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PPP的関心【注目。市内160箇所以上の公園を包括管理委託する東村山市の狙い】

公園管理については、基本的にその主体は自治体です。しかし、実際の公園管理は、従来から民間の力を用いる制度によって管理が行われていました。例えば、設置管理許可制度(公園管理者以外の者が都市公園に公園施設(飲食店、売店等を含む)を設置又は管理することについて、公園管理者が許可する制度)や、指定管理者制度(公の施設の管理・運営を、ノウハウのある民間事業者等(営利企業・財団法人・NPO法人など)に管理・運営を包括的に代行してもらう制度)などが用いられていました。
それらの制度の諸課題(委任期間の短さや運営の際の柔軟性などの制約)を解消する制度として、2017(平成 29) 年の法改正により公募設置管理制度(Park-PFI)*が導入されました。
*詳しくは→  PPP/PFI推進施策説明会における説明資料(令和3年2月)

今回は、それらの制度を「大胆に」活用して、市内の公園管理の効率と効用を同時に高めようとする東村山市のニュースについて書いてみました。

「市内全域」の公園管理を委託する狙いは都市アメニティの向上?

今回の東村山市の取り組みの注目点は、” 市内全域の市立公園(都市公園、児童遊園、仲よし広場、緑道、緑地など)や公園内に設置されている施設169カ所を包括的に運営・維持管理する指定管理と、萩山公園と南台公園についてはPark-PFI(公募設置管理制度)による整備を行うことが条件 ”とあるように、全面的に民間の力を用いた管理運営を目指しているところです。

東村山市では、市立公園を一事業者が包括管理することで、 ①スケールメリットを生かした統一的な維持管理、②市立公園を起点としたエリアマネジメント、③市民協働事業のさらなる推進を期待する。

記事の記述では、経済的な効果期待(スケールメリットによる合理化)と読み取れる内容に加え、市立公園を起点としたエリアマネジメント、すなわち公園単体だけではなく、公園周辺地域を含めたアメニティ(快適性、快適な環境、魅力ある環境など「住み心地のよさ」「居住性(のよさ)」を表す概念)の向上を目論んでいることがわかります。
個人的には、この取り組みの本質は市内に点在する公園管理を包括的に委託することで、点を面で繋ぎ合わせ市内全体の住み心地をよくすることにあるのではないかと考えます。

都市公園がもたらす「ストック効果」

都市公園の存在など都市アメニティがもたらす価値・効用を経済的な価値として示すには、例えば、インフラや公共施設などの整備の程度が不動産価値と連動していると考え、その価値を測ることがあります。

それ以外にも考えられる効果の例もあります。社会資本整備(公共投資)によってもたらされる効果について、国土交通省の資料(参考:「都市公園のストック効果向上に向けた手引き」(国土交通省都市局公園緑地・景観課、平成28年5月))では、

フロー効果=公共投資により派生的に創出される生産、雇用、消費等の経済活動により経済全体が拡大する効果
ストック効果=整備された社会資本が機能することによって、整備直後から継続的に中長期にわたり得られる効果

の二つに分類しています。そのペーパーの中で「都市公園のストック効果」には以下のような効果があるとしています。

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環境保全、景観形成など地域の環境良化や、災害防止、災害時の避難場所として安全確保、多様な余暇活動や健康増進活動への場の提供といった安心・健康・ゆとりの創造、(大規模な公園であれば)観光誘致や産業振興機能を備える経済活動基盤、文化的活動拠点、教育の場といったコミュニティ形成拠点、などさまざまな効果が示されています。

公園を起点とした、市域への「ストック効果」の拡散
必要なのは社会資本の「使いこなし」

先ほどの国土交通省のペーパーの冒頭には、このような記述があります。

○今後においても、幅広い国民生活や社会経済活動を支えていくためには、社会資本整備がその本来の役割であるストック効果を最大限発揮できるよう取り組む必要がある。
○都市公園の多様なストック効果をより高め発揮するためには、地域の実情に応じて取組を推進することが必要である。

つまり社会資本は整備して終わりではなく、整備を計画した際に想定・期待をした効果を発揮させるために「いかに使いこなすか」を考えなくてはならないということです。
公園はひとつひとつを見れば、ともすると「都市の隙間」的な捉えられ方をされることもあるかもしれませんが、もしかするとその行為はせっかくお金をかけて整備した空間を十二分に使いこなせていないだけかもしれません。

無論、本来的な管理者である行政機関が十二分な使いこなしが企画、実行をすることも期待されるのですが、これからの時代を考えれば、財政制約、人的資源制約など「効果的な取り組みの継続性」には心配が残るところです。

「使いこなし」にはPPP、「Partnership」が重要

今回の東村山市の包括委託(指定管理+Park-PFI)は、「効果的な取り組みの継続性」という点でとても注目です。

ちなみに指定管理制度では確かに民間に運営実務が委託されるわけですが、どのような「市民への提供価値」を創造・実現するのか?まで民間に考えろというものではなく、行政サイドが意図する「市民への提供価値」を自身で行うより高い品質で実現できる民間に委託するだけです。つまり行政サイドから「自分の地域で市民にどのように暮らして欲しいかという意思」が明示されることが肝要なのです。
「したいこと」と「できること」そして「やるべきこと」を相互に意見交換し、やってみた結果はどうであったかをきちんと振り返り次に生かすPDCA的な取り組み、つまりパートナーシップが大事になるのです。

東村山市とこののち選ばれる民間企業の「パートナーシップ」に注目です。


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