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第3話後編 真の価値観の相違

セクション1 知識の格差からみた価値観


前の記事『第3話前編 知らないことに気づかない 』では、既知と未知の関係について議論しました。知っていること、知らないこと、この両者がさらにどのような事象を生みだすのでしょうか。

先日おもしろい考察を思いついたので書くことにしました。

人には話しても無駄だとか、価値観が合わない場面に多々出くわします。自分と他人とは、成長段階、生活環境、社会的役割などの種々の観点で異なります。それが故に話が合わないことと、合うことの両方が出てきます。

相手に説明しても理解してもらえない。いや、相手にそもそも聞こうという素振りが感じられない。お互いにそう思って譲歩をしなくなったときに「価値観の違い」という決まり文句に行き着きます。

でもぼくは、「価値観の違い」と呼ぶのはまだ早いと思っています。知識量が乖離していることでの食い違いに関しては、分かり合える可能性が十分にあります。

思考実験をします。<セクション2>からは、「1.架空の夫婦」と「2.架空の同僚」を想定して、僕の意図するところを際立たせたいと思います。

セクション2 架空の夫婦①(ケース1)

(1.)架空の夫婦、勤男(のりお)さんと家愛(かえ)さんを考えます。昭和のステレオタイプ的な亭主と専業主婦との2人です。お風呂が沸いてないことの不満と、毎週末のゴルフで喧嘩が絶えません。


勤男:「俺はお前と違って仕事で疲れているんだ。1日中家にいるのにどうして風呂も沸かしていないんだ!

家愛:「ずっと家事でこっちもヘトヘトなのよ。何も知らないくせに。あんたなんか休みは遊びに行ってばかりで、少しだって手伝ってくれたことないじゃない!」

勤男:「ゴルフは仕事なんだよ!」


このように分かり合えない夫婦ですが、<セクション3>からはレベルの概念を想定することで、どんなことが説明できるかを考えます。

セクション3 架空の夫婦②

#003-2-01夫婦のレベル格差

勤男は、仕事LV.7、家庭LV.2です。

- 仕事ひとすじで出世の為に頭を下げて、ゴルフ接待の甲斐もあって社内でのポジションも良好です。仕事もできるので実際に慕われていますが、家庭を顧みることができていません。家事をしないのはもちろん、お皿洗い以外はやり方すら分かっていません。

家愛の方は、仕事LV.2、家庭LV.7です。

- 学生時代に少しだけアルバイトをして以来は仕事をしていないので、飲みニケーションで仕事につながるのもよく分かりません。だけど毎日ご近所付き合いと家事してきました。お料理教室で美味しい料理も作れるようになったし、テレビで見た収納術のおかげで家が整頓されています。

2人のレベルは丁度あべこべなのです。

<セクション4>ではレベルの差が何を指すかを説明します。

セクション4 架空の夫婦③

ここでのレベルというのは、きちんとした優劣関係があると考えて下さい。上のレベルは下のレベルを包含します。レベル7とレベル2を比較しましょう。

#003-2-02明確な包含関係

(仕事レベルの高低差)
仕事で表計算をするのもExcelの使い方を知っているのと、全部の数字を1つ1つ入力することを比べます。Excelが使える人は、もちろんチカラ技で入力することは可能/不可能で言えば可能ですが、絶対にしないでしょう。

(家庭レベルの高低差)
一方でスーパーのチラシをチェックして、近所で88円アクエリアスが箱売りしていることを知りました。この場合は2キロ先に118円で箱買いしに行かないわけです。こちらも理論上の可能/不可能ではなく、わざわざ遠くに高い買い物をしに行くはずなどはないのです。

これがレベル7とレベル2の差が意味するところです。


仮想の夫婦、勤男家愛ではこれが何を意味するのかを<セクション5>でみます。

セクション5 架空の夫婦④

現在は仕事と家庭でそれぞれレベル7の勤男家愛ですが、各々レベル2の時期は必ずあったはずです。

勤男は小学校でのグループ活動で、班長に指示されないと何1つできませんでした。一方で家愛も、調理実習では合わせ調味料しか任せてもらえませんでした。

小学生の頃は2人とも、仕事と家庭ともに同じLV.2だったのに、徐々にレベルの差が広がっていきました。いまの勤男は家庭LV.7が何なのか皆目見当がつきません。いまの家愛も仕事LV.7をイメージすることもできません。

<セクション6>のホワイトボードで次なる議論の仮定を共有します。

セクション6 架空の夫婦⑤

こういう仮定をします。

#003-2-03 ホワイトボード

これらを前提にします。すると2人ともLV.7まであともう1歩となりました。勤男家愛の2人の考えはやはり相容れないままでしょうか?いや、かなり分かり合えるようになりませんか?そうだとすれば、それは再び価値観が交わったということです。小学生の頃にそうであったように。

#003-2-04 レベルアップ後の夫婦

「(1.)架空の夫婦」の例はおしまいにして、<セクション7>からは「(2.)架空の同僚」の例をみます。

セクション7 架空の同僚①(ケース2)

(2.)架空の同僚がいます。チャラ チャラ男さん、メガネ メガネ君さんがいます。2人は同じ職場で働いています。対照的で相容れないところがありそうです。

#003-2-05 チャラ男とメガネ

(社交性)
チャラ男は社交LV.7、メガネ君は社交LV.2だとします。するとお互いに「陽キャ」「陰キャ」という呼ばれ方で別グループにまとまるでしょう。レベル上下という議論でいうと、チャラ男にも引っ込み思案な子ども時代がありLV.2は経由しています。

(仕事力)
チャラ男が仕事LV.2で,メガネさんが仕事LV.7だとしましょう。チャラ男は仕事をさぼっているかもしれないし、頑張っているけど要領が悪いのかもしれない。メガネ君は迷惑を被って不満を抱えています。しかしメガネ君も最初の最初から仕事ができたわけではなく、やはりLV.2の時期を経由しています。

まったく異なる2人ですが、実は別の面もあります。<セクション8>で新たな面を導入します。

セクション8 架空の同僚②

#003-2-06 サッカープレイ

(サッカー)
チャラ男メガネ君の2人は週末に職場のフットサルチームで汗を流します。チャラ男はサッカーLV.5、メガネ君はサッカーLV.4と比較的に近いです。チャラ男メガネ君にドリブルのコツ教えてたり、応援しているサッカーチームについて熱を込めて語っています。これは2人の間のサッカーレベルが離れすぎていないから成せました。

どうも2人は完全には相容れないもの同士ではなかったみたいです。

一体全体、ひとを分かつものとは何でしょうか。2つの架空例からみえてきた結論を、<セクション9>にまとめます。

セクション9 本当の「価値観の違い」

今までの思考実験をしてみたら、知識・経験レベルに乖離があるからお互いに分かり合えていなかったのではないかと思えてきました。

自分がLV.4で相手がLV.6としましょう。自分が努力してLV.5になれば相手のことがもう少し分かります。あるいは相手の側がこちらのレベルが1つ上がるように手助けしてくれたなら、スムーズにLV.5とLV.6の仲になれます。

これまでの話の総括として僕が言いたいのは、分かり合えないことを「価値観の違い」と一括りにするのは思考停止だということ。レベルの違いという観点から捉えたときに、もう1押しで分かり合えるところまできている場合もあるのに。

再確認になりますが、ここでのレベルとは「科学的知識」や「論理的思考」、「経験からの当然の帰結」など客観的な色合いが強いものを想定しました。いったん身に付いてしまえば、もう不便なやり方には戻りたくなくなる。そういう類のやつです。


レベルの差で生じる齟齬などといった誤解をそぎ落とした最後に残るものがあります。それこそが本当の「価値観の違い」だと思うよ。それは例えば宗教なのかもしれない。

さあ、ここら辺で大風呂敷を折りたたんで、解散の時間にします。

知識格差シリーズ第2部
第3話後編 真の価値観の相違

おわり//

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