官の人ー。私より不審な人がいますよー。

「じゃあ、寒くなってきたので、私はそろそろ」
「ああ、ごめんね、長話しちゃって」

私は荷物を持って、自分の家の反対方向に歩きだした。
そのまましばらく、離れ過ぎない程度に歩いてから、さっきの人がついて来ていないか後ろを確かめて、大回りをして自宅に戻った。

木刀でも、不審者がいるんじゃ素振りができませんがな。
明るいうちならいいだろうか。
一応、交番でも話だけは聞いてもらったが、実害があった訳ではないので、参考程度にしか聞いてもらえなかった。
でも、あちこちの公園を歩いて覚えているというから、また来る可能性は高い。

どうしても公園で稽古ができんもんだろうか。
野球のバットの素振りとか、サッカーの練習とかを、夜になってからやってる人はよく見かけるんだけど。
こっちは凶器()を持ってるけど、万が一のときに人に振るうのはためらわれる。過剰防衛になってしまう。

以来、夜に公園を通るときは、周りをよく見て、たまにベンチに座ったりするときは、灯りを背にしてあたりを見渡せる場所にして、背後から来られたら影を見てわかるようにしてる。イヤホンはよくしているが、周りの音は充分に聞こえている。

今のところあの人には遭遇しないで済んでるけど、ちょっとやっぱり怖いなあ。
なにしろ、何の前科か言わなかったんだよね。

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