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【雑感】2024/4/24 ルヴァン杯1stラウンド2回戦 鳥取vs浦和

カップ戦で大事なのはとにかく勝つこと。しかも、今季の浦和はルヴァン杯に負けた瞬間にリーグ戦しかなくなってしまうので、色々な選手を試す機会やチームを取り巻く雰囲気を保つためにも、とにかく勝つということがこの試合で最も大切なことだったと思います。

僕は浦和以外にはJ3のSC相模原を追いかけているので相模原の試合は毎試合観ているのですが、鳥取とはまだ対戦が無かったので予習したのは直近の富山戦だけでした。あくまでも1試合を観ただけの印象ですが、非保持は4-4-2をベースにしながらSHが積極的に縦スライドしていくソリッドなスタイルでした。保持では世瀬がアンカー役になる4-1-2-3がベースになりつつも右IHがアンカーの近くまで来ることが多く、手前でしっかり横サポートを作りながらボールを丁寧に前進させていきたいというスタンスという印象です。


J3を継続して観ていて思うのは、チームとしてプレーするという部分、特にセットされた保持、非保持の局面においては一体感を持ってプレーできるチームが多くなってきています。その中で上のカテゴリーとの差として思うのは、ボール扱いの技術や、プレーの強度、連続性といった個人のスキルの部分です。

チームとして上手くボールの行き先を制限できて、狙った場所にボールを誘い込めたのにそのボールを上手くコントロールできず保持へ移行できなかったり、狙っている場所、走っている場所は良さそうなのにそこへきっちりボールを届けられなかったり、というところですね。なので、下のカテゴリーになるほど、ボール扱い以外の部分である走るとか体を当てるとかを疎かにしないチームが上位に食い込んでいく傾向にあるのかなと思っています。

鳥取もその例にもれず、チームとしてセットされた局面でのプレーはきちんと出来ていて、スコアとしては2-5になりましたが、内容的にはそこまで大きな差は無かったのかなと思います。


試合序盤は浦和の保持が多い展開でした。鳥取の方は4-4-2でセットしたところから2トップの東出と田中翔太がアンカーを消しながらCBへ出るというアクションを交互に起こしていました。ただ、浦和は前節の流れもあってか、グスタフソンがヘソの位置に定位することはあまり無くて、左にも中央にも右にも下りていって出来るだけボールに関わるような動きをしていました。グスタフソンがいなくなったヘソの位置には武田か敦樹のどちらかが入るので中央からは人がいなくならないように意識されていたのかなとは思います。

浦和のスタメンで言うと、入団以来右側での起用が多かった敦樹が左IHに入り、右IHに武田が入ったというのが大きなポイントだったと思います。敦樹が思い悩んでいたことで景色を変えてリフレッシュを図ったのか、武田を使うなら左よりも右にした方が活きそうだと思ったのか。どちらかと言えば後者な気がします。

武田は左利きなので後ろから来たボールを中を向きながらプレーしようとすると利き足が後ろ(相手から遠い位置)に来るので、自分がプレーするための懐が作れればそのままボールを受けたらゴール方向へ体が向けられますし、相手に詰められていても利き足でそのまま後列へボールを落とせるので彼のボール扱いの上手さが活かせればということだったのかなと想像します。そんな想像をしていたので先制点がゴール前に入っていった武田の右足で生まれたのは意外でした。

ただ、この試合で効いていたのは変更されたIHよりも、左WGに入った中島のフリーロールぶりと、彼が中盤エリアの左サイドでボールを持った時に前が塞がれていても中に向かってドリブルをすることで後ろに下げずにボールを横へ移動させることが出来ていたことかなと思います。

フリーロールぶりのところが活きたのは先制点の場面で、自陣深い位置からビルドアップが始まった時に中島はチアゴの近くにいてシャドーのようなポジションを取っています。右にいたグスタフソンから渡邊まで対角のボールが飛んだ時に中島は中央にいて渡邊の近くには誰もいない状況でしたが、その分敦樹が左前へ抜けて行って一瞬CHの曽我を引き付けたことで中島がフリーでボールを受けています。

中島→前田→オーバーラップした石原→武田と繋がっていきましたが、中島がフリーロールで動くことが1stアクションになって、それによって変わったバランスを補うように次の選手(この場面では敦樹)が動けたことで中央でのスペースが生まれたのかなと思います。

また、中方向へ横ドリブルする場面で言うと、先制点の直後の13'40~は左サイドの3人がローテーションして中島が手前の位置に来ていたところでボールを受けています。SHの常安が中島の正面に入って縦方向を塞ぐのですが、ここから中島は敦樹と渡邊がローテーションしたことで広く空いた常安ー田中翔太、曽我ー田中翔太のゲートにドリブルで割り入っていきます。

パスの場合はボールが出してから受け手に到達するまでの間は基本的にボールの移動の方向やスピードが変わることが無いので、非保持側はその移動の間に次の場所へポジションを取りなおすことになります。一方でドリブルによってボールを移動させる場合は、ボールが常に人の足元にあるのでボールの移動の方向やスピードがいつ変化するのか分からず非保持側はアクションを起こすことが難しくなります。

この場面では中島がドリブルする間は鳥取の選手は中島に追いすがることはあっても、その先のスペースであったり、パスが出されそうな場所へのケアは少なくボールの行方を見ている選手が多かったように見えます。そうしている間に前田がDFの間からゴール前のスペースへ抜け出すアクションを起こしていました。残念ながらそこへはボールは通りませんでしたが、ドリブルによって相手を引き付けることが出来ることの良さを垣間見ることが出来た場面だったかなと思います。

