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スターレーンの高いイス 4.5全日本・博多スターレーン大会1999.04.10矢部明洋

 どうしたんだ全日本、と言いたくなるような今年のチャンピオンカーニバルだった。
 明かに体調の悪そうな小橋に、ベイダーに三冠戦で敗れたばかりの田上がぶつかるメーンに期待はもてないし、実際、消化試合のような展開だった。三沢組VSベイダー組の6人タッグも垣原のプロレスの下手さばかりが際立ち、観客の興ざめを誘う。最もヒートしそうだった秋山VS高山は疑惑のスリーカウントで、秋山の「作戦勝ち?」みたいな不完全燃焼ぶり。人生と第1試合の金丸、丸藤の頑張りだけが目を引く、全日本にはあるまじき興行だった。
 昨年末の最強タッグも食い足りない大会だったことを考え合わせると、全日本はちょっとおかしい。馬場が現場から一歩引き、ついにいなくなってしまったことが響いているのかもしれない。
 この夜の各試合もまるで申し合わせたように15~20分の間で終わっている点が気になる。地方大会でも全力投球のロングマッチで、SWS設立時の選手大量離脱を乗りきった全日本らしくない。
 休憩時間の会場の片隅には、原稿ゲラを片手に携帯電話でデスクの問い合わせに答える日本経済新聞のN記者の姿もあった。ファンの多くは、この日、馬場亡き後の会場風景の確認と全日本へのエールの思いも込めて、会場に足を運んだのだろうに。これでは全日本の行く手に不安を覚える結果となったのではないか。
 今回の興行で唯一評価できたのは、リングから遠い安い席のイスだった。普通のパイプイスより座高が高く、後の席でもリングが見やすかった。前回の最強タッグから導入された新兵器なわけだが、しかし、馬場が亡くなった直後で、「全日本を応援したらないかん」と意気込んで駆けつけた客を感心させたのが会場のイスだけ、というのでは余りに悲しすぎないか。
 

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