見出し画像

鳴神響一「警察庁ノマド調査官 朝倉真冬 丹後半島舟屋殺人事件」

鳴神響一「警察庁ノマド調査官 朝倉真冬 丹後半島舟屋殺人事件」。電子書籍版はこちら↓
https://www.amazon.co.jp/dp/B0CX4T1RM9/
 今回の舞台は京都府は丹後地方の伊根湾。与謝郡伊根町に立ち並ぶ230軒の「舟屋」が作品のモチーフとなっている。「舟屋」は船を海から引き上げて、風雨や虫から守るために建てられた伊根湾特有の施設。1階は船を収納して、2階は網を干したり漁具置き場として使われている。鰤、鮪、かつお、牡蠣、蟹、烏賊、海豚などが獲れる豊かな漁場で、昭和前半までは鯨漁も行われていた。

舟屋の並ぶ伊根の光景


 さて本題だが、地元の資産家・植木老人が舟屋に収納されていた和船で遺体で発見された。しかし捜査は3ヶ月経っても一向に進まず「捜査本部の内部に犯人協力者がいる」との密告があった。そこで明智光興・長官官房審議官から、朝倉真冬警視に出動指示があった。犯行現場に無断で入ったことで、真冬は伊根浦駐在所の土居巡査部長に連行され、天橋立署刑事課の長倉巡査部長に尋問された。しかしどんなドジも成功への足がかりとする真冬。この二人が殺人事件捜査の遅滞に不満を持っていることを知り、強力な協力者となってもらう。地元の聴き込みの中で、戦国大名だった一色氏の財宝の海洋調査が伊根湾で行われていることを知った真冬たち。そこから次々と芋蔓式に、詐欺事件の概要が明らかになってゆく。別件の詐欺事件で犯人を追っていた京都府警の湯本智花警視の部隊と合流して、犯人への逮捕状が発行された。そして遂に逮捕された真犯人は、真冬も驚く人物だった。そして急行した明智審議官の下で、明らかになる真冬の父の死の真相。
 先ずは舞台が素晴らしい。実は、寅さん第29話「男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋寅さん」(マドンナはいしだあゆみ)、朝ドラ「ええにょぼ」(戸田菜穂が主演)でも舞台になったそうだ。伊根町のHPから拾った「舟屋」写真が、あまりに美しかったので掲載しておく。美食ネタとしても、今回は「日出鮨」は、シリーズ5作の中でも最高の出来栄えだったのではないだろうか。しかも前作からは明智の計らいで、真冬の部下である今川くんもお相伴に預かっているのが微笑ましい。ということで、食い気ばかりで、相変わらず色恋沙汰には縁遠い真冬。捜査協力者である長倉刑事が、友人の妹である湯本智花と再会して心ときめかせているのとは好対照。可愛いらしくて、賢くて、性格もいいのに。これはもう今川くんにどうにかしてもらうしかない。姉さん女房もいいものかも。

本書の書影

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?