谷内修三

権力にこびつづけるマスコミ、マスコミを支配する権力。「記事」そのものを分析することで、…

谷内修三

権力にこびつづけるマスコミ、マスコミを支配する権力。「記事」そのものを分析することで、マスコミと権力のいびつな関係を指摘し続けます。 詩人、評論家。著書『詩を読む 詩をつかむ』『谷川俊太郎の「こころ」を読む』『詩人が読み解く自民党憲法案の大事なポイント』。

最近の記事

濱口竜介監督「悪は存在しない」(★★★★)

監督 濱口竜介 出演 山の風景  映画の冒頭、カメラが冬の木立をとらえる。下から、梢を見上げる形で。その木立の緑が、セザンヌの緑に見える。灰色に、とてもよく似合う。森を下からとらえた映画では、黒沢明の「羅生門」を思い出すが、あのぎらぎらした空ではなく、この映画では深く沈んだ緑、灰色と黒に侵食されながら、それでも保たれている緑が、さらに深く沈んで行く。見ているうちに、見上げているのではなく、見下ろしていような感じになる。たぶん、灰色の空のせいで。灰色は、凍った雪の色にも見える

    • 自民党のキックバック問題

       自民党の裏金、パーティー券収入のキックバック問題。いまでは、だれもキックバック問題とは言わないようなのだが。2024年03月31日の読売新聞(西部版・14版)を見ながら(読みながらではない)、私は不思議な「フラッシュバック」に襲われた。  見出しに「安倍派元幹部 離党勧告へ」。どうやら、安倍派の大物(?)を処分することで、問題にカタかつけようとしているのだが、ふと私の頭の中に蘇ってきたのが、田中首相の逮捕である。表向きは、やっぱり金銭問題。ロッキードから金をもらっていた。そ

      • 「オッペンハイマー」の問題点、その2

         物理学者、数学者は、核分裂、核融合の夢を見るとき、あの映画のような光が飛び回るシーンを夢見るか、という疑問を書いた。私は彼らはイメージではなく、数式で夢見ると思ったからだ。これに対し、ある友人が「それではふつうのひとにはわからない」と言った。なるほど。では、ふつうのひとはあのシーンで、核分裂や核融合の仕組み、あるいはブラックホールのことがわかるのだろうか。私はふつうのひとのように想像力が豊かではないのか、あんなシーンを見ても、何も感じない。「もの」のなかで、電子や素粒子があ

        • クリストファー・ノーラン監督「オッペンハイマー」の酷たらしさ

          クリストファー・ノーラン監督「オッペンハイマー」(★)(Tジョイ博多、スクリーン9、2024年03月29日) 監督 クリストファー・ノーラン 出演 キリアン・マーフィ、ロバート・ダウニー・Jr、エミリー・ブラント  私は数学者でも物理学者でもないから、私の想像が間違っているのかもしれないが、オッペンハイマー(キリアン・マーフィ)の頭の中で繰り広げられる「核爆発」の映像(イメージ)がなんとも理解できない。星が爆発し(死に)、ブラックホールが誕生するという映像(イメージ)も信

        濱口竜介監督「悪は存在しない」(★★★★)

          大谷の問題(素朴な疑問)

          私が不思議でしようがないのが、あれだけの金を稼ぐ人間が、あれだけの金額を「自己管理」していたかのように報道されていること。 簡単に言いなおすと、私が大谷なら、まず「金を管理する人間」を雇う。 球団からどんな形で金が支払われるか知らないが、日本のサラリーマンの給料のように、毎月銀行振込というわけではないだろう。 その巨額の金を、どうやってつかう。 これだって、年金生活者にはおもいつかないが、日々つかえる金なんて、どんな金持ちだって「限度」がある。 毎日自家用飛行機を買うことはな

          大谷の問題(素朴な疑問)

          こころ(精神)は存在するか(4)

           和辻哲郎全集第五巻。545ページ。 法華経は文学と哲学との合い子であって、純粋の文芸作品でもなければ、また純粋の哲学書でもないのである。同じようなことはプラトーンの対話篇についても言える  読みながら、これは和辻の文章についても言えるのではないか、と思う。和辻の文章には、文学的魅力と哲学的魅力がある。逆に言った方がいいかもしれない。哲学的魅力と文意学的魅力がある。別な言い方をすると、哲学(論理)を追究して言って、ある瞬間に、論理を打ち破って感覚が世界を広げる瞬間がある、

          こころ(精神)は存在するか(4)

          精神(こころ)は存在するか(3)

           和辻哲郎全集第五巻の464ページ。 最後の一句は、乗門道人親戚工師細民とあって、わたくしにはちょっと読みこなせないのであるが、  この「読みこなせない」ということばが、とてもおもしろい。「読めない」ではない。「読む」ことは、読む。  このとき、いったい何が起きるのだろうか。  先の引用とは直接関係があるわけではないのだが、476ページには、こういう表現がある。 思うにこの答えはそういう矛盾を示そうとするものではないであろう。  「思うに」ということばがある。  強引

          精神(こころ)は存在するか(3)

          精神(こころ)は存在するか(2)

           和辻哲郎を読んでいると「道」ということばが、しばしば出てくる。「道」に最初に出会ったのは『古寺巡礼』だった。仏像や寺を見て回るのだが、仏像や寺の印象を語るまえに「道」が出てくる。「二」の部分で、和辻の父が「お前のやっていることは道のためにどう役立つのか」と問う。和辻は、それに即答はしないのだが、このやりとりが私の頭の中にいつまでも残っている。私は私の父から「お前の道はどうなっているのだ」というようなことは聞かれたことがないが、まるで自分が質問されているように感じてしまう。

          精神(こころ)は存在するか(2)

          精神(こころ)は存在するか(1)

           「精神(こころ)は存在するか」というのは、私がいつも考えていることである。考えがまとまってから書けばいいのかもしれないが、まとまるまで待っていたら書くことができないと思うので、(その前に死んでしまうと思うので)、少しずつ書いていくことにする。  仏教というのか、東洋思想と呼べばいいのかよくわからないが、五感+心(意識)で世界を把握する。目耳鼻舌身は視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚、それは独立している。それを統合するものとして「意識(精神/こころ)」があるというのだが、どうして

          精神(こころ)は存在するか(1)

          池田佳隆と政治資金(読売新聞から見えてくること2)

           自民党安倍派の裏金問題で、なぜ池田佳隆が逮捕されたのか。だれが「情報を提供したのか」ということをめぐって、私は背後に統一教会の存在があるのではないか、と8日に書いたが、2024年1月11日の読売新聞は、とてもおもしろい記事を書いている。  自民党派閥「清和政策研究会」(安倍派)の政治資金パーティーで、池田佳隆衆院議員(57)(比例東海、自民を除名)を支援するパチンコ関連などの5社が2019~21年、パーティー券を計860万円分購入していたことがわかった。パーティー1回当た

          池田佳隆と政治資金(読売新聞から見えてくること2)

          池田佳隆って、知ってる?(読売新聞から見えてくること)

           自民党安倍派の裏金問題。池田佳隆が逮捕された。そこで私が思ったことは、ただひとつ。池田佳隆って、誰? なぜ、池田が逮捕された? 誰が情報を流した?  池田佳隆は読売新聞(2024年1月8日)の情報によれば 日本青年会議所会頭などを経て12年衆院選愛知3区で初当選。21年衆院選は小選挙区で敗れたが比例復活し、4回目の当選を果たした。文部科学副大臣などを歴任した。  政治に強い関心があれば「文部科学副大臣」で記憶している人がいるかもしれないが、ふつうは知らないだろう。そのと

          池田佳隆って、知ってる?(読売新聞から見えてくること)

          読売新聞の書き方

           読売新聞に限ったことではないが、私は「内容」よりも書き方に対して頭に来ることがある。最近話題になっている自民党の裏金づくり。「派閥」に限定して報道されているが、それは派閥の問題ではなく、自民党の問題だろう。つまり、岸田に責任があるのだ。  それを書いているときりがないので、きょう取り上げるのは、次の文章。(2023年読売新聞12月22日朝刊、14版、西部版)「派閥幹部の立件に壁、指示・了承の証拠が焦点に…裏金疑惑任意聴取へ」という見出しで、こう書いてある。  自民党派閥の

          読売新聞の書き方

          デジタル化という罠

           パソコンがダウンした。電源を切ろうにも、マウスも反応しない。私はたまたま予備のパソコンをもっていたから対応できるが、予備のパソコンのないひとはどうするのだろうか。  ウィルス対策のメーカーと話していてわかったのだが、パソコンの(ハードディスクの)寿命は4-5年くらいらしい。もちろん、こまめなメンテナンスをすれば、もっとのびるのだろうけれど。  しかし、そんなことを熟知してパソコンを買うひとが何人いるだろうか。  そう思ったとき、また、別の風景が見えてきた。  私は年金生活者

          デジタル化という罠

          「ノルマ」ということば(その2)

           ノルマについて書いた途端、読売新聞のオンラインに、「自民の元派閥幹部「パーティー券100枚、200万円分がノルマ」…届かなければ自腹も」という記事が書かれた。 https://www.yomiuri.co.jp/politics/20231214-OYT1T50255/  そこには、こう書いてある。  自民党のある派閥幹部経験者が読売新聞の取材に応じ、派閥のパーティー券販売の実態などについて証言した。  この元派閥幹部の場合、パーティー券100枚(1枚2万円)200万

          「ノルマ」ということば(その2)

          「ノルマ」ということば

           安倍派の「裏金問題」が話題になっている。誰が主導したか、があれこれいわれているが、私が不思議に思ってしようがないのが、これがどうしていままで表沙汰にならなかったかということである。  2023年12月16日の読売新聞(西部版・14版)に、こういう表現がある。 関係者によると、安倍派ではパーティー券販売のノルマ超過分を議員側に還流し、派閥側、議員側双方の収支報告書に収支を記載せず裏金化していた疑いがある。還流分は2018~22年の5年間で計5億円に上るとみられている。  

          「ノルマ」ということば

          和辻哲郎の「公平」(そして向田邦子)

           和辻哲郎『日本古代文化』の「初版序」におもしろいことが書いてある。和辻はこの本を書くまで日本の古代文化のことを研究してきたわけではない。それでも書かずにはいられなかった。どういう立場で、書くか。 自分は、一個の「人間」として最も公平だと思われる立場に立って、自分の眼をもって材料に向かった。  この文章をどう読むかはひとによって違うだろうが、私は「公平」ということばにつきうごかされた。一個の人間として公平とはどういうことか。古代文化の研究をしている人間と、それをしてこなか

          和辻哲郎の「公平」(そして向田邦子)