吉澤一子

公認会計士。専門は金融商品の会計、金融規制、ガバナンス、内部統制等。最近はTCFD等の…

吉澤一子

公認会計士。専門は金融商品の会計、金融規制、ガバナンス、内部統制等。最近はTCFD等の非財務情報や企業価値に関するリサーチに従事。

最近の記事

公認会計士のゆる投資日記~投資初年度を振り返ってみて考えたこと

 2023年の日経平均は+28%、TOPIXは+25%と大きく上昇し、2024年に入ってから更に勢いを増して日経平均は4万円を突破しました。2024年も3か月を過ぎようとしていますが、今回は昨年1年の投資を振り返りながら、新NISAを含めた今後の投資方針を考えてみたいと思います。 1.2023年の投資成績 最初の株を購入したのが2022年8月で、2023年は1年間フルの投資期間となった初年度でしたが、保有している日本株約40銘柄のポートフォリオは、38.3%の上昇率となり全

    • 公認会計士のゆる投資日記~リース会計基準の改正案について

      ※本稿をリース公開草案とIFRS16号のみの比較とし、取引の解説を加えたコラムを、筆者がアドバイザーを務める東京共同会計事務所のサイトに掲載しています。 https://www.tkao.com/column/column-2024-2/  2023年5月3日にASBJから公表された「リースに関する会計基準(案)」等(以下、「リース公開草案」)では、IFRSと同様に、原則として全てのリース契約がオンバランスの対象となるため、業種によっては財務指標に大きな影響が出る可能性があ

      • 公認会計士のゆる投資日記~初めての株主優待届きました

        先日、初めての株主優待品が届きました。2022年9月末基準で、暗号資産の優待は頂いていますが、“物”が届いたのは初めてです。今日は、その優待品をご紹介したいと思います。 1.ヤマハ発動機<7272>[東証P]業績や財務比率、配当利回りもよく、監視銘柄リストに入れていた銘柄ですが、他とは異なり、「製品のファン」という理由の方が優先して購入した唯一の銘柄です。学生時代、バイクの免許を取ってヤマハの125ccを購入しようと思っていましたが、瘦せ型女子で、乗りこなせず危険という周

        • 公認会計士のゆる投資日記~PBRは企業の解散価値ではない

          2023年1月末に、東京証券取引所は「市場区分の見直しに関するフォローアップ会議」で議論された内容の取りまとめを公表しました。その中で特に注目されたのが、「継続的にPBRが1倍を割れている会社には、開示を強く要請」という記載で、以降、PBR1倍割れというキーワードを、新聞やテレビ、ネットニュース等で頻繁に目にするようになりました。ただし、PBRの定義の仕方に誤解を生じるのではないかと思うことがあり、ここでは公認会計士の目線から、PBRの意味について解説したいと思います。 1

        公認会計士のゆる投資日記~投資初年度を振り返ってみて考えたこと

          公認会計士のゆる投資日記~クレディ・スイスのAT1債について

          先月、経営不安に陥ったクレディ・スイスがUBSと合併するに際し、クレディ・スイスの株式22.48株当たりUBS株式1株割当てられるのに対し、AT1債が無価値になるという衝撃的なニュースがありました。AT1債はバーゼル規制と呼ばれる銀行規制上の特殊な債券で、筆者も米銀のTLAC債に投資しており、金融不安がどこまで広がるか他人事ではありません。 そこで、スイス金融当局のプレスリリースや、クレディ・スイスのAT1債のProspectus(目論見書)の条項を確認してみました。以下では

          公認会計士のゆる投資日記~クレディ・スイスのAT1債について

          公認会計士のゆる投資日記

            サラリーマンであれば誰しも“会社を辞めたらやろう”と思っている事が一つか二つはあると思います。筆者は肉体改造(バルクアップ)に取り組んでみたいとずっと思ってきましたので、2021年8月末にサラリーマン生活卒業後、念願叶い、その年の年末からパーソナルジム+自宅トレーニング、食事改善を開始しました。しかしながら、ここまでの1年3か月経過時点(2023年3月)で増加率0%という残念な結果にとどまっています。スタート当初は、「中年のお痩せ女性でもここまで大きくなれました」という「

