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もっと知ってもらいたい日本のオルタナティブな音楽 〜序文〜

私は日頃から世界各国の音楽をあれこれ聴いていますが、海外の音楽を聴くときには自然とその国の独自性を音楽の中に探しているような気がします。ブラジルの音楽にはブラジル音楽らしさを、アルゼンチンの音楽にはアルゼンチン音楽らしさを、キューバの音楽にはキューバ音楽らしさを、といった具合に。

そのような土着の要素が様々なジャンルの要素と絶妙にミックスし熟成されることで、他には無い風味が醸し出され独自性の高い斬新な音楽となるように感じています。


一方で日本の音楽について、海外の人々が日本の音楽を聴いたらどのような印象をもつのだろうとか、日本のどのような音楽に興味を持つのだろうとか、最近よく考えるようになりました。


音楽ストリーミングサービスの拡大により海外の音楽リスナーが偶然日本の音楽に辿り着き、思いもよらない場所でバズるという現象がここ数年で起きています。
例えば1980年代のシティポップが2010年代後半に海外から逆輸入のような経緯で話題になったり、2003年にデビューしたバンドLampがいつの間にか海外で人気になっていたりということです。


日本の音楽ビジネスにおけるセールスの手法は国内市場に向けたものがメインで、そもそも海外に売ろうという発想があまり無いような気がしています。昨年はYOASOBI「アイドル」が海外市場でも話題となり、最大規模のフェスCoachellaに出演するなど海外戦略を本格化させる兆しもありましたが、このような試みはまだまだ少数派です。

海外で売れるのがミュージシャンとしての最終目標ということではないでしょうが、海外で話題になることで国内音楽ビジネスの拡大や活性化にも繋がるでしょうし、何より、自分の国の音楽が世界規模でバズるとシンプルにうれしいです。
日本人のスポーツ選手が世界の舞台で活躍すれば応援したくなるのと同じで、日頃音楽に関心を持たない人も誇らしい気持ちになるのではないでしょうか。


日本にも海外リスナー達を虜にするような魅力ある音楽はまだまだ沢山あると思うのです。
…ただ、発見されていないだけで。

そして残念なことに、それらの音楽の多くは国内ですら話題にされているとは言い難い状況です。


Spotifyの日本チャートをチェックしていると、ランキング上位曲の変動が乏しく、1年以上前にリリースされた曲が50位以内に留まっていることも珍しくありません。この辺りの現状については「ヒットの固着」と題したこちらの記事で詳しく解説されています。

この現象については様々な要因があると思うのですが、結果として『掘る』作業を能動的に行う習慣のない人々がヒット曲以外の多様な音楽に出会うきっかけが少なすぎるのではと思うのです。


ビルボードジャパンやSpotifyの日本の再生ランキングなどで上位にくるのは、多くがアニメや映画とタイアップした戦略的にヒットが約束されている曲が大半です。勿論それらの楽曲自体も多くの人に受け入れられるための魅力や仕掛けを十二分に備えていて、それはそれで良いのですが、そのようなヒット街道に乗せられていない音楽の中にも素晴らしい音楽は沢山あります。
音楽に高い関心を持つ一部の人々がそれらを掘り当てて局所的に盛り上がることはありますが、音楽オタクという存在は残念ながら令和の世の中では少数派です。


多くの人々に気づかれることなく埋もれてしまう音楽のなんと多いことか。
余計なお世話と言われそうですが、やっぱりそれは残念なことだと思ってしまうのです。


そんな諸々の思いから、私が推している国内の音楽について『もっと知ってもらいたい日本のオルタナティブな音楽』と題して紹介していこうと思い立ちました。

リストアップした作品の中には音楽好きな方にはよく知られている作品や既に海外リスナーに高い評価を受けている作品もありますが、いずれもヒットチャートやテレビの音楽番組ではあまりお目にかからないミュージシャンのアルバムです。そして世界中の人々の耳に届けたくなるような素晴らしい作品です。

各作品に対してしっかりと向き合って文章にしていくため、1記事1作品のペースで進めていこうと考えています。
音楽評論家でない素人の私が日常の合間に書いていくので、まとまったボリュームになるのは時間がかかりそうですが、どなたかがこれらの音楽に触れるきっかけとなれば幸いです。



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