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ドラゴン後援者・N取氏のこと 4.6無我・アクロス福岡1999.04.10 矢部明洋

 私のプロレス友だちのN取氏はドラゴン藤波の後援者である。カネはないが、すでにファンの域を超える応援ぶりであることは、今回アクロス福岡で開かれた「無我」興行を手弁当でスタッフとして手伝っていたことからも分かっていただけるだろう。
 彼は埼玉県在住なのである。会社は東京だ。40代で妻と3人の子がいる。そんな身の上で、勤めを休み、交通費は自腹を切って福岡まで足を運び、報酬も出ないのにリングサイドでスタッフとして働く人をファンとは言えなかろう。悪意を持って表現すればドラゴンの道楽みたいな「無我」とは、こんな熱烈なドラゴン後援者に支えられていることを記しておきたかった。
 余談になるが、熱烈なドラゴンファンだったN取氏は長子を辰年に授かろうと計画結婚および出産を企て、無事生まれた長男を「辰海」と、発音はドラゴンそのままに名づけることに成功した苦労人でもある。
 さて、そんな彼がリングサイドで陣取る「無我」の大会を私は市内の飲食店関係者からもらった招待券で見た。若手に脚光を、とかの意図でドラゴンは第1試合に登場。仲野信市とオーソドックスな見応えのある攻防を見せてくれた。
 しかし、第2試合以降に出てくるのは主にインディー連中であるため、まず小ぶりな体格がプロとしての説得力に欠けるのである。言い方は悪いが彼らの試合はプロレスごっこにしか見えないのである。例外は、この日、唯一女子団体から参加したガイアの里村と加藤だ。彼女たちも体は小さいがあの太ももは説得力十分だし、里村の感情表現豊かな表情はプロを名乗る価値がある。
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 インディー勢の見劣りする体格が気になっていた直後の9日、アルシオンの門選手がアクロス福岡大会中の事故で亡くなった。すぐに思い出されたのは最近、ファイト誌上に掲載された井上京子の発言だ。アルシオンのエース・吉田と久しぶりに再開した京子は、吉田の脂肪を削ぎ落とした体に「あそこまでレスラー脂肪を落としたら技を受けきれずにケガをする」といった意味の発言で、危険を指摘している。今回の事故は、ビジュアル・ファイターをキャッチフレーズにアジャ以外は美形レスラーをそろえたアルシオンのスタイルで、プロレスの凄みをも追究するのは危険すぎるということを最悪の形で証明したのではないか。
 インディーも善し悪しだ。事故死者を出さないため、マット界にも厳しい批評が必要なのではないか。

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