          公認会計士のゆる投資日記

          【第30回】環境省のシナリオ分析実践ガイドを振り返ってみた感想

          環境省のシナリオ分析実践ガイドの全ステップの紹介を前回で一通り終えて、最後にTCFD提言を始めとする非財務情報に関する個人的な感想を記載したいと思います。 1.非財務情報と企業価値の関係に関する理解 1年ほど前から、TCFD提言等の非財務情報のディスクロージャーの調査に携わるようになり、非財務情報と企業価値の関係について、様々な公表資料や関連書籍等を調べながら考えてきました。環境省のシナリオ分析実践ガイドにも「TCFD提言の開示推奨項目におけるシナリオ分析の位置づけや、各ス

          【第30回】環境省のシナリオ分析実践ガイドを振り返ってみた感想

          【第29回】シナリオ分析実践ガイド補足:炭素価格(カーボンプライシング)について

          ※本稿を2023年6月26日時点の最新情報に更新し、筆者がアドバイザーを務める東京共同会計事務所のサイトに掲載しています。 https://www.tkao.com/column/column-2023-6/ 第16回(シナリオ分析実践ガイドSTEP3-2:関連パラメータの将来情報の入手)において、シナリオ分析に使用するパラメータについて紹介しましたが、中でも代表的なパラメータは炭素価格です。炭素価格(カーボンプライシング)については、第7回(シナリオ分析実践ガイドSTE

          【第29回】シナリオ分析実践ガイド補足:炭素価格(カーボンプライシング)について

          【第28回】シナリオ分析実践ガイドSTEP6-2:各STEPの検討結果の記載

           今回は、シナリオ分析の開示方法について、シナリオ分析実践ガイドに記載されている例を紹介します。 1.何をどこまで開示するか 社内で検討してきたシナリオ分析のプロセスや結果を、どこまで外部に開示するかは実務担当者として悩ましい点ではないかと思います。特に、定量情報に関しては、下記の2点のバランスをとることに悩まれる方が多くいらっしゃるかもしれません。 ●  シナリオ分析はあくまでも仮定に基づく数値であるため、定量情報を開示すると、利用者に誤解を与えてしまうのではないか ●

          【第28回】シナリオ分析実践ガイドSTEP6-2:各STEPの検討結果の記載

          【第27回】シナリオ分析実践ガイドSTEP6-1:TCFD提言開示項目とシナリオ分析の関係性の記載

          今回は、シナリオ分析の開示方法について、シナリオ分析実践ガイドに記載されている例を紹介します。 1.TCFD提言の開示推奨項目とのマッピング 下記の表のTCFD提言11の開示推奨項目のうち、シナリオ分析は「戦略」に該当する部分となります。  これまで紹介してきた環境省のシナリオ分析実践ガイドのSTEPに従って進めていくと、上記の開示推奨項目の該当部分と紐づけることができるようになると思います。ただし、シナリオ分析実践ガイドのSTEPとTCFD開示推奨項目は一対一の対応関係

          【第27回】シナリオ分析実践ガイドSTEP6-1:TCFD提言開示項目とシナリオ分析の関係性の記載

          【第26回】シナリオ分析実践ガイドSTEP6:文書化と情報開示

          今回から、シナリオ分析の最後のSTEPである「文書化と開示」の内容を紹介していきます。これまでのSTEPの中で、文書化や開示との関係についても触れてはいますが、最後のまとめとしてご確認いただければと思います。 1.STEP6の実施事項STEP6における実施事項は、下記のとおりです。 STEP 6-1:TCFD提言開示項目とシナリオ分析の関係性の記載 STEP 6-2:各STEPの検討結果の記載 シナリオ分析実践ガイドでは、上記STEP6の工程の全体像が、下記の通り図で

