嫌いだったけど

どの学年も2クラスしかない、小さな学校。

4月から、新しい先生が来た。
隣のクラスの担任の先生。
部活の吹奏楽部の副顧問に当たる先生。
音楽の先生。
去年担任で大好きだった、音楽の先生が出ていってしまって、その先生が来た。
緊張しているのか、あまり笑顔がない先生に思えた。


樂壮の所属する部活は、真面目にする方がおかしいぐらい荒れている吹奏楽部だった。いつも部室のベランダに出て話しているばかり。
でも私は真面目に参加したかった。

「はやく準備したら?」
これが音楽の先生と吹奏楽部での初めての会話だった。
喋りながら、ノロノロと準備をしてる部員。
自己紹介とかをして、吹いた。
最後は音楽の先生が指揮を振った。
わかりにくい。
厳しい。
樂壮の吹部には部活動の地域移行で顧問が別にいる。 
きっと今までが甘すぎなんだよ。
それぐらい何もかも厳しかった。
だけど、このままやればコンクールでいい結果が残ると思えた。


5月。樂壮のクラスの男子と音楽の先生が喧嘩をした。授業中ずっと。廊下でも。
その男子以外にも、見かけると誰かが怒られていた。
みんな教室に戻っては愚痴を言ってる。
音楽の先生のことを好いていないと思う。

部活でも、音楽の先生と顧問が喧嘩をしてた。
目の前で。でも音楽の先生のおかげで荒れも治ってきた。だけど顧問とのやり方に合わないみたい。音楽の先生はこの学校に来る前までは主顧問だったからやりたいやり方があるのじゃないかな。


6月。音楽の先生の初めての定期テスト。
難しかったけど、きちんとやれば満点だったなって思う。悔しい。
コンクールに向けて、もうすぐ。
音楽の先生は相変わらず厳しい。

8月。コンクール。結果はあまり良くなかったけど、頑張ってこれたねって応援してくれた。
そんな先生の優しいところがもっと見つけられたらいいなと思う。
だけど、コンクールの朝顧問と喧嘩してた。
吹部はみんな音楽の先生を好いてきている。顧問よりも丁寧に教えてくれるから。
だけど学年では好いていない人が多い。

10月。喧嘩も治って、優しい性格が見えてきた。なんか前の音楽の先生に似てるところがあるように思えてきた。前の先生のいいところ。なんだか嬉しい。

11月。樂壮の体調の不良と、HSPの進行で学校に行くのが辛い時があった。だけど音楽の先生はいつも誰よりも気づいてくれるし、声をかけてくれる。樂壮の学年の子を可愛がってくれるようになった。笑顔も増えた。部活も、音楽の授業も、楽しくて嬉しくてたまらない日々があった。吹部も、きちんとした吹部になった。


そんな先生に憧れて、将来はこんな先生になりたいなと思う日がある。
でも、ニュースとかをみていると、自分は辛くなりそうになる。
自分がなれるかな。
耐えられるかなって。

世間に知らせるのも大事だし、革命が起きるのを報道するのも、大事だとは思う。
でも、不安にさせないでほしい。

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