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【エッセイ】箒

 曾祖父は器用な人だった。自分が覚えてる範囲では暇さえあれば木材を彫刻刀で削って短い木屑から順に、円を描くように棒の先端に接着剤でつけて、菊の花を思わせる作品を仕上げたりするなどと、並々ならぬ熱意と技術を持って制作活動に取り組んでいた。
 箒も例外ではないのだろう。てっきり、家族の誰かがホームセンターで買ったとばかり勘違いし、長らく掃除に使っていたが、実は手作り、とは、亡くなって十〇年経った後でようやくわかった。紐と針金を用いて美しく編み込まれてるのが特徴的であり、私も過去に、専用の草を育てて、お手本を参考に試みたのだけれども、所詮は、素人レベルなので、柄に枝を束ねるのがやっと、というか、限度。正直なところ、形になっただけまだいいが、穂先を引っ張るとするんと簡単に抜け落ちてしまうため、実用に不向きである。初挑戦は失敗に終わったものの、ハードルの高さと芸の細かさを確かめられたのは収穫かと。

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