ただ、中島がドリブルする間に浦和の選手もボールの行方を見ている方が多そうに見えました。特に武田はそのまま中島を見てしまっていて、中島が自分に近くに来てもその場に留まっていました。出来れば武田は中島がボールを運ぶのに合わせてポジションを取りなおして次に自分がボールを受ける準備が出来ると相手はもっと困ったし、中島の選択肢も作ることが出来たのかなとは思います。

例えば上図のように中島のドリブルに合わせて武田が世瀬ー小澤の間へ自分の懐を作りながらリポジショニング出来ると、チアゴがゴール前に抜け出しやすくなり、中島→武田の次にボールを受けることが出来る位置に行けたかもしれませんし、そうすると世瀬は中島に寄せにくくなったかもしれないので前田へのパスが通しやすくなったかもしれません。

Jリーグ全体として、味方がドリブルをしている間のリポジショニングが上手なチームはあまりない印象ですが、そこが変わるとビルドアップで後ろに下げる回数が減って、より高い位置でチャンスを繰り返すことが出来るのかなと思ったりします。


鳥取は20分を過ぎたあたりから非保持を4-4-1-1にして明確にアンカー番を置きつつ、浦和のビルドアップを左右分断させることでボールを取り上げる回数を増やしていったように見えます。22'30~は東出が前、田中翔太が後ろの並びですが、東出がホイブラーテンと佐藤の間に立ってCB間のパスをさせないようなポジションを取っています。右SHの常安は内側を絞って外側をSBの田中恵太に出させる形でボール奪取に成功しました。中島がWGとして高い位置に張るわけではないので、田中恵太は背後の怖さは無く前に出て行きやすかったのかもしれません。

また、浦和の非保持が4-5-1ベースでスタートするものの、CFの脇に誰出るのか、出た選手の背中をどう管理するのかというのが定まっていないのか、出て行った選手を通ってボールが浦和の4バックの前に入ってくるシーンが多発しました。

鳥取の保持は左右で非対称タスクになっていて左はSBの丸山が内、SHの小澤が外で、右はSHの常安が内、SBの田中恵太が外というイメージだったかなと思います。浦和の1トップ+前に出てくる選手(左右で1枚ずつ)に対して2CB+2CHは常に近い距離にいる状態で、浦和の前に出て行かない方の左右の中盤に選手の両脇にSBとSHが立てるような位置関係になっていたように見えました。さらに、徐々に右CBの大城が田中を押し出すように外へ開いてポジションを取るようになっていきました。

44'00~はチアゴの脇に入った曽我に対して敦樹が出て行っていますが、中島にとっては内側にいて敦樹の背中を取った常安と外に張りだしてきた大城がいて、中島が大城の方へ意識を向けたところで常安にボールを渡されて前進されています。


後半に入ると鳥取はまたプレッシングの形を変えていて、2トップは前を覗いた上でCHが1枚(主に曽我)をグスタフソンまで押し出て人でハメにきたように見えました。それによって後半の最初の方は浦和が手前でボールを持っても詰まってしまうことが多かったと思います。

また、浦和の方は後半に入ってからはグスタフソンが中央に留まることが増えていて、チーム全体として初期配置に忠実にプレーしようとしていたのかなと思います。それがかえって鳥取の人でハメに行くプレッシングと噛み合ってしまったという面はあったのかなと思います。

ただ、50'00~のビルドアップではグスタフソンが左に下りて、その分曽我が敦樹のところへ出て行ったので中島がその背中でボールを受けています。田中恵太が後ろから寄せてきてもきちんとボールをキープすると、そこから中方向へドリブルをして外で空いた石原へボールを届けています。そして、その勢いの中でパパっと2点取ってセーフティリードを確保できたのは良かったと思います。

鳥取の保持と浦和の非保持の形勢はあまり変わらず、浦和のIHの背中かWGの外から鳥取のCFがポストプレーをして次の選手が前向きにボールを持ち、そこからゴール前へ入っていくというプレーが再現性高く見られました。ただ、ここが先述したカテゴリーの差というか、良い状態でゴール前に入ってもボール扱いに不備が出て決定機まで行き切らない、チャンスの前でボールを失うというのが鳥取側にありました。


浦和は選手交代してもあまり形勢を変えることが出来ませんでしたが、静的な配置から良い形で前進できた72'24~の場面は切り取っておきたいと思います。

4-1-2-3で並んでSBが手前に引く、WGが前めに張るという状態になることで鳥取のSHは前へ出て行って、SBは後ろに残った状態が生まれました。この間のスペースでIHの安居とボールが合流し、さらにそこから安居が止まらず前に抜けて行きました。世瀬が安居についてきたことで前田から興梠へのパスコースが空き、前田には丸山がついていてその背中が空いているので安居は再びスペースでボールと合流してクロスを上げるところまで行っています。

静的な配置だからこそどの相手をロックできるのかというのが把握しやすい、それによってどのスペースが使えそうかという予測が立てやすいというのが上手く表現できた場面だったと思います。


浦和のチームとして良かった場面を探そうとすると鳥取のそれの方が多かったのが適切な見方かなと思います。冒頭で書いたように今年のルヴァン杯特に勝って次の試合がある状況を作ることが大切なので、内容的にもう少し。。という思いはありますが、きちんとやらないといけないことは果たせたのかなと思います。

勿論、内容はイマイチだったことには変わりないのでそこに対する不安は変わらないのですが、まずは結果を出しながらメンタル状態を良くしていくことも大切です。2年前は「内容は良いのに。。」というシーズン序盤を過ごし続けて、徐々に結果も内容も伴わなくなっていきました。なので、結果が出たことは素直に喜んでGWの名古屋、川崎、横浜FMとの連戦に少しでもポジティブな気持ちで迎えると良いかなと思います。


今回はこの辺で。お付き合いいただきありがとうございました。

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