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【エッセイ】フィギュア

 幼少期から少年時代にかけて休日に家族でスーパーに出掛ける度に母から小銭を貰ってガチャポンを回した。当時、爆発的に流行っていたアニメのフィギュア欲しさにだ。同じキャラクターでも次の弾で表情やポーズが異なるものが登場するなど、バリエーションがとても豊富でコレクター精神が刺激を受けた。いつの間にか、親子で静かに熱狂していた。現在はおよそ六十個ぐらい手元に残っている。が、体感三分の二は減ったし、さらに告白すると、保存状態は非常に悪い。経年劣化によるベタつきや、塗装の剥がれが目立つので仮にネットオークションに出品したとしても、恐らくは商品としての価値を見出されずに買い手はつかないだろう。私にとっては意味の大きい宝物なのに。
 たまに静電気で付着した埃をウェットティッシュで拭き取っているとダブりませんようにとカプセルを開ける緊張や、細々と集め、戸棚に並べ眺めていた景色が蘇ってくる。

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