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医師の診察・言語聴覚士も行う認知機能検査「MMSE」

今回は「認知機能検査」についてお話しします。
医療者ならほとんどの方が知っている検査の1つ「MMSE」をご紹介します。

MMSEとは?

Mini-Mental State Examinationの略称で、
認知機能検査(神経心理学的検査)の世界標準として使用されています。

認知症だけでなく、病気になって入院した患者様の認知機能を測るときにも
使われる検査です。

基本的には、医師などが診察をする際に行われるべき検査です。
30点満点で、カットオフ値(正常と異常を分ける値)は23/24点となっており、23点以下を「認知症疑い」と判断します。

しかし、もともと学歴が高い人などの知能レベルが高い人では
たとえ27点であったとしても、成績が低下していると判断します。
(病前の知能レベルでは、簡単に満点が取れると予想するからです。)
認知症やそのほかの認知機能低下が生じている可能性が高いということです。

逆に、ご高齢の方では中学校卒・小学校卒の方も珍しくありません。
病前の知能レベルでも25点ほどしか取れないかもしれません。
そのような方は23点であっても成績は少ししか低下していないと判断します。

このように学歴などによって成績の解釈にかなり差が生じるので、
すべての人をカットオフ値のみで判断してはいけません!

MMSEの検査項目は11個!

検査の項目をひとつ一つみていきましょう。

1.時間見当識(5点)
 「今日は何日か」「今日は何月か」など日付を把握できているか確認します。
2.場所見当識(5点)
 「ここはどこか」「何県何市か」など場所を把握できているか確認します。
3.記銘(3点)
 3つの単語を覚えてもらい、5.遅延再生で思い出してもらいます。
4.計算(5点)
 5.を行うために記憶とは別の機能(ここでは注意機能)を使ってもらいます。
 100から7を暗算で順番に引き算してもらいます。
5.遅延再生(3点)
 3.で覚えた単語を思い出してもらいます。1つも言えない場合は、記憶機能が
 かなり低下している可能性があります。
6.呼称(2点)
 鉛筆と腕時計を見せて名前を答えてもらいます。
7.文の復唱(1点)
 少し長めの文を提示し、同じ文を繰り返して言ってもらいます。
8.3段階命令(3点)
 「右手に紙を持って、半分に折り、机に置いてください」という指示に
 正しく行動できるかを確認します。
9.読字(1点)
 命令文(目を閉じてくださいなど)を音読してもらい、その通りに行動して
 もらいます。
10.書字(1点)
 短い文を1つ書いてもらいます。内容は何でも良いので自分で考えなくては
 いけません。誤字があっても主語述語がある文なら正答とします。
11.描画(1点)
 5角形が重なった図形(Wペンタゴン)を描いてもらいます。

検査項目でどんなことがわかる?

MMSEは、簡単に基本的な認知機能をを測定できるように作られています。
どの認知機能が、何番の項目で評価できるのか確認しましょう!

  • 見当識:1.2の点数が低い場合に見当識障害が疑われます。認知症では「時間見当識」から障害されていきます。しかし、見当識は「記憶機能障害」でも点数が下がってしまうため、鑑別が必要です。

  • 注意機能:4.で注意機能を評価できますが、意識レベルに関わる機能のため、注意機能がかなり低下している場合は検査全体の成績低下につながります。

  • 記憶機能:3.5の反応で評価します。基本的に5のみの成績低下が生じます。重度に障害されている方では、3で単語を覚えたことすら忘れています。

  • 言語機能:6.7.8.9.10で評価します。しかしすべての項目は言葉で説明するため、失語症がある場合は結果の解釈に注意が必要です。言語聴覚士は検査前に患者さまと会話をし、失語症の有無と重症度をある程度評価します。

  • 構成機能:11で評価します。構成機能とは「視覚認知機能」のような目で見たものを正確に判断し、それを再び再現する能力のことです。


MMSEは構造化されていない検査

「構造化」というのは、
項目の順序・患者さまへの説明の仕方などがきっちり決まっているということ。

たとえば、Wechsler(ウェクスラー)検査は構造化された検査です。
「WAIS-Ⅳ知能検査」や「WMS-R記憶検査」などは、
実施順序や説明方法・制限時間などが厳密に決まっています!

それとは対照的に、MMSEは構造化されていない検査なのです。
つまり、患者さまの状態・評価者の判断で、実施順序や説明方法を
変えることもできるということです!

検査内容から、症状を細かく解釈するために「項目を追加」することもできます。
たとえば「遅延再生」項目でヒントを出して思い出すことができるかを
確かめたり、「計算」項目で筆算ができるか確かめたりします。

ただし、全く異なる内容にすることはできません。
先ほどの11個はすべて含まれる必要があります。
また、追加した項目に点数をつけることもできません。追加項目はあくまでも
患者さまをしっかり理解するための情報という位置付けなのです。


簡易的な検査でも、検査のやり方や解釈の仕方によっては
とても細かいことがわかります。

MMSEよりも細かい検査をして、さらに患者さまの状態を深く評価したいときは
記憶・言語機能などに特化した検査を行います。
患者さまの負担にならないように、評価者は「必要最低限の検査を選ぶ能力」も
必要になります。

まだまだ完璧に検査を実施するのは難しいですが、患者さまを理解すべく
日々みなさまと勉強していこうと思います!


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