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PPP的関心【まちづくりにおける時空一致という視点を学びました】

たまたまですが最近はいろんな場所にフラフラと出歩いているので、以前のようなニュースや各種トピックに対して気づきや自分の考えを述べるという記事だけではなく、訪問した場所で実際に見聞きしたことから考えたことをPPP的関心で書くことが増えています。今回も先日お邪魔した湯河原の万葉公園とその周辺のまちづくり活動、街の変化を見聞して考えたことを書こうと思います。
*写真は湯河原の万葉公園の中にある川の道の沿道(休憩ベンチ)の様子。

湯河原温泉湯元通りの修景と万葉公園のリノベーションを起点に広がるまちの変化

今回フラフラと歩いたエリアは湯河原温泉の「元々の温泉街」の界隈です。
町営の都市公園「万葉公園」を入り口にそこから道沿い左右に点在する施設には築後100年以上も経過する旅館の建物が並ぶ風情あるエリアです。

そこで目にした「まちの変化」は立地的にエリアの入り口にある万葉公園の公園施設リノベーションをはじめ、点在する老舗温泉旅館群をつなぐ湯河原温泉湯元通りでも着々とストック&リノベーション方式で進んでいました。
湯元通りでは通りの舗装を石畳化するなどの修景事業に始まり、それを契機にある商店主が廃業した隣戸を買い取り食堂を始めたり、土産物店であった店の一部を改修したイタリアンレストランに都内の一等地で腕を奮っていたシェフが入り人気店になっていたり、あるいは民家が老舗旅館の「別館」として一棟貸しタイプの宿になったりと、基本的に旧来の面影を残した街並みの中に新しい使われ方が次々と挿入されていました。
さらに、湯元通りとは反対側のエリアに温泉付きグランピング施設が新設の民間施設としてオープンしたそうで、いわゆるまちづくり活動のターゲットエリアの「外」に波及効果が広がっている様子も見てとれました。

劣化コピー化するか否かは、熱意と時間の差

このエリアについては町営万葉公園の再整備事業(Park-PFIによる再整備)によく知っている友人が関わってたことや、先日偶然請け負った調査業務で万葉公園が調査対象であったことから、万葉公園の再整備事業における再生の目線やその効果についてはそれなりに予備知識があったつもりでした。

一方で、今回のまち歩きで湯本通りの修景や利活用の仲介、推進に関与した中西さんのお話を聞き「丁寧な」「時間をかけた」取り組みがエリアの変化に重要な要素であったことを改めて知ることができました。
この辺りは、先日行われた官民連携推進講演会(国土交通省総合政策局社会資本整備政策課)での中西さんの講演(資料2参照)でも概略を知ることができそうなので省きますが、所謂まちづくり的な取り組みが「劣化コピー」になるかどうか?の境目がどこにあるかを再確認できた視察でした。

「横展開」に抜け落ちる「時間とパッション」

最近、まちづくりやPPP / PFI、公園・道路活用関係の官庁作成資料のなかにある「横展開」という文字が多発している印象があります。
(コンサルの人や役所の人にダメ出しする意図ではないですが)手法を展開するという点では、「初めての人は誰と・何を・どうやって」ということを伝えることで着手イメージがつきやすくなることはその通りです。しかし、本当に問題を解決するというゴールに到達するには「何が大事で、何のために」取り組むのかという地域にしかわからない地域課題と目的意識の醸成・発掘と共有というプロセスが不可欠です。
この点が「横展開資料」ではぼやけている気がするのです。

今回、中西さんのお話を現地でお聞きし、ご本人が10年以上関わった草津や9年以上関わってきた湯河原での取り組みについて、時に数年間にも渡る共感醸成のための「熱意」と「時間」の投下があってこその取り組みだったと正しく理解ができました。
共感醸成とは、具体的には「人材の発掘と関係の構築」「空き家などの空間資源の発掘と利活用の機会の獲得」「景観や歴史的価値などそもそもの地域資源の発掘・再確認と活かそうという気運の醸成」といったさまざまな目的を持った社会関係資本の構築に他なりません。
基点としてエリアのコア地域にある通りの修景と入り口にある公園の再整備をこんな手法で地元の人を巻き込んで…と「横展開」として書くのは簡単なことかもしれませんが、その前段階における「時間とパッション」への敬意と留意が払われていない点が、もしかするとまちづくり活動の劣化コピーの量産につながりかねない…そんな気がしました。

「事業」と認識する。

もしかするとご本人は意図的に使っているわけではないかもしれませんが、取り組みのお話をされる中で私の印象に残った言葉が「事業」という言葉でした。
後から入ってきた外者が地域の人々と集って話をして共感が醸成されて出来上がった「まちづくりのコンセプト(例えば、地域アイデンティティを守り育てる活動とか)」を明確にし、そのコンセプトを具体化させ、実現させる活動を「事業」と何度かおっしゃっていたことが印象に残りました。
もしかすると取るに足らない(あるいは意味のない)小さな気づきかもしれませんが、「事業」でコンセプトを実現させ地域課題を解決するという考えはコンセプトを具体化させる活動自体が持続可能でなくてはならないこと、そして事業の発展とともに地域が成長するという意味で必要な「わきまえ」であるような気がしました。

自分用のメモ。今回の学び。時空の一致という視点

もう一つ。
今回お話を伺っている中で、とても印象に残った内容があったので自分用のメモ的に記録します。
第二次大戦後のワルシャワ復興にあたってのヤン・ザフファトヴィチ教授による「国家(精神的な歴史、時間)とその文化的建造物は一体」という考え方を引用しながら、観光地やかつての賑わいを誇った中心市街地などでは、街の空間(街並み、建物、景観)と市民の記憶(歴史、時間)の関係を一体的に捉えている。それを前提にエリアの修景、街並みや風景を残しながらの機能の更新に取り組んでいるという話を伺いました。この話が自分にとっては大きな気づきと学びになりました。
ストック&リノベーションは初期投資を必要最小限にしながらヒトモノカネの循環を呼び起こし加速させるための手法ですが、今回の話を聞いて観光地などでは「時空一体」という視点で考えることも大切なことであると改めて学びを得ました。

湯河原、久しぶりに行きましたが、改めて良い温泉地だと思いました。

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