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小堀正晴の人生そして行き先

俺は、小堀正晴と言いう。俺ほどの男はそうそういやしない。仕事が出来て、女にモテる。こんな完璧超人なんざ他にいねえだろ!...なんだけど今の俺は死人になっちまった。なんでって?女房に浮気がバレて包丁で刺されて、この世とさよならしちまったわけだ。
たくよ、あのクソアマ!ろくな事しやしねぇ!俺と言う逸材の素晴らしさがまるで分かっていやしねえんだ!おまけにガキはガキで毎日イジメられりゃ泣いて帰ってくる!ほんと...グズ!!家族なんて持つもんじゃねえな。
会社の女にもいろいろ手出したけど、お局の石原と劣等感の塊の菊池は本当落としやすかったわ。まず石原なんて男に縁がないから、ちょーっと甘い言葉言うだけで股開いてよ〜!しかも大人の女だから結婚も要求してこない、顔はいまいちだったけど良い女だったよ...。最後には俺を踏みつけにしやがったけどな!
劣等感が凄い菊池を落とすのも簡単だった。もともとビッチのくせにいい子ちゃんのフリしてよ。自分が尊敬できる人間と付き合いたいとか言う痛い女なんだよ!若いし顔もいい、おまけに名器持ちだからたまんなかった〜〜〜!散々遊んでやったのに最後は俺を後ろから刺しやがって...これだから結婚願望の強い女はよっ!
仕事の面じゃ定年寸前の神子さんが役に立ったよ。とにかくいろいろと情報持って来てくれるお陰で相手の情報丸分かり!いろいろ弱み握ったりして美味い汁吸わせてもらったよ。...けど駅でつまらねえ傷害事件起こしやがってよぉ〜駅員に追われて何で線路に飛び降りるかね。電車に轢かれて即死...ほんと最後は迷惑しかかけねえんだよ!
使えねえ部下がいてよ。白木っていう20代前半のやつでよ。まあ可愛がってやったのにそれをパワハラだとか色々いいやがって。仕事が出来ねえテメエを鍛えてやっただけなのによ...。しかもあいつ俺が不正してるの知ってて、やめた翌日に暴露しやがって...会社の金や他人の弱み握ってもらった金のこと全部バラしやがって!菊池にスパイさせて弱みとかいろいろ探らせてたのに俺の不正の証拠だけは最後まで見せずに水面下で復讐の機会狙ってやがったんだ!こいつが一番の悪魔じゃねぇか!
ちくしょう!ちくしょう!俺は真っ当に人生生きてただけじゃねえか!仕事を振ってよ、出来なきゃ人格なんてなくなるくらい言葉の暴力で圧倒してよ!俺だけがNo.1!俺以上はいねえし!いらねえの!

「言いたい事はそれだけかな?」

なんだ?このおっさんは?何にこやかに俺を見下ろしてやがる。つーか、ここどこ?裁判所か?おっかしいな...俺死んだんだろ?

「小堀正晴君?...君がどうしてここにいるか今からお話しましょう」

なんなんだよ!?こいつ偉そうに!

「偉そうで結構だよ」

は?俺の心の声が聞こえてんのかよ!?

「その通りだ小堀正晴君。私に隠し事は通用しない。これから君の罪状を述べていく。紛れもない事実だ。心して聴くように。
小学生の頃、憂さ晴らしと称して身体障害のあるクラスメイトを階段から突き落とし、冬のプールに落として殺害。ただしこの事は不幸な事故として処理されている。
同じく小学校の同級生宅で初めての喫煙。しかし火の処理に問題があり同級生宅は全焼。家人は全員死亡。このときも君は逮捕すらされなかった。
中学、高校では散々に暴れ回ってたみたいだね。高校生の頃にはシンナーやって盗んだ車で無免許運転をやってホームレスを轢き殺してる。これも上手く逃げたようだね。さらに同級生の女子を日替わりで仲間と強姦したりと随分悪い子だ。
さて呆けた顔をしているが、まだ続くよ?
さらに社会人になってからも他人の情報や弱味を握って脅迫、さらには出世のために相手を暴漢や痴漢にでっち上げたりもしていたそうだね。随分と知能犯だ。
さらには結婚した奥様や生まれた子供の事が随分とお嫌いだったようだね。いやあ、ここまで家族に愛情を注げないなんて君はつくづく不幸な人間としか言いようがない。
さらには目をつけた女性社員を浮気相手にする手腕はさすがとしか言いようがないよ。いやーこれにはお見それいったよ〜。そのうち二人はお前に妊娠させられ捨てられた結果、自死を選んでいるけどね。
部下へも当たりは相当キツかったようだね。恨まれる道を歩いているとしか言いようがないね。パワハラ、セクハラ、モラハラ、ハラつくことは全てやってるなんてブラック上司の鑑だよ!いやー実に裁き甲斐があるよ小堀正晴君!」

おいおいおい...なに言ってんだよ!?はっ!?
俺は今まで順風満帆な人生を頑張って生きて来ただけだぞ!?なんなんだよ!?

「順風満帆?...君さ、そういうのはまともな人間が言う事なんだよ?」

俺がまともじゃねえってのか!?

「その通りだ。自覚があったか。いや?罪の意識か?...そんなもんあるわけないな。じゃなかったら普通の人間はこんな所へは来ないんだよ」

なんなんだよここは!?

「君らが俗に言う閻魔大王が匙を投げたやつが落とされる裁判所だ。ここへ来る人間はそうそういない。せめて戦争犯罪者くらいなもんだ。なんでここに来るのか?決まってるそれだけお前が恨まれてるからだ。よく君は部下にこう言ってたそうだね?
“君みたいなのは会社の損害”...よく言えたものだ。君自体が“世間の損害”なのに。君はやり過ぎた。だから落ちて来たんだ。この“無限の闇”に。大丈夫。君みたいな“世間の損害”の仲間がたくさんいる。転生する事も、地獄へ上がる事も出来ない。待っているのは永遠に終わる事ない苦痛だけだ。自死も出来ず、生まれ変わる事もできない。反省しても終わる事ない罰を受け続けるんだよ」

小堀正晴...享年59歳
死因:殺害

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