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入学式のカメラマン募集で炎上したでござるの巻

~「小中学校入学式の撮影カメラマン」をXで募集に批判殺到~
https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2024/03/03/kiji/20240303s00041000379000c.html

いや、私の話ではないのですけどね。


ある学校写真を撮っているカメラマンが、Xで「未経験でもいいから手伝って欲しい!カメラマン募集!」という感じのポストを出したら、「そんなどこの馬の骨ともわからんヤツに可愛い我が子を撮らせるのか!ケシカラン!ロリコンが混じってたらどう責任を取るんだ!」
って件です。

小さいお子さんをお持ちの親御さんのお気持ちはわかりますが、安い日給で雇われているカメラマンにそこまで求められても困ります。
コンビニの100円コーヒーの接客で「お客様は神様だろうが!」って怒られている気分です。

フルサイズのカメラを持っている事が前提のようなので、どんなに安くてもボディとレンズで50万はするでしょうし、2台体制(標準ズームと望遠ズーム)の案件(体育祭とか)だと100万の機材を持って行くという前提になります。
この機材を持って行って日当が2~3万円なのですから割りに合いません。
(だから私はやらないんですけどね)

基本的にカメラマンは外注


こうした学校カメラマンというのは大抵は外注です。
学校と契約をする会社に専属の社員カメラマンはそう多くはなく、大抵は社長もカメラマンで社員は数名と言ったところで、同業のカメラマンを大勢登録してあって、必要な時にお願いしますという感じでしょうか。
そもそも多くのカメラマンは個人事業主の一匹狼ばかりだと思いますので、いわば季節労働者のようなものです。
それぞれに専門の(フード・建築・スポーツなど)撮影の合間に、学校や七五三や結婚式等の単発の仕事を請けたりするのです。

入学式はだいたい同じ日


もちろん毎日3万円の仕事があるなら頑張りますが、そうではありません。
入学式なんて全国ほぼ同じ日にあるわけで、体がひとつしか無いのでどれだけ案件があっても1件しか請けられない仕事なのです。

普通に考えて4月8日の月曜日なんて全国的に入学式なわけです。
カメラマンが足りなくなるに決まってるんだから、サブカメラマンとして多少下手でも入れておけば撮れ高が増えます。
集合はメインカメラマンが撮るけどオフショットは頭数が多い方が安心でしょ。
オフショット:本番じゃなくて、みんなでワチャワチャしている何気ない写真。え?撮ってたの?みたいな自然な写真がかえって嬉しいという。卒業アルバムとかに使う)
さらに見込みがあるヤツなら、メインに育てる事も出来るので、将来のメインが増えるわけです。

もちろん学校現場に仕事として行くわけなので、即席で雇ったカメラマンでも社会常識の無いやつは落とすし、もちろん身元確認はするわけだし契約をするんだけど(カメラマンは肖像権を扱うと共に著作権も扱う分野なので、データの取り扱いについてはとても厳しいし、悪用した場合にはカメラマンに損害賠償請求が起こる事も覚悟しなければならない)、ロリコンかもしれないとか言われても心の奥底まで見抜けるかと言えばそれは無理で、そういう事ならベテランカメラマンだって同じです。

春のカメラマン不足は毎年の事で、通年で募集しているし、登録カメラマンには昨年のうちからブッキングが入るし、必要な人には研修も行われるわけです。
今回の彼の募集のマズかった点は、ギリギリ一ヶ月前なのに、もうどうにも人員が足りなくて発狂した結果のなりふり構わない行動だったのだと思いますが、軽率でしたね。

でもやっぱりカメラマンが足りない


そうは言ってもカメラマンが足りない事実は確かで、例えば世田谷区を例に挙げると、幼稚園が57園、小学校が61校、中学校が25校
合計143校プラス、おそらく100を超える保育園があって、それらが4月8日の朝9時頃に一斉に入学式をやるんだから、メインカメラマンが200人居たって足りないのは誰でもわかります。
世田谷区だけでこれですから、東京・神奈川・埼玉・千葉でどれだけのカメラマンが4月8日に必要なのかと。

人物撮影のカメラマンだけじゃ足りないから、こうなりゃ撮っているのが鉄道だろうが、風景だろうが、コスプレだろうが、レースクイーンだろうが、地下アイドルだろうが、子牛寅卯辰巳馬羊申酉戌亥!ナニ撮っていてもいいからフルサイズ持ってりゃそれなりだろっ!タスケテクレ!
まぁそうなりますよね。

逆に素人さんに「年に一回3万円の仕事のために50万円の機材を買って技術を磨く気がありますか?」っていうオハナシですよ。
既に指定以上の機材を持っているなら充分資格はあるわけです。
まぁ別に難しくは無いです。
右手の人差し指でシャッターを押すだけの簡単なオシゴトです。

(以前、宝塚歌劇団オーケストラのコンサートマスターだったバイオリニストの方から言われた「ヴァイオリンなんて簡単ですよ。だって弦が4本しか無いのですから」という言葉を真似させて頂きました。

解決策はあります。


ギャランティを上げればいいのです。
例えばその日の撮影はカメラマン一人に10万円入る事にすれば、最低でも半年前にはオーディションが出来るし、それなりの腕の人を育てる事も出来ます。

年に一度の仕事のために、通年でそのレベルの人員を確保しなければならないなら、それなりのコストがかかるのだという事を知らない人が多すぎるのです。

まぁ入学式の写真は本人とその家族だけが必要なものなので、もうスマホでも十分な気がしますけどね。


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