          【第26回】シナリオ分析実践ガイドSTEP6:文書化と情報開示

          【第25回】シナリオ分析実践ガイドSTEP5-3:社内体制の構築と具体的アクション、シナリオ分析の進め方の検討

          今回は、前回検討した対応策を推進するための今後のロードマップや、今後のシナリオ分析の進め方について紹介します。 1.今後のロードマップの策定 STEP5-2で決めた対応策を社内で推進していくためには、今後のロードマップを策定し、対応策を実行に移すための体制を整備することが必要になります。シナリオ分析実践ガイドでは、 ① 対応策を推進するために必要となる社内体制を構築 ② 関係部署とともに具体的アクションに着手 ③ シナリオ分析の今後の進め方を検討 の3項目

          【第25回】シナリオ分析実践ガイドSTEP5-3:社内体制の構築と具体的アクション、シナリオ分析の進め方の検討

          【第24回】シナリオ分析実践ガイドSTEP5-2:リスク対応・機会獲得のための今後の対応策の検討

          今回紹介する内容は、これまでのSTEPで把握された事業インパクトの大きいリスクと機会に対して、どのような対応策をとっていくかを検討するプロセスになります。 1.対応の方向性の検討 シナリオ分析の結果として、業種にもよりますが、気候変動による長期的影響は、マイナスの影響として把握されるケースが多いのではないかと推測されます。継続企業であれば、何もしなければマイナスになる事が想定される場合に、何らかの対策によりマイナスの影響を回避する、転嫁する、軽減する、といったリスク管理活

          【第24回】シナリオ分析実践ガイドSTEP5-2:リスク対応・機会獲得のための今後の対応策の検討

          【第23回】シナリオ分析実践ガイドSTEP5-1:自社のリスク・機会に関する対応状況の把握

          今回は、STEP4までのプロセスで特定した、事業インパクトの大きいリスクと機会に対して、自社の対応状況がどうなっているかを把握するプロセスについて紹介します。 1.自社の対応状況の把握 まず、これまでのプロセスにおいて特定した、事業インパクトが大きいリスクと機会に関する、自社の現状の対応状況を把握します。大企業の場合で、特に多数の事業を行っている場合には、TCFDプロジェクトの担当者が把握していなくても、既に対応している、もしくは対応に向けて検討に着手している部署が存在し

          【第23回】シナリオ分析実践ガイドSTEP5-1:自社のリスク・機会に関する対応状況の把握

          【第22回】シナリオ分析実践ガイドSTEP5:対応策の定義

          前回までのプロセスで把握した気候変動の影響に対して、STEP5はどのような対応策をとっていくかを検討するプロセスになります。 1.STEP5の実施事項最初に、STEP5の「対応策の定義」が全体像の中のどの部分に該当するか、下記の図で確認いただきたいと思います。 【シナリオ分析全体像におけるSTEP5の位置】 STEP5における実施事項は、下記のとおりです。 STEP 5-1:自社のリスク・機会に関する対応状況の把握 STEP 5-2:リスク対応・機会獲得のための今後の

          【第22回】シナリオ分析実践ガイドSTEP5:対応策の定義

          【第21回】 シナリオ分析実践ガイドSTEP4-3:成行の財務項目とのギャップ

          今回は、STEP4の最終段階として、事業インパクトの把握と、その可視化の方法を紹介します。 1.インパクトの把握 まず、前回のSTEP4-2において算定した影響額が、成行の事業展望にどの程度の影響を及ぼすかを把握します。STEP4-2において算定した財務的影響は、金額ベースであることが多いのではないかと思いますが、同じ金額であっても、企業の規模によってインパクトは異なります。従って、金額の絶対額に加えて、その金額が、企業にどの程度のインパクトがあるかを把握する必要があります

          【第21回】 シナリオ分析実践ガイドSTEP4-3:成行の財務項目とのギャップ