はじまりの顔合わせ【LITTLE RINGO BOOK 制作ノート#2】
一緒に絵本をつくろう!と旅する八百屋、青果店ミコト屋の鉄平さんと話をしたものの、絵本の中でもっとも欠かせない絵の部分を誰に描いてもらうのか。これが何より重要なポイントでした。僕自身もイラストを描いていますが、この本のイメージに合う絵はどんなものだろうと。また、誰かに参加してもらうことで輪が広がっていくこともプロジェクトにとって大事なこと。実った果実を鳥たちが食べ、その種がどこかに運ばれ新たな木が育つように。せっかく本をつくっても人の手に渡らなければ、意味がないですからね。
そんな折、今年のお正月明けにミコト屋でyackyackbooksも出店をするイベントを行いました。その時遊びに来てくれたのが、山本万菜さんとフクナガコウジさん。万菜さんは絵画やイラスト、彫刻などを用いた創作表現をされているアーティストで、フクナガさんはデザイナーでありながらイベントや食にまつわるプロデュースをするなど幅広く活動しています。そんなふたりが手掛けたアートワークを以前見たことがありました。
世田谷区の松陰神社近くにあるMERCI BAKEのポスターです。まだまだ出口の見えないコロナ禍。この時期、ケーキ屋さんをはじめ多くの個人商店の店内や店頭に貼り出されていたものです。John Lennonの楽曲を彷彿とさせる「CAKE POWER TO THE PEOPLE」という言葉に勇気づけられた方もいたのではないでしょうか。こちらは可憐な女の子がクッキー?を食べている絵ですが、どこかパンクというかロックな精神も垣間見えるところが格好いいなと思っていました。
そして、もうひとつこちらも。
岩手県盛岡市にある本屋BOOKNERDのポスターです。店主の早坂大輔さん自身の物語を書き下ろした『ぼくにはこれしかなかった』という本の出版の際、その本を取り扱う全国の本屋さんに配られました。yackyackbooksでも販売をさせていただいたので我が家で飾ったり、出店イベントの際には店頭に飾って「BOOKS ARE MAGIC」の言葉の力を借りていました。
どちらもシンプルなデザインでありながら、ひと目で印象に強く残るのビジュアル。見る者に感じることの余白を与えてくれているようなところもあります。どこか、昔から個人的にとても好きなグラフィックデザイナーであるソール・バスやサヴィニャックの作品に通ずるところも。
その万菜さんとフクナガさんにミコト屋で偶然お会いすることができました。万菜さんと話している中でどんな流れだったか詳しくは覚えていないのですが「絵本を描いてみたい」と彼女が言っていたのです。咄嗟にぴんと来ました。点と点がつながる。夜空にある星座を見つけたような感覚。きっと、万菜さんの描く絵がりんごの物語に寄り添ってくれるんじゃないかと。クッキーの代わりに、本の代わりに、りんごを持っていそうだなと。こういうのはもう縁とタイミングがすべて。イベント後、早速鉄平さんに絵とデザインを担当してもえないか二人に連絡してもらいました。
しばらくして鉄平さんから返事を聞くと、なんだか微妙な返答が。これはもう実際に会って、話をするしかないと4人で一度会うことにしました。
自由が丘のONIBUS COFFEEで顔合わせ。お店に行く前はおふたりが本当に引き受けてくれるだろうか、、、と心配でしたが、今回のプロジェクトの発端や現在イメージしている絵本の形や内容を伝えたところ、快く引き受けてくれました。
2時間ほどランチも挟みつつみっちりと。
絵本が完成して終わり!というのではなく、絵本をつくるまで、そして出来てからもどんな風に展開していこうかと話は膨らみました。制作の途中経過も随時公開していくこと、りんご農家さんに取材にいくこと、絵本の関連アイテムもつくり、ミコト屋とともに各地でイベントを行うこと。りんごの美味しいスイーツや生搾りりんごジュースもいいよね!と鉄平さんがいることで本から始まる食の世界が広がっていきます。これは、りんごが収穫され市場に出回る10月に出版せねばと決意もしっかり固まりました。
yackyackbooksは絵本や本という形で。
ミコト屋は食という切り口で。
万菜さんとフクナガさんにはアートとデザインとう視点で。
異なる要素が合わさることで、より遠くに種が飛んでいきますようにと。
ということで、無事に参加メンバーも決定。
この4名のメンバーで『LITTLE RINGO BOOK』の制作に取り掛かっていきます。
illustration: mana yamamoto
design: koji fukunaga
story: taiki yamanaka
special partner: teppei suzuki & micotoya
yackyackbook
山中タイキ
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