七〇八号室

生活のはなし

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鏡よ鏡

鏡を見るたびに、写真に映る自分を見るたびに「醜いなあ」と思う 足りない背丈に、身体中にまとわりつくぜい肉、左右非対称の目に、だんご鼻、何もかもが醜い お菓子をくれた祖母に「太るからいらない」と言うと、もう太ってるじゃんと言われて、この前は知らない飲み屋の店員に太ってると遠回しに笑われた あなたが一番可愛い、という母のお決まりのセリフは「痩せてた頃はもっと可愛かった」「もう少し痩せたらいいのに」 言葉の枷が自分の中で積もっていく 醜い自分を見るたびに掻きむしって全てを消

    • 宙になげる

      ぼうっと天井を眺める、時刻は12時30分 遮光カーテンの隙間から見える空は灰色で、まるで梅雨のような日が数日続いてるな、なんて漠然と思った 身体が重い、昨晩も、昨晩というか今朝までただただスマホを眺めていたからだろうか 物事が思った通りにいかないと癇癪を起こしてしまうこと、ひとつのことにばかり夢中になってほかが手をつけられないこと、荒れきった部屋 なにもかもが重くて、浅くて、ぬかるんでいる 生活をすること、お金を稼ぐこと、人を大切にすること、愛すること、愛されること

      • 2023+1

        冷たい空気が、鼻を通って、肺いっぱいに満たされていく感覚がした 少なすぎる街灯と、誰の話し声もしない住宅地 深夜2時半、窓を開けると2年に一度しか使われない神輿が乱雑にビニール袋にかけられているのが目に入った 冷たくて、静かで、嫌いだった 新年明けましておめでとう、なんて誰が言ったものか 明けたって、何もめでたくないし 大体年が明けたからってなんだって言うんだ そんな悪態をついて過ごしたら終わった三が日 年は明けたのに、日本では自然の脅威に襲われ、世界では今日

        • 百鬼夜行(SS)

          どこか遠くから祭囃子が聞こえる シャンシャンと音を鳴らして、近づいてくる 音はどんどん大きくなる 太鼓の音が、ずっしりと響く ぼやけた視界にうっすらと見える炎と、まんまるなたぬき 小豆あらいも愉快にしゃらりと音を奏でる 今日は、12月の辰日 大天狗さまも、河童もからだを揺らして、闊歩する シャンシャン シャンシャン あっもうすぐ目の前を通る パジャマのままとびだした 「ねえ待って!」 整わない呼吸のまま、声を出す 「よぉ。遅かったじゃない、もう始まっと

          しろくならない

          師走、とは誰が名づけたのだろうか 終わりも始まりも、意思とは関係なく続いていく 今年もまた、心と身体が追いつかないままであった気がするし、少しは自分を大切にできた気もする 京都の冬は寒い、寒いけど故郷の静かな冬に比べたらまだ暖かい マフラーをして、手袋をして、何重にも着込んでは、足元にを気をつけた、地元のことを思い出す 冬の朝は、しんとしていて、障子戸から白い光が差し込む 起きる時間になるとストーブをつけて、こたつを温めてくれた母は、既に着替えて味噌汁を作っていた

          しろくならない

          あのね、わたし

          煙がわたしのもとにふわっと届いて、その度にあなたは手で何度も払っては、ごめんねと笑った その度にわたしは、決まったように大丈夫です、といった 本当に、本当に大丈夫だったから 禁煙なのに、先輩だけが許された空間では、いつもぷかぷかと彼女の煙が漂っていた 〇〇ちゃんも行く? 彼女は決まって、非喫煙者のわたしを喫煙所に誘ってくれて 会話の輪に混ぜてくれた でも、わたしだけぷかぷかしていない 先輩と同じ、が良かった ただそれだけでたばこをはじめた それなのに、もう

          あのね、わたし

          私が化ける、わたしに化ける

          11時半、いつものアラームが鳴って、ああこんな早起きするの辛すぎる、と心の中で声を漏らしてエアコンのリモコンをつけた 眩しいブルーライトの山とロック画面の通知欄が、一気に脳みそを起こす まだ寝てる? 母と姉からのLINE ただ既読をつけて、ぐうと背伸びをして手探りで眼鏡を取って、部屋の明かりをつけると、無造作に散らばったティッシュの山と、岡野大嗣の詩集が目に入った ああ、そうか、昨日もまた自分と、そして自分の1番近くにいる家族を困らせて、傷つけたのか 夜は魔物だ

          私が化ける、わたしに化ける

          ちいさな抵抗 自分を大切にすること

          ちいさな抵抗 自分を大切にすること

          わかんないよって突き放すんじゃなくて、わかろうと寄り添える人になりたい

          わかんないよって突き放すんじゃなくて、わかろうと寄り添える人になりたい

          透明な存在のわたしたち

          喉のもっともっと奥から、何かが迫り上がるような気がして 気持ち悪いな、なんて思った パーカーのフードを深く被って、いつものコンビニに入る いつもと違うのは、今が朝の7時だっていうことぐらい いつもの中国のスタッフのお兄さんが朝から頑張っていて、ああ自分、何してるんだろうって思った 日中はまだあたたかいけど、朝の匂いはもう完全に秋の匂いだった 眠れないまま迎えた朝日と、香りは、寂しくて、あと何度こんな朝を迎えるんだろうって思いながら、俯いた 自分の感情を、うやむやに

          透明な存在のわたしたち

          タトゥーは、本当に若気の至りなの?

          台湾出身の彼と、タトゥーについて話した時 タトゥーが入っていても、タトゥーが見えるような位置にあっても「普通に」許される、「普通に」職につける風潮が羨ましいと、私は言った そうすると、「日本もいつか、台湾のようになっていくよ」と言ってくれた 果たしてそうなのか、それは怪しいなあと思いながらも、祈りを込めて頷いて、いつか変わるといいけど、と呟いたのを覚えている でも、台湾もやっぱり親世代は嫌な顔をする人も一定数いるらしい 「(タトゥーは将来)後悔するよってお母さんは言

          タトゥーは、本当に若気の至りなの?

          アセクシャルってめちゃくちゃ生きづらいな

          アセクシャルってめちゃくちゃ生きづらいな

          秋の雑記 2023,10,14

          自分らしさってなんだろう、とか お金無いって思い続けるのって苦しいな、とか 将来うまくいかない想像とか そんなことばかり考えながら、高辻通を歩く あんまり気に入らない新しいネイルを空にかざして、何度か爪をきらきら光らせた ヘッドホンが、あたたかく感じる季節になった 耳元からは、大好きなバンドの新譜が流れていて、不意に銀木犀の香りが掠った 好きだった先輩の現在とか、連絡が取れなくなったあの人のこととか、そんなどうしようもないことが浮かぶのが、秋だと思う 短いくせ

          秋の雑記 2023,10,14

          心療内科での治療を始めて一年が経過しました

          この記事を書いてから1年が経ちました。 今でも時々思い出します 泣きながら、大通りの影を歩いたこと、 耳元からは恋は魔物が流れていた9月末のことを。 そして今も、泣きながら、死のうとしては死ねなくて、死ぬというタスクを達成できなかった自分に嫌気がさして、今日もバイト先で泣きました。 ずっと自殺することしか考えられなくて、他人から悪意を向けられ、嘲笑われている気がして、辛いです 辛いのに、それでも、それでも自分の心を置き去りに、生活が続いていくのが何より辛くてしかた

          心療内科での治療を始めて一年が経過しました

          ころころと変わる、きみの表情を見ている時が幸せだった

          ころころと変わる、きみの表情を見ている時が幸せだった

          田舎の毒親のもとで育ちました

          皆さんは、いつ自分の家が、両親が毒親だと気づきましたか? 毒親という言葉自体、昔はなかったような(聞き馴染みがなかったような)気がするけど..... 私は、薄々感じながらも、18歳〜、実家を出てからようやく気づいたと思う うつ病の通院をするなかで、自分の根本の原因を探った時に、完全に実家の存在が大きかったな、と 実家は、田舎の何代も続く商家 大富豪、とまでは言えなくても、小さい頃からいくつか習い事をして、数年に一回海外旅行に行って、大学も何も相談無しに私立を選べる程度

          田舎の毒親のもとで育ちました