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【雑感】2024/2/23 J1-第1節 広島vs浦和

昨年、今年と新監督の特徴の予習としてポーランドリーグ、スウェーデンリーグの試合を観る中で感じるのは「Jリーグはプレッシングを頑張るし、プレッシングを受けても出来るだけ繋ごうとするチームが多いな」ということと、「Jリーグはキャラクターの違うチームが多いな」ということでした。

外国籍の監督が初めて日本に来た時に対応が難しいのはそうした環境になれないといけないからなのかなと思ったりします。そんなことを言っても開幕から勝って欲しかったのですが、今年も勝てませんでしたね。でも、ヘグモさんは「強い学ぶ文化を作る」と言っているのですから、監督自身もこの試合から学んで次に活かしてもらえればそれで良いと思います。


広島はスキッベ体制3シーズン目で、積極的に相手を捕まえに行くプレッシングと保持者を底にした菱形を作りながら3人目を前向きにさせて縦への矢印を出し続けるボール保持のスタンスをしっかり継続していました。

一方で浦和は非保持が昨年までの4-4-2から4-5-1へ変わって、それに合わせてプレッシングのスイッチ役になるポジションも変わりました。そして、1失点目は浦和の配置が変ったことで昨年とは違う難しさが出てしまったなという印象です。

今季の浦和のプレッシングはCFが相手を横方向から牽制してボールサイドを限定し、そのサイドでCFの脇にIHが出て行くというのがベースにあって、失点シーンはその約束事の通りサンタナの脇に敦樹が出て行っています。

広島の方はボールを受けた佐々木を底にして頂点にソティリウ、斜め前に東と満田が入って菱形を形成し、敦樹が佐々木に出した矢印の根元を取ることに成功しています。4-5-1の配置の特性としてIHやWGが前向きな矢印は作りやすい反面、横向きのアクションはしにくくなります。そのため、敦樹が前に出た背中にグスタフソン、小泉、関根の順に横へスライドするということはしにくく、昨季までの浦和がやっていたような相手をどんどん外レーンへ閉じ込めていくというアクションにはなっていません。

また、前に出た敦樹は自分の背中を使われて前進されたので一旦中盤ラインまで戻った結果、CFと中盤ラインが空いてそこから川村にシュートを打たれています。昨年までであればトップ下の選手がそのエリアを埋めていたのかもしれませんが、今季はトップ下がいません。

4-5で並んで横幅を最初からケアしやすい配置にしている今季は縦向きのアクションを起こしやすい、その背中を使わせないためにDFとMFのラインの間は出来るだけ狭くして縦にコンパクトな状態を作る必要があるだろうと思います。昨年までは横に揺さぶられないようにしていましたが、今年は縦に揺さぶられないようにした方が良いだろうということです。そういう点で最初に当たった相手が縦方向の矢印が強いチームだったは浦和としては難しかったのかもしれません。


浦和の保持は同じような状況から上手くいった例とそうでない例が比較しやすいシーンがあったのでそれを取り上げておこうと思います。まずは後半立ち上がりのビルドアップの場面から。

50'33~はホイブラーテン→渡邊のところでハマりそうになりながらも小泉がホイブラーテンへ出て行った大橋の背中に向かって下りながら逆サイドのショルツまで上手くボールを流してオープンな選手を作れた場面です。オープンになったショルツが運んで相手を引き付けて、東ー満田のゲートにいる敦樹、そこから松尾へ繋がって前進し、グスタフソンがシュートを打つところまで行けました。

欲を言えば、ショルツが運ぶのに合わせて酒井が東の脇あたりまで一緒に前に出られると、その前にいる松尾がもう少し前にポジションを取りやすくなるので、ショルツからのパスは東ー満田のゲート奥にいた敦樹ではなく、松尾が佐々木の背後へ抜け出してそこへのロブパスで裏を取れたかもしれません。


一方、48'10~の場面では西川→グスタフソン→ホイブラーテンの縦+横の2本のパスでビルドアップ隊にオープンな選手を作れています。ソティリウがホイブラーテン、西川へと矢印を出しているのに対してグスタフソンがソティリウの矢印の根元でフリーになったホイブラーテンへボールを渡しています。

オープンにボールを持てたホイブラーテンに対して、その少し前にいる渡邊が「運ぼう」というジェスチャーをしている通り、そこから渡邊を掴んでおきたいWBの中野に向かって一旦運んで前進を試みても良い場面でしたが、ホイブラーテンはボールを止めて西川へ渡してしまいました。そしてこの後はそのまま手前で詰まってボールを失っています。

CBがオープンに前を向いたという点で共通していますが、運ぶか運ばないかでその後の展開が大きく違ったなというところで対照的な場面だったなと思います。3年位前は「岩波もっと運ぼうよ」ということが言われがちでしたが言う対象が変わっただけのような感じですね。マリウス頑張ろう!


そして、もう一つ似たような状況ながら対照的な結果になった場面がありました。上手くいったのは24'03~でホイブラーテン→渡邊のところで渡邊が前を向けない状況から、ビハインドサポートに入ったホイブラーテンへ戻して前へ蹴り出し、そのこぼれ球を小泉が拾った場面です。

ホイブラーテンから渡邊へボールが出た段階で小泉は前方向へ一旦アクションを起こしており、そのまま前目のポジションを取っていたことで塩谷が跳ね返したボールを拾えています。小泉が前向きにボールを持ったところで松尾が塩谷の脇から背後へアクションを起こしておりそのまま前進、松尾からのクロスを逆サイドから絞ってきた関根がシュートするところまで行けています。

ゴール前にはCFのサンタナと逆サイドのWGの関根だけでなく、IHの小泉と敦樹がどちらも入って来ることが出来ています。ゴールにはなりませんでしたが、キャンプから提示されていたIHが出来るだけ下りずに高い位置を保つことが上手く表現できた場面だったと思います。

これの対比になるのが後半のPKを与えてしまった場面です。ホイブラーテンから渡邊にパスが出て、渡邊のところで前が詰まったところまでは同じなのですが、ここで小泉が手前に下りてボールを受けに来ており、そこに対してボールが出たところでボールロストしてしまいました。

ホイブラーテンは先ほどの場面と同様に渡邊のビハインドサポートを取れそうな位置にはいましたが、小泉のポジションが手前になっていたことで選択肢が見えて「しまった」のかなと思います。また、これが発生したエリアよりも30メートルくらい前ではありますが、50'33~の渡邊→小泉→ショルツで自陣を脱出した場面の直後だったのでその成功体験がこの選択肢を取らせてしまったのかもしれません。

後半から特に小泉の位置が少し低くなったのか、手前から繋ごうとする意識が強くなったように見えました。選手たちがそういう判断をしたのか、ハーフタイムにそういう指示があったのかは分かりませんが、結果としては自分たちで手前から進むことを選んだことが、広島の強いプレッシングを助長して自分たちをどんどん苦しめて行ってしまったのではないかと思います。

この場面以外にもグスタフソンや小泉に対して「君は上手なんだから何とかしてくれ」と言わんばかりのパスが出ていて、これではお任せする相手が昨年は岩尾だったのが変わっただけのような気もします。

手前がオープンなら運ぶ、そうでないなら前方が空いているはずなのでそこを使う、という決め打ちではないやり方を志向していると思っているので、後半の手前に重たくなったような展開には疑問があります。去年までと同じ選手がプレーしている以上、その時の感覚がとっさの時に出やすいのかなとは思いますし、それをここからどれくらい上書きしていけるかは観ていきたいところです。

また、一つ前で取り上げたオープンな選手が運んでいけるかどうかの部分についても、今季は個人戦術に対するアプローチをしていることがうかがえるのでトレーニングを積み重ねる中で変化が出て行くことを期待したいと思います。

ヘグモさんはヘッケンの時も選手は変えても4-3-3は維持するというスタンスだったので、試合を通して枠組みや盤面の状況は変わらずに出てくる選手のキャラクターで解決していくのだろうと思います。前田が途中から入ってきてからは浦和の主戦場は完全に右サイドになりましたし、彼のどんどん突っ掛けていく姿勢から興梠の決定機も作りました。

ただ、敦樹に変えるのが岩尾だった(そもそもベンチにIHタイプの選手がいなかった)というのはあまり効果的でなかったと思います。左WGに入った中島もかなりフリーロールな感じで中央にポジションを取ることが多かったのですが、これを許容するためには恐らくIHの選手が代わりに外へ出るなどチームとしての枠組みは維持しながらプレーできるような前提があった方が良いのだろうと思います。ここは采配にも選手の振る舞いにもこれからどういう変化が出てくるのか楽しみにしたいところです。


0-2という結果なので当然残念なのですが、それでもチームとして目指しているプレーが出ていたとは思いますし、昨年のように過剰にやりすぎて失敗したというよりは単純に目指すところに対するアップデートが完了していないという印象なので悲観する必要はないと思います。

次はホーム初戦。僕らは嫌なジンクスばかり考えてしまいがちですが、そんなことを言っていては一生優勝できないので、次はしっかり勝って昨年とは違うというところを見せられると良いですね。

今回はこの辺で。お付き合いいただきありがとうございました。

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