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映画鑑賞「君がいる、いた、そんな時」(ネタばれあり)

 日曜の午後、妻と一緒に久しぶりに映画を観た。共通の友人やFBでの知人の紹介もあった、「君がいる、いた、そんな時」。フィリピンルーツの少年がテーマになっているのも、日本語教育に関わる私たちの興味を引いた。  最初に、簡単にあらすじを述べる。フィリピン人と日本人のハーフ、岸本まさやが主人公で、彼に理解を示す図書室の司書の若い女性、山崎先生と、周囲から浮いているお調子者の香山くん、この三人を中心に物語が展開する。フィリピン人と日本人のハーフのせいで一部のいじめっ子から嫌がらせを

    • 「8月の狂詩曲」を見て

       ワクチン接種2回目の翌日は、熱で仕事もできないので、ごろごろしながらビデオ鑑賞。久々に黒澤映画でも見ようかと、netflixで無料だった黒澤映画2つのうちの一つがこれだった。この映画は1991年の映画だ。タイトルは覚えているが見た記憶はない。(以下、ネタバレがあります)  長崎の被爆体験をめぐるある家族の物語で、長崎の祖母と孫四人が夏休みを一緒に過ごす場面から始まる。夏の田舎の風景が何とも印象的だ。古民家の内側から縁側に向かってカメラを向け、庭の緑と土を背景に縁側に座る祖

      • なぜ漢文を学ぶのか、と高校生に聞かれたら

         非常勤先の生徒から、「なぜ漢文を学ばなければならないのか」という疑問を投げかけられている。  なぜ高校国語で漢文を学ばねばならないのだろうか。私自身は、正直あまり疑問に思ったことはなかった。でもそれは当然だ。平安文学を専攻している人間にとっては漢籍がなければ今の日本文学が生まれなかったのは自明のことであり、また教養として史記や漢詩を知っているのは当たり前のことだった。夏目漱石も正岡子規も当たり前のように漢詩を作っている。残念ながら我々の世代(少なくとも私は)そんな力を引き

        • 書き言葉とは、対話とはー『愛読の方法』から考えたこと

           先日、twitterのある記事にCEFR批判があって、さらにその批判をよしとする人、批判がCEFRに対する理解の浅さを示していて的外れだとする人など、さらに波紋を広げている。そして、それらのtwitterやSNSの言葉を消費している大勢の人がいる。かくいう私もその一人で、iphoneのレポートによると、私は毎日4時間以上スマホを見ていてその半分以上がSNSとネットニュースの閲覧時間だそうである。言葉は「消費」するものなのか。言葉は「twitter=さえずる」ものなのか。そん

        映画鑑賞「君がいる、いた、そんな時」(ネタばれあり)

          ドイツ「移住法」における「統合コース」について感じたこと

           2/23(土)、金沢で、「ドイツの移民・難民向け統合コースに学ぶ」というタイトルのイベントに参加した。金沢大学の志村恵先生がドイツの「統合コース」の授業を見学し、その報告会だった。ドイツが移民先進国でありさまざまな制度があることは知っていたが、具体的にどのような制度があるのか詳しくうかがう貴重な機会となった。以下、まずうかがった内容を簡単に説明し、興味深い点や驚いた点、日本との比較、今後の日本のあり方についての私論を述べたい。  ドイツに来る移民・難民は「統合コース」を受講

          ドイツ「移住法」における「統合コース」について感じたこと

          雑煮から考える複言語複文化

           熟年結婚して初めて実家で迎えるお正月。自分から夫である私の今治の実家に2泊すると言い出した妻が、出発2日前になり急にあせり出した。実家で食事は自分が作ってもいいのか、2日間何をすればいいのか、食材は買って行ったほうがいいのか、などなど。仕事でみせるブルドーザーのように物事を進める力強さは影をひそめ、珍しく意思決定が揺らぐ。  元日の朝、妻が雑煮を作った。これが悪戦苦闘。私の母は数年前に亡くなり、はっきり味を継ぐのは弟の嫁ぐらいだ。しかしこの朝、弟家族はいない。長男の嫁・真

          雑煮から考える複言語複文化