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Claude映画分析:観客を矛盾の狭間に突き落とせ!時計じかけのオレンジ

Claudeで映画分析シリーズ

今回の学びポイント:「自由意志とは?」という問いをどう切り取るか

  • 観客を矛盾した考えに落とす(そして考えさせる)構成

  • 徹底した暴力の描写で観客を体制側の気持ちにさせる

  • ゲスい主人公でも共感の余地をあたえている

機械仕掛けのオレンジとは

『機械仕掛けのオレンジ』はキューブリック作品の代表格で、アンソニー・バージェスによる1962年のディストピア小説をもとにした映画です。
主人公アレックスは暴力的な少年で、政府による倫理的自由を奪う「ルドヴィコ療法」という矯正治療を受けます。この治療はアレックスを機械的な善人に変えるもので、彼の自由意志と個人の権利が侵害されます。
小説は倫理的選択と人間性を問い、政府の権力と個人の自由の間の緊張を探求しています。

シナリオ13フェーズ分析

まずはClaudeに物語の段階について分析してもらいました。

背景
近未来のディストピア社会が描かれる
主人公アレックスとその仲間のドルーグス(不良少年)が紹介される

  1. 日常
    アレックスと仲間の日常的な暴力行為や犯罪行為が描かれる
    彼らの非人道的な行動や社会への反抗心が強調される

  2. 事件
    アレックスが仲間に裏切られ、警察に逮捕される

  3. 決意
    刑務所での改心プログラム「ルドヴィコ療法」を受けることを決意する

  4. 苦境
    「ルドヴィコ療法」の過酷な条件化プロセスに苦しむ
    暴力に対して極度の嫌悪感を抱くようになる

  5. 助け
    療法の副作用に苦しむアレックスを、政治家が利用しようとする

  6. 成長・工夫
    アレックスは療法の影響で暴力を忌避するようになるが、同時に自由意志を失う

  7. 転換
    アレックスの状態が社会問題化し、政治的な論争を引き起こす

  8. 試練
    アレックスは療法の副作用に苦しみながら、社会復帰を目指す

  9. 破滅
    アレックスは自殺を図るが、失敗に終わる

  10. 契機
    自殺未遂の結果、アレックスは「ルドヴィコ療法」の影響から解放される

  11. 対決
    アレックスは政府関係者と対峙し、自分の自由意志を取り戻そうとする

  12. 排除
    「ルドヴィコ療法」の非人道性が明らかになり、その使用が中止される

  13. 満足
    アレックスは自由意志を取り戻すが、暴力性も復活し、物語は倫理的な問いかけを残したまま終わる

解説

ではClaudeにこの脚本の秀逸な点をピックアップしてもらいましょう


  1. 衝撃的な設定と倫理的ジレンマを提示する
    「機械仕掛けのオレンジ」は近未来のディストピア社会を舞台に、極端な暴力性を持つ主人公アレックスを通して、自由意志と社会的統制の対立を描いています。非人道的な「ルドヴィコ療法」によってアレックスの暴力性が抑圧される一方で、彼の自由意志も奪われてしまうという設定は、観客に強い衝撃を与え、深い倫理的な問いを投げかけます。

  2. 主人公の変化を通して社会問題を浮き彫りにする
    物語の中で、アレックスは当初は残虐な暴力性を持つ反社会的な存在として描かれますが、「ルドヴィコ療法」を受けた後は、暴力を忌避するようになります。しかし、同時に自由意志を失ってしまったアレックスの姿は、社会による個人の統制の危険性を象徴しています。彼の変化を通して、作品は自由と秩序、個人と社会の対立を浮き彫りにしています。

  3. オープンエンディングで観客に問いを投げかける
    物語の終盤で、アレックスは「ルドヴィコ療法」の影響から解放され、自由意志を取り戻します。しかし同時に、彼の暴力性も復活してしまいます。作品はこのオープンエンディングを通して、自由と暴力、社会と個人の問題に対して明確な答えを提示せず、観客自身に考えさせる余地を残しています。この結末は、作品の持つ倫理的なメッセージをより印象深いものにしています。


明確なテーマ設定と構成

自由意志は存在するか、みたいな話はSFの中でもありがちですが、この作品でも中核のテーマですね。問題はどうやってそれを考えさせるようなエッジの効いた状況をつくるか。

機械仕掛けのオレンジが秀逸なのは「暴力はダメでしょ」でも「自由意志は尊重されないと」→「じゃあ自由意志に暴力が内包されていたら?」

という点をビビッドに抽出している点ですね。

ブレイクスナイダー的に言うとミッドポイント、この13フェーズでは6.成長・工夫の部分で主人公にとっては絶好調もしくは絶不調になり、11.12.の対決と排除がその真逆になると言われます。

アレックスが自由意志を失うのが6.に来ているので、絶不調パターンですね。そしてそこから解放されているのがクライマックスになっています。そういう意味ではとてもわかりやすい構成になっていますね。

長い「3.決意」までの道のりが、観客にルドヴィコ療法を受けさせる気持ちにさせる→観客を加害者にする

3.の決意は少年漫画でも重要視される「俺は海賊王になる!」的な瞬間です。いかに話の立ち上げでここまでスムーズに持っていくか、引き込むかが大事と言われます。

映画の中でも序盤の序盤でテーマ設定をして何かしらの決意(つまり物語のゴール設定)をさせる必要がありますが、この作品に関しては結構決意までが長いです。

長い決意までの道のりも、超絶かっこいい映像で飽きない

まあ、この場合の決意も、自由意志をテーマと捉えるとルドヴィコ療法が主軸に入ってくるので「それを受ける」というのが決意フェーズになります。この重さを伝えるためにも、前段階である彼らの1.日常がいかに異常なものであるかを描き切る必要があったんだと思います。

決意に至るまでに、観客は十分「こいつらは最悪だわ」と納得する(笑)

彼らの異常な毎日を見ると、「誰かこいつらどうにかしろよ」という気持ちになってしまいます。観客(というか少なくとも自分)は何か強制力をもってこいつらを鎮めないとまずくない?と思っていたので、療法に関してはむしろスカッとする部分さえありました。

有名なシーン。落ち着けば非人道的とも思うけど、映画の序盤を見ると「いいぞもっとやれ」となる

加害の気持ちがテーマへの問いを深める

悪いやつはこらしめろ、というのは人類共通の反射だと思いますが、物語の後半では「これはこれでまずくない?」と思わされます。「いいぞもっとやれ」と思ったからこそ、自分の考えはちょっと間違っているのでは?と考えてしまいます。

普通少年漫画だと主人公は成長するものですが、このアレックスはまた同じ日常に戻ります。結局社会はこの暴力性を抑えることはできないのか・・とぶん投げられている感じでエンドロールは呆然としてしまいました。

ゲスい主人公に共感させる方法

主人公が徹頭徹尾ゲスいのですが、観客はどうやってついてきているのでしょうか?

個人的に思うのは、先ほどのべた加害の感覚があるからちょっとかわいそうだなと思える部分があること、あとはクラシック音楽を好きだっていう設定が、実は天才肌の人なのかも?まともな部分もあるのかも?という気にさせます。

こういう共感を呼ぶ部分をちゃんと押さえていくのはやはりキューブリックすごいですね。

類似した手法の作品

では同じような手法を使った作品をClaudeに紹介してもらいましょう。


「ブラジル」(1985年、テリー・ギリアム監督)

  • ディストピア的な近未来社会を舞台に、非人道的な官僚制度と個人の自由の対立を描いています。

  • 主人公サムの変化を通して、システムに抑圧される個人の姿を浮き彫りにしています。

  • 幻想と現実が入り混じったオープンエンディングで、観客に社会と個人の問題を問いかけています。

「バトル・ロワイアル」(2000年、深作欣二監督)

  • 近未来の日本を舞台に、中学生たちが殺し合いをさせられるという衝撃的な設定で、極限状態での人間性と倫理的ジレンマを描いています。

  • 登場人物たちの行動と心理の変化を通して、暴力に支配された社会の問題を浮き彫りにしています。

  • オープンエンディングで、暴力と人間性の問題に対する答えを観客に委ねています。

「ハッピー・スライド」(2006年、ジョン・カメロン・ミッチェル監督)

  • 近未来のアメリカを舞台に、感情を抑圧する薬物が普及した社会で、薬を服用しない主人公たちの葛藤を描いています。

  • 主人公たちの変化を通して、感情と個性を抑圧する社会の危険性を浮き彫りにしています。

  • オープンエンディングで、感情と理性、個人と社会の問題を観客に問いかけています。

これらの作品は、「機械仕掛けのオレンジ」と同様に、衝撃的な設定と倫理的ジレンマ、主人公の変化を通した社会問題の提示、オープンエンディングによる観客への問いかけという脚本の工夫を用いて、個人と社会の対立や自由意志の問題を探求しています。


影響を与えた漫画作品

こちらもClaudeに聞きました


『機械仕掛けのオレンジ』の影響を受けた漫画は数多く存在しますが、特に顕著な例として挙げられるのは次のような作品です:

東京喰種(トーキョーグール) 

石田スイによるこの漫画は、主人公が人間と異形の存在「喰種」の間で苦悩する様子を描いています。『機械仕掛けのオレンジ』で描かれる個体のアイデンティティの危機や社会からの疎外感、暴力との葛藤は、トーキョーグールのテーマと共鳴します。

アキラ

大友克洋の作品で、超能力を持つ少年たちと政府の陰謀が絡み合うディストピア的な未来が舞台です。この作品では、若者が社会によってどのように利用され、制御されるかが描かれており、『機械仕掛けのオレンジ』の影響を感じさせます。

攻殻機動隊

士郎正宗によるこの漫画は、サイボーグ化された人間の自我と自由意志が主要なテーマです。『機械仕掛けのオレンジ』で探求される自由意志の問題や倫理的なジレンマを、テクノロジーの進化と組み合わせて掘り下げています。

これらの作品は、アンソニー・バージェスの小説が持つ倫理的、哲学的問いを異なる形で取り入れ、独自のストーリーテリングを展開しています。『機械仕掛けのオレンジ』のテーマは、個人のアイデンティティ、社会の制御、そして暴力という普遍的な問題に対する洞察を提供するため、多くのクリエイターにとって影響の源となっています。


東京喰種は意外ですね。確かにマイノリティのアイデンティティ問題っていうところは似ているかも?あと捕食するっていう避けられない暴力性っていうのは、機械仕掛けのオレンジよりも受け入れやすいテーマかも。

まとめ

なんやかんや書きましたが、映像美に注目されがちなキューブリック作品も脚本は漫画に使えるヒントの宝庫でした。

でもほんと映像はかっこよすぎますよね。アレックスもかっこいい。。

こちらに他の作品も追加していきますので、是非フォローしてください!


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