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森沢明夫「ロールキャベツ」

森沢明夫「ロールキャベツ」(徳間書店)。電子書籍版はこちら↓
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 就活前に進路を決められない夏川誠。人生の目的を見つけられずに鬱々としていた彼に、新たな場が与えられた。2人の女子大生のパンクを修理したキッカケで生まれた「チェアリング部」。それは景色のいい場所に椅子を置て、マッタリとした場を持つことだった。シェアハウスしていた誠ことマック、喫茶店志望のマスター、学生トレーダーのミリオンという男性3人に、ミュージシャン志望のパン子、料理が得意な風香。気のおけない仲間になった同じ大学の5人だが、それぞれに苦労した過去を抱えていた。支え合い、励まし合ううちに、いつしか5人に共通する夢が具体化してゆく。そして生まれる恋。
 読んでいるうちに宮本輝「青が散る」が頭に浮かんできた。ストーリーは全く違う。しかし共通する感覚がある。青春って青臭い、そして恥ずかしい。独りよがりでもあり、感情過多でもある。でもだからこそ素晴らしい。失敗もできない人に、成功はありえない。変わることができるのは、生きているうちだ。凡庸な主人公と、個性的な4人の仲間たち。タイトルは人と人との組み合わせの妙を表している。皆いい人過ぎる気もするが、それぞれがマイナスな感情を押し隠すこともない。悲しみや怒りも、どう表現するかで読後感はまったく違う。未来への扉が開いたエンディングに、後編を期待したい。
https://ja.wikipedia.org/wiki/青が散